ベンチャー企業への転職が難しい理由と対応策
- PKSHA TechnologyやHEROZのようなAI銘柄、メルカリの上場などによって、ベンチャー企業への関心度は高まってきていると考えられる。
- 1. そもそも「ベンチャー企業」の定義が曖昧である。
- 2. ベンチャー企業の定義と転職のための情報量の違い。
- 3. (非上場の)ベンチャー企業の場合、採用体制が未成熟であり、効率的な採用活動ができていないリスクが十分に高い。
- 4.(主として)非上場のベンチャー企業への転職対応策
- 5. まとめ
PKSHA TechnologyやHEROZのようなAI銘柄、メルカリの上場などによって、ベンチャー企業への関心度は高まってきていると考えられる。
そして、ベンチャー企業は絶えず優秀な人材に対する強い需要があるため、ベンチャー企業への転職市場もさぞかし盛り上がっていると推察される。
しかし、求職者側の立場からすると、ベンチャー企業への転職の難易度は高い。
そこで、その原因について整理するとともに、対応策を考えてみた。
1. そもそも「ベンチャー企業」の定義が曖昧である。
(1)あなたは「ベンチャー企業」というとどういった企業を想起するだろうか?
ヤフー、楽天、サイバー・エージェント?
さすがにそれは上場してから20年近く経つし、さすがにベンチャー企業とは言わないのでは?とも考えられる。
これらも上場から10年以上経つし、十分大きいからどうなのだろうか?
それでは、メルカリ、マネー・フォワード、グノシー、フリークアウト?
確かに、これらのアベノミクス以降に上場した銘柄は新しいし、会社名もまだ十分には浸透していないかも知れない。ただ、「上場」してしまうとストック・オプションの妙味も無いし、少し違うのかも知れない。
それでは、ビットフライヤー、ウェルスナビ、クラシル(dely)、プリファード・ネットワークス、ランサーズ、ビズリーチ、Vasilyあたりではどうか?
さすがに未上場であれば、規模は大きくてもベンチャー企業と言えるだろう。
それでも、このような既に多額の資金が注入され、ある程度の顧客基盤を持ち、組織・人員もそれなりに整っているのは本当のベンチャー企業とは言えない。本当の(最狭義の)ベンチャー企業は、従業員数人で売り上げも無いような企業を言うのだという意見もあるかも知れない。
(2)まず、ベンチャー企業の定義を明確にし、それに応じた対応策が必要に
以上のように、「ベンチャー企業」といってもピンキリであり、その状況によって当然転職のための対応策は異なってくる。ざっと整理してい見ると以下のようになるだろう。
①上場大手ベンチャー企業
⇒Yahoo、LINE、ZOZOからグリー、DeNAあたりの企業
「大手」かどうかは相対的な概念だが、時価総額で3000億を超えると大手と言えるだろう。
②上場ベンチャー企業
⇒マネーフォワード、クラウドワークス、Gumi、フリークアウトなどの企業
上場しているが、時価総額では3000億に届かない企業群
③上場予備軍のベンチャー企業
⇒ビットフライヤー、ビズリーチ、Sansan、ランサーズ他
既に億単位の資金が投入され、主幹事証券会社も決まり上場に向けて動いている企業
④それ以外のベンチャー企業
⇒スタートアップ企業や、まだ1億円以上の出資がなされていない段階の企業
2. ベンチャー企業の定義と転職のための情報量の違い。
上記のように、ベンチャー企業を定義した場合、まず、上場しているかどうかで転職の情報が大きく異なる場合が多い。
第一に、上場しているベンチャー企業の場合は、大手の転職エージェント、例えば、リクルート、DODA、マイナビ、TYPE、エン・ジャパンあたりを通じて中途採用の対応を行っている場合が多いので、ネット検索をかけると比較的まとまった情報が採りやすい。
また、上記のような大手の転職エージェントに登録すれば、黙っていても求人情報が送られてくる。
第二に、上場していると、四半期ごとに決算説明会が開催され詳細なディスクロージャーが行われる。このため、企業の業績や経営戦略についてある程度研究することができる。
このように、上場しているのとそうでないのとでは、取れる情報の量に大きな差がある。
ベンチャー企業というと、非上場の段階の上記③ないしは④を想起する場合も多いだろう。非上場のベンチャー企業への転職を考える場合には、情報不足を補うような対応を行う必要がある。
3. (非上場の)ベンチャー企業の場合、採用体制が未成熟であり、効率的な採用活動ができていないリスクが十分に高い。
上記の1と2は、主として求職者側が情報を取りにくいという問題である。
もう一つ厄介な問題は、採用側である(非上場の)ベンチャー企業の問題である。
それは、ベンチャー企業は人事部、採用組織が組織として未整備であり、かつ、採用担当者もスキル不足である場合が少なくない。
このため、本来であれば面接に進むべきものが落とされ、反対に、書面で落とされるべき者が面接に進むなどの非効率性が存在しているリスクが高い。
実は、私もこれを体験した。2年以上前の2016年にメルカリのIR・ファイナンス系のポジションについて、直接「採用担当者御中」で応募書類を送った。ところが、その後はなしのつぶてで、「お祈りレター」さえも来なかった。ところが、有力転職エージェント経由でつい最近遥かに上のポジションで話が来たのだ。
非上場のベンチャー企業の場合、社会人歴3年程度の人事担当者が採用を担当していたりする場合が珍しくなく、そういった場合には「年齢と転職回数」だけで振り分けられるとも言われている。このため、それへの対応策が必要となる。
4.(主として)非上場のベンチャー企業への転職対応策
(1)情報不足に対する対応策
非上場に伴う情報不足であるが、それに対応するためにはいろいろなソースから情報を取って企業や業界の状況を理解しておくことが必要だ。そのためには、以下のようなウェブサイトを日頃からチェックしておくことが有効だろう。
また、求人情報についても既存の大手に加えて、以下のベンチャー系に強いエージェントを活用する必要がある。
IT/Web業界の求人・採用情報に強い転職サイトGreen(グリーン)
もちろん、これらのベンチャーに強い転職エージェントでも、非上場のベンチャー企業には不明な点も多いため、そのアドバイスをうのみにするのではなく、自分自身でも考察できるようにしなければならない。
なお、上記エージェントに加えて、ビズリーチは中小の転職エージェントがぶらさがっているので、こちらも活用できる。
そして、エージェントではないが、特に非上場のベンチャー企業の転職活動には欠かせないプラットフォームであるのが、Wantedlyである。
Wantedlyは結構な求人情報を持っているのだが、注意しないといけない点は、間に転職エージェントが介在しないストラクチャーだからである。従って、中立的な意見や情報が転職エージェント経由の時と異なり入手できない。
このため、採用者側であるベンチャー企業が言っていることやオファーの条件が適切であるかどうかを見極めるための判断力が前提となる。
(2)ベンチャー企業の採用スキルが未熟なことに対する対応策
これは、レジュメ等を会社に直接送る場合には、「採用担当者御中」としないことである。送り先は「社長」か「役員」である。結局、ベンチャー企業の場合には、一番採用に熱心なのは経営者である。また、そういう人たちの方が若手の採用担当者よりも目利きができるはずである。したがって、自信がある場合には直接経営者に売り込むという方法は検討に値すると考えられる。
もっとも、これはある意味上級者向けの方法であるので、転職エージェントやWantedlyに基づき転職活動をするという方法でも構わない。
5. まとめ
〇ベンチャー企業と一口に言ってもヤフーからスタートアップまでいろいろなタイプがある。
〇上場ベンチャーと非上場ベンチャーとでは転職するための情報、転職エージェントに違いがあるので、それに応じた情報ソースと転職エージェントを使用するべき。
〇非上場ベンチャー企業の場合は採用能力が未成熟であることが多く、経営者に直接応募してみることも一案である。