間違いだらけのファイナンシャル・プランニング。60歳までに1億円を貯めることよりも、身体が動く限りは働きたいと考えることが重要。

1億円というのはインパクトのある言葉だが、無理して目指すにはハードルが高すぎる。

書店の資産運用のコーナーや、経済紙の見出しなどには「1億円を貯める!」「1億円を貯めた!」というものが散見される。また、最近では「億りびと」というな新語も出てきている。

確かに1億円というのは夢だし、インパクトのある響きで魅力があるのだが、大体は煽りであって、真面目に1億円を貯めるのは厳しい。

そもそも、野村総合研究所等の調査だと、金融資産が1億円以上ある世帯数は80万世帯で全体の2%未満である。小学校や中学校のクラスを想定すると、せいぜいクラスで1人しか1億円を貯めることができないのだ。

また、普通の年収で1億円を貯めることに成功した事例が紹介されているが、極めて例外的である。年収400万円で年収の3割に該当する120万円をコツコツと積立運用し、それで34年後には目標達成ということになるのだが、生活自体が無理だし、34年という期間は長すぎるのである。

現実的には、40歳で年収1200万円とかなり高収入の人が、年収の1割に該当する120万円を毎月10万円ずつ積立て、想定利回り5%でロボアドバイザーを使って運用した場合に定年の60歳の時に貯まっている金額は4100万ちょいである。

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これに、退職金2000~3000万円を加えると、6000~7000万円が60歳までに貯められる上限ではなかろうか。もっとも、年収1200万円クラスでこれぐらいの貯金を作れるのは現実的には少数であろう。

運用で成功して「億りびと」になったという事例に惑わされてはいけない。

資産運用系の雑誌やWebサイトなどのメディアで、株式投資や、最近では仮想通貨で1億円以上貯まった投資家を取り上げていることがあるが、これらはあくまでも参考例である。皆が同じように投資をして成功する保障などはどこにもなく、むしろ、資金をすってしまうリスクの方が高いのではないだろうか。

大事なことは、貯金を取り崩して生きていくのではなく、身体が動く限りは働きたいと思える仕事或いは副業を見つけることである。

世の中のファイナンシャル・プランニングのパターンは、「脅迫」によるものが多い。

すなわち、以下のパターンである。

①定年退職後は年金だけだと不十分で、毎月20万円は余分につかえるようにしたい。

②そのためには、定年までの間に、無駄を削り節約して、それで浮いたお金を投資に回して老後に切り崩してもいいように十分貯金をしましょう。

これの前提は、60歳になると年収がゼロ或いは大幅に減退するということである。

しかし、この前提に拘束される必要はない。65歳に限らず、身体が動く限りは70歳でも働いても構わないのである。別に雇用されることを前提とする必要はない。アフィリエイトブログで月10万円位稼げれば、月30万円位なら、自分の特技を活かして稼ぐことは難しくないのではないか?英語が得意な人であれば、子供に英語を教えればいいし、IT系の人はプログラミングノウハウを活用すればいい。

60歳を過ぎれば働きたくない、だから、貯金を取り崩さなければならないというのは窮屈でプレッシャーのかかる生き方である。

資金的にも、60歳を過ぎても40-50万位稼げれば、貯金を増やすことだって可能なのだ。そう考えると、60歳時点における貯金がほとんどなくても、退職金の2000-3000万円くらいあれば十分ではないか。さすがに、退職金を除いて貯金ゼロというのはあまりに寂しいので、1000万円位貯めようと思えば、40歳以降わずか月々3万円もあれば、60歳の時点で1233万円も貯まっている計算となる。

これくらいであれば無理なくプレッシャーなく実行できる金額であるので、メンタル的にも余裕を持った人生設計ができるのである。