日本のロボアドバイザー市場、早くも業者の集約化が始まっているか?

「ロボアドバイザー市場は2020年に5兆円」という強気な見通しもあったが…

www.businessinsider.jp

こちらは昨年7月のBusiness Insiderの記事であるが、あと2年間で現在千数百億円規模のロボアドバイザー市場が、一気に5兆円まで行くという見通しは厳しいかも知れない。

実は、自分も知らなかったのであるが、国内のロボアドバイザーの業者数は17社もあるというのだ。金融ビジネスで、特に単品商売(例えばネット専業金融機関)の場合には、基本提供するサービス内容が似たり寄ったりであるので、どんどん規模の大きい業者に集約され、最後は片手の範囲に収まるというのがお決まりのパターンである。

ネット証券の場合も最盛期は数十社くらい業者数があったと思われるが、現在では、SBI証券カブドットコム証券、松井証券楽天証券マネックス証券の大手5社に集約されている。

ロボアドバイザーの場合にも、将来的にはシェアを持つ大手が生き残り、規模の経済を巡る戦いで敗れた業者は吸収されるなどして、最後には少数の大手が生き残ることが予測される。

早くも集約化の動きが?

jp.techcrunch.com

こちらは今年の3月30日のテッククランチの記事であるが、エイト証券が野村グループ傘下の野村アセットマネジメント社に買収されてしまった。

エイト証券はロボアドバイザーサービスの草分け的存在で、2015年からいち早くロボアドバイザーサービスを提供している。

ところが、まだこれから市場が立ち上がるというタイミングで、単独での事業展開をあきらめてしまったのである。

確かに、金融関係者においても、ロボアドバイザーというと、ウェルスフロントとTHEOが思い浮かぶが、クロエというのは余り聞いたことがない。

市場規模を大きくするには、大手金融機関のコミットメントが必要

もっとも、こちらは必ずしもロボアドバイザー業者全般にとって必ずしもネガティブなニュースとは限らない。何故なら、エイト証券のロボアドバイザーサービス自体が無くなるわけではなく、強力な顧客基盤と資金力を持つ野村グループの傘下に入ったからである。野村グループが本気でロボアドバイザー事業に参入すれば、大和証券SMBC日興証券メガバンクが追随するであろうから、市場規模が急速に拡大することが予測される。

実際、アメリカでもバンガード、チャールズ・シュワブという超大手の金融機関がロボアドバイザー市場を牽引し、市場規模が大きく育っているのだ。

しかしながら、野村グループがどのタイミングでロボアドバイザー事業の拡大に向けた行動を取るのかは今の時点ではまだわからない。

投資金額の16億円という金額は、純資産が3兆円近い野村グループにとっては大した金額ではないし、また、野村アセットマネジメント社と野村證券とは、戦略における重点事項が異なるため、野村證券の関心度がどの程度かはわからないからだ。

ロボアドバイザー専業の場合、従業員が100人で一人当たりの人件費が1000万円、人件費の経費におけるシェアが50%とした場合、100×1000万×1/2=20億円が損益分岐点売上高となる。手数料率を1%だとすると、2,000億円の預かり資産が必要となる。

当然、この金額を達成した業者は未だ存在しない。このため、現状のようなゆったりとしたロボアドバイザー市場の伸びだと、体力がもたずに廃業や大手に身売りする業者も出てくるのではないかと予想される。