【書評】楠木新氏の「定年準備」、「人はすぐには変われない」

ライフプラン・キャリアプランには助走期間が必要

ベストセラーの「定年後」読了後、その続編ともいえる楠木新氏の著書「定年準備」を読んでみた。サブタイトルの「人生後半戦の助走と実践」にある通り、望ましい定年後を迎えることができるには、定年前から周到な準備をしなければならない。定年後に備えた「助走期間」が必要なわけで、この点は「人はすぐには変われない」ということで、冒頭に記載されている。

定年を期に生活から環境まで全てが変わってしまう。

定年を機に生活は一変することになるのだが、その変化の度合いは想像する以上に厳しいものだそうだ。朝起きる時間が違う、通勤がない、午前中に上司・同僚・部下・顧客に会わない、ランチも勤務地ではなく自宅か近所で取る、午後も会議も外交もない、夜に飲みに行くことは無い、帰りの通勤も無い、ということで生活様式が全く異なる。

そこで、「これだとダメになってしまう。仕事なり趣味なりを見つけなければ。」と思っても、すぐに対応できるものではない。

仕事・ボランティア・趣味を見つけるにしてもお金、スキル、人脈が必要

60歳を過ぎてしまうとハローワークに行っても思うような仕事は見つからない。何か他の定年退職者とは異なる、そして、市場からのニーズがあるスキルや資格を身に着けることはすぐにはできないし、年を取ればとるほど、マスターするスピードは落ちてしまう。例えば、定年後社会保険労務士をやろうと思っても何年も前から専門学校に行って資格をとらなければならない。美容師でも一緒だ。

NPO、ボランティアだって簡単にできるわけではない。福祉関係のボランティアをやろうと思っても医療・看護的なスキルもない、心理カウンセリング的なスキルもない、人を楽しませる芸もないでは、足手まといであり、歓迎されない。

趣味も、何が本当にやりたいのか、すぐには見つからない。

50歳の時点で意識をする人は少なくないが「実践」に移せる人は多くない。

楠木氏によると、企業や労働組合が主催する定年準備セミナーでも、50歳の参加者が定年以降の生活に不安を感じたり準備の必要性を感じたりする人の割合は低くは無い。しかし、実際に準備に向けて行動に移す人は必ずしも多くないようだ。

まずは、何らかの行動に移すべき。

結局重要なのは、何らかの行動を取ってみることだという。単に本やWebで情報を取るだけではなく、実際に資格取得の専門学校に行ってみたり、ボランティアのイベントに参加してみることだ。そうすると、そこでいろいろ新たな経験や出会いがあり、次につながりやすくなるという。

この点については、キャリアプランと共通していると思った。