【書評】楠木新氏の「定年準備」、定年後にお金で困る人は多くない。

ファイナンシャル・プランナーや金融機関は、定年後に備えて多額の資産を形成するよう煽るが…

ゆとりのある老後を送るためには、定年時には〇〇千万円が必要ですと言われたりする。恒久的になってきたゼロ金利、100歳まで生きる時代、年金支給の後倒しなど、いろいろな理由を上げて、金融機関とかは現役時代のうちに、多額の蓄財をするよう煽ってくる。確かに、金融機関にとって利の厚い金融商品を進めるためのポジショントークであることは明らかなのだが、中には1億円が必要と無理なことをいうところもある。

実は、定年後にお金に困る人は少ない。

ところが、著者の楠木氏によると、彼は何百人にもインタビューをしているのだが、定年後にお金で困っている人にはほとんど出くわしたことがないという。

「定年」というとサラリーマンが前提となっているので、退職金や厚生年金、さらには企業年金があるので、それほど定年後にお金で困るということは無いそうだ。

むしろ、問題は「自分の居場所が無い」という、お金とは別のところにあるという。

そうであれば、定年後のための資産運用はそんなに無理をする必要が無い。

定年までに6千万とか1億とかを貯めるとなると、そうとう思い切った資産運用が必要となるが、大企業のサラリーマンの一般的な退職金が2300万円であることを考えると、リスクを過度にとらない運用手法でOKだ。

人事部や労働組合が定年を見据えたセミナーを50歳の人たちに向けて開催することは多い。その場合、ボーナス等も勘案するものとして、月々5万円程度の積立は可能であろう。そうだとすると、50歳から10年間、ロボアドバイザーで期待利回り5%で運用したとすれば60歳の定年時には776万円ほどの資産形成が可能だ。

とすると、退職金と合わせると、丁度3千万円位を持つことができる。

実際は、本人或いは配偶者が相続によって一定の金額を得ることができた場合に、それなりの資産が退職時には貯まることとなる。

 

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65歳まではフルタイムでなくとも一定の収入を得ることが重要。

お金の話で重要なのは、60歳になっても正社員でなくても構わないので、一定の収入を得ることだ。60歳で収入がゼロでその分を全て貯金から持ち出しとなると、金融機関の煽りのように、多くの貯金が必要となってしまう。

あるファイナンシャル・プランナーは、月8万円程度の収入が見込めればいいという話なので、クラウドワークスなどを使った勤め人以外の方法もある。

やはり重要なのはライフプランを早めに立てること

結局、無理して多額の資産形成をしなければならないということは無いが、少額でも収入を得ようとした場合、会社にフルタイムの社員がいいのか、もう少しお気楽な嘱託の形がいいのか、アルバイトがいいのか、クラウドワーカーがいいのか、それはその人のライフプラン次第である。

従って、50歳を過ぎると、資産運用とライフプランをセットで考えていく必要があろう。