20代の銀行員にとって、金融とITの融合ビジネスであるフィンテック企業に転職する意義。メルペイの大量採用はチャンスかも知れない。
キャリアチェンジが難しい銀行員
超低金利の継続に伴う預貸スプレッドの縮小によって収益拡大の見込みが厳しい中、ネット化の進展で人員の余剰感が漂い始めている銀行。まだ、慌てる必要はないかもしれないが、収益力が既に大幅に低下してきている地銀の状況を見てみると、メガバンクの行員も楽観的な将来は描きにくいかも知れない。
他方、銀行は規制産業で決まった業務しかできないので、非エンジニアの銀行員が他業界への転職の際に持ち出せるような普遍的なスキルは少ない。
ところが、インターネット技術の急速な進展によって、フィンテックビジネスが勃興し、日本でも仮想通貨ビジネス、ロボアドバイザー、マネーフォワードなどの新業態が育ち始めてきている。
また、楽天 PayやLINE Payといった事業会社が決済業務への進出をテコに他の金融事業への進出を目論んでいたりする。
そうした中で、現在メルカリが金融事業のために積極的な中途採用を開始した。
これはメルカリの重要な新規事業で、メルカリ事業での売買代金を用いた飲食・買い物での決済事業に進出し、銀行、証券、仮想通貨等の金融事業に展開しようという戦略だ。
ここでは、エンジニア、営業からコーポレートスタッフまで幅広く募集しているし、青柳社長や役員のインタビュー記事を見ると、銀行員のような金融関係者も歓迎されているようである。
しかし、メルカリの金融事業は成功するのだろうか?
そもそもこれから決済事業のための準備活動をするわけなので、最終的に金融事業のどういった業種への展開が可能かはわからないし、金融事業だと楽天に大幅に遅れをとっている。従って、現段階でメルカリが金融事業の勝者になれるという確信は持てないだろう。
IT業界への切符を所有できることが重要
もっとも、銀行員がメルカリに限らず他のIT企業の金融事業に転職した場合、確実に「IT業界」としての経歴ができる。これが今後のキャリアを考える上で重要な意義を持つ。
例えば、メルカリの場合、メルペイ事業は金融業を手掛けたとしても、社内的な意思決定、従業員の働き方、近いところにいる経営陣など、IT業界のカルチャーに慣れることができる。当然、プログラミングは覚えられなくとも、IT業界に関する知識は確実に増える。
そして、何よりもIT業界としての職歴ができる。これが将来のキャリアを拡げる上で重要なのだ。
銀行員からは直接行けなくとも、フィンテック企業を経由することにより、多くのIT企業への転身が可能になる。
フィンテック企業はIT業界としてとらえられているので、この業界に参入すると、将来は他のIT企業で働ける可能性がグッと拡がる。経理、人事、総務といった昔からの銀行員が担当する職種もあるが、経営企画とかWebマーケティングのような新しいスキルを習得することも可能だ。IT業界の場合には、旧来的な日本企業と違って、社内異動はフレキシブルだからだ。
このため、次の次のキャリアの可能性をフィンテック業界に行くことによって拡げることができるのだ。
最終的に行くかどうかは別として、話を聞きに行く価値は十分あると思うので、若手の銀行員はフィンテック業界を今の間に研究しておくべきだろう。