ロボアドバイザーTHEOの運営会社「お金のデザイン」社の課題

ロボアドバイザー市場の拡大には、現在ナンバー2のTHEOの奮闘が不可欠に

現在日本のロボアドバイザーで預かり資産トップのウェルスナビ社の預かり資産額は本年7月時点で900億円を達成した。ナンバー2のTHEOは260億円程度であり、ウェルスナビ社とはかなりの差が開いている。

ロボアドバイザーサービスを提供する企業は10社以上もあったようだが、最近ではウェルスナビ社とTHEOの2つに絞られてきたのではないか。実際、イケダハヤト氏他の著名ブロガー達が、ロボアドバイザーの運用体験談を投稿したりしているが、大体ウェルスナビとTHEOの2サービスを使っているのではないだろうか。

日本では20代から40代と既存の金融機関の主力客と比べて明らかに若い客層がメインであり、将来有望な運用サービスであるのだが、米国では専業大手はとっくに預かり資産1兆円を突破しており、日本でもこの上位2社が切磋琢磨して市場を拡大していくことが期待される。

東海東京証券による出資はプラスか?

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THEOは預かり資産の拡大ペースに焦っているのか、今年の6月に東海東京証券持ち株会社である東海東京フィナンシャル・ホールディングス社から50億円もの第三者割当増資を受けた。同社のTHEO(正確にはその運営会社である「お金のデザイン」社)の株式の20%を保有することとなり、持ち分法適用会社となった。

これ自身はTHEOにとっては良い提携と言える。何故なら、新しい金融サービスの浸透は大変な作業であり、受身の営業だけではなかなか預かり資産は増えない。東海東京証券の場合には多くの期得意顧客を抱えており、営業社員を通じた開拓が可能である。実際、アメリカでもバンガード社やチャールズ・シュワブ社は営業社員を介した開拓によってロボアドバイザー事業の預かり資産を大幅に増やしており、「人」を介した開拓は日本でも有効だと考えられる。しかも、持ち分法適用会社になるということは、東海東京証券もコミットせざるを得ないため、トップダウンで上からロボアドバイザーサービスの拡大の号令がかかれば確実に預かり資産の増大が期待できる。

あてにならないのは事業会社からの流入

他方期待できないのは事業会社からの流入である。THEO(お金のデザイン社)は昨年の10月にNTTドコモから出資を受け、今年の5月にはドコモのポイントサービスのdポイントを使ったサービスを開始しているが、特段の資金流入にはつながっていない模様だ。これはドコモが悪いとかいうのではなく、事業会社の顧客をそのままダイレクトで金融サービスに誘導することは大変難しい。金融サービスの顧客は金融機関が開拓せざるを得ないのは米国も同様である。過去、M&Aの名人のジャック・ウェルチが唯一失敗したと言われる案件が、投資銀行キダー・ピーボディ社の買収だ。やはり、事業会社と金融機関とではルールが違うのであろう。

 反対に、必要なのは優秀なWebマーケティングチームの構築

東海東京証券の協力の他、預かり資産拡大に向けては自力で頑張らなければならない。そうした中で重要となるのはWebマーケティング力の強化である。同社のホームページのメンバー紹介を見たところ、運用やエンジニアはいるがWebマーケティングの専門家は見当たらないし、募集中のポジションもエンジニア中心である。

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資金的にそこまでの余裕は無いのかもしれないが、長期的なロボアドバイザー市場の拡大のためには自力でのWeb集客力は不可欠であるので、何とか強力なマーケティングチームを築いて欲しいものだ。