京都大学法学部の就職と課題について。東大法学部と比較するとどうか?
1. 京都大学法学部の進路における特徴
①法科大学院への進学率が高い
京都大学法学部の就職を見る前に、まず、進路の特徴を把握しておく
必要がある。
というのは、京都大学法学部の特徴として、大学院進学、特に、
学部卒業生の進路 | 統計で見る法学部・法学研究科 | 京都大学 法学部・法学研究科
上記のリンクは、京都大学法学部の公式HPからであるが、
この中で直近の年次を見ると、325人の卒業者のうち、100人(31%)が
大学院に進学している。
そのうち、81人が法科大学院への進学者であり、その比率は25%である。
何と、京都大学法学部の場合は、約4人に1人が法科大学院に進学しているのだ。
実はこの比率は東大法学部よりも高い。
東大法学部の場合は、386人の卒業生のうち、法科大学院進学者は78人であり、
比率でいうと20%である。
京都大学法学部の方が、東京大学法学部よりも法科大学院進学率が5%
高いのだ。
これは少々意外感があるが、法曹志望者の割合が高いのが京都大学法学部の
大きな特徴だ。
②公務員への就職者も多い
京都大学法学部の特徴として、公務員に就職する学生が多い。
直近の卒業年次で見ると、325人の卒業生のうち、21人が中央官庁に、
13人が地方公共団体に就職し、合計34人(約11%)が
公務員に就職しているのだ。
この比率は、東京大学法学部(91人/386人=24%)と比べると、
その比率は低い。
2. 京都大学法学部の民間企業への就職状況について
上記の通り、京都大学法学部の場合、何と4人に1人が法科大学院に進学し、
他に法科大学院以外の大学院に進学する者や、公務員となる者が多い。
従って、民間企業に就職する者の比率は約半分とかなり少ない
ことが特徴である。
京都大学の就職に関するディスクロは大変よく、就職者が1人でもいる
企業名を全て開示してくれているが、1人の就職先も含めると
かなりの量になるので、2名以上の就職先に絞って記載すると、
以下のようになる。(民間企業のみ)
三井住友銀行 | 9 |
大阪ガス | 5 |
日本生命 | 5 |
みずほFG | 5 |
東京海上日動火災保険 | 4 |
丸紅 | 4 |
三菱UFJ銀行 | 4 |
ベイカレント・コンサルティング | 3 |
関西電力 | 2 |
サイバーエージェント | 2 |
シティ・コム | 2 |
新日鐵住金 | 2 |
住友商事 | 2 |
住友生命保険 | 2 |
JR東海 | 2 |
トヨタ | 2 |
JR西日本 | 2 |
三井住友信託銀行 | 2 |
メルコホールディングス | 2 |
このリストにある企業への就職者数合計が61名で、全民間企業就職者の約4割しか
カバーしないので、特定の企業や業種には他の有力校と比べて集中していない
ように見える。
また、大阪ガス、関西電力、JR西日本という関西ローカル的な企業も
ランクインしている者の、その割合は特に顕著とは言えず、
京都大学経済学部と同様に、中央志向が結構強いのではないだろうか?
いわゆる、高就職偏差値企業・人気企業ランキング的な視点からすると、
京都大学経済学部の方が、就職状況はいいようにも見える。
(京都大学経済学部の就職状況についてはこちら。)
3. 京都大学法学部の就職の課題について
①多くは弁護士の将来のステイタス性に掛かっている?
その比率は約四分の一もあり、東京大学法学部よりも高い比率となっている。
おそらく、日本の大学で最も法科大学院進学率が高い法学部であろう。
(ちなみに、法科大学院進学率は、早稲田、慶応の法学部で約1割、
一橋大学の法学部で約15%)
法科大学院卒業後、裁判官や検察官になる者もいるが、大半は弁護士に
なるだろう。
そうすると、弁護士の社会的評価が京都大学法学部(というか有力校の法学部全体)に
影響をするだろう。
司法制度改革が浸透する前、リーマンショック前くらいまでは、弁護士のステイタスや
収入レベルは高く、司法試験合格者数や合格率が高い法学部は評価も高かった。
しかし、既に弁護士の人気や評価は下がり始めているので、10年~20年後は
どうなるのかが気になるところである。
②外銀・外コンを目指さなくていいのか?
東京大学法学部の場合、昔は、「上位三分の一は司法試験を目指す」と
言われていた時代もあったようだが、最近では、最上位層が外銀・外コンを
志望するようになってきているという。
他方、京都大学法学部の場合は、外銀・外コン志向はまだ見られないようだ。
京都大学の場合、1名以上就職者がいる企業は全開示してくれているのだが、
ゴールドマン・サックス等の外銀、マッキンゼー、BCG、ベインといった
戦略系の外コンへの就職者は見られなかった。
この辺りは、弁護士>その他の民間企業というコンサバな価値観が残っている
からかどうかはよくわからないが、もし、弁護士のステイタス・年収水準が
このまま少しずつ下がり始めたとすると、法学部自体の評価もつられて
下がりかねない。
この点は、既にゴールドマン・サックス証券、JPモルガン証券、BCGといった
外銀・外コンに就職者がいる、京都大学経済学部とは異なっているようだ。
感想
京都大学法学部の特色は何といっても、法科大学院進学率の高さである。
東京大学法学部よりも比率が高いというのは意外感があった。
法科大学院の人気・難易度は明らかに低下しているようだが、定員を減らして
供給を抑制したからか、有力大学の法学部の難易度は特に低下していない
模様だ。
しかし、法曹(或いは公務員)を目指さないのであれば、法学部に進学する
意味は何かということになる。最初から民間企業への就職を考えているので
あれば経済学部・商学部の方がいいのではないかということだ。
この点は、中長期的に興味深いところだ。