早稲田大学政治経済学部の数学必須化で、外銀・外コン・総合商社への内定者は増えるか?

 

何と、長年数学無しで受験が可能であった私大の最高峰、早稲田大学

政治経済学部が2021年度一般入試から、数学を必須化するという。

歴史的に数学無しでも高評価を得られていたのに、何故、受験者離れのリスクを

取ってまでこのタイミングで数学必須化に踏み切るのだろうか?

ここでは、数学必須化に伴う人気企業への影響について考えたい。

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1. 結論的には、数学必須化しても早稲田政経から外銀・外コン・総合商社への内定者数が増えるわけではない

これは直感的にも明らかだろう。数学必須にしたところで就職がよくなるわけがない。

理由としては、人気企業が欲しがる人材の要件としては、

「グローバルで稼ぐことができる人材」、

「事業を創造することができる人材」、

であって、数学の能力は関係ないからだ。

むしろ、入試レベルで求められるとしたら、実践的な英語力であろう。

 

また、就活において、企業側が「数学」ができる人材が欲しいのであれば、

MARCHの理系や、地方国立大学の文系(中には二次試験では数学無しの大学も

結構あるがセンター試験レベルの数学は必須である。)を、早慶の文系よりも

優先して採用するはずだが、実際はそうではない。

 

さらに、現在でも「数学」を選択して早稲田の政経に入学した者も結構な割合、

いるはずであるが、就活に関して「数学」で受験した学生と「社会」で受験した

学生を区別して扱うような企業は無いだろう。

 

以上のように、考えるまでも無いが、「数学」ができたところで稼げることに

繋がらないので、数学を必須化しても就活にはプラスにならないのである。

2. もちろん、早稲田の数学必須化の狙いは、就活力アップが目的ではないが…

当然、早稲田大学としては、就活力アップ、外銀・外コンへの内定者を増やす

目的で、数学必須化に踏み切ったわけではない。

 

引用した東洋経済の記事によると、経済学、特にミクロ経済学を学習するためには

数学が必須であるところ、出来ない学生が多くて困っているという。

 

まあ、大学の教える側からしたらそうかも知れないが、採用側である企業から

すると、別にミクロ経済学なんてどうでも良い。

理論経済学を活用する職種なんて、エコノミスト位であって、同じリサーチ

関連の職種であるアナリスト、あるいは、バイサイドのファンドマネージャー

だって、理論経済学(特に計量系)なんて知らないし、使わない。

 

それよりも、問題は会計ができない経済・商学系の学生が多いことである。

有名大学の経済学部・商学部の学生でも、決算説明会資料とか、

中期経営計画とかのIR資料すら読み込めていない。

だから、OB/OG訪問や、面接で、「グローバルに活躍したい」、

「社会に貢献したい」、「途上国を救いたい」といった大雑把な話しか

できないのだ。

 

そういうわけで、ミクロ経済学のための数学の前に、簿記とか会計学系の科目を

しっかりと学ばせる方が先ではないだろうか?

3. 実は、早稲田は法科大学院でも失敗した前科が…

概して、大学の先生というのは世間離れしていて、マーケット感覚がズレている

場合は多い。

 

理論経済学を学習するためには数学が必要だというのはその通りかも知れないが、

原理主義的なことに拘り過ぎると失敗してしまう。

 

これは、政治経済学部とは関係ないが、法科大学院制度が出来た際には、

早稲田大学法科大学院は、卒業に3年間を要する未修者コースをメインとする

ことに拘った。しかし、3年間も通学しなければならない未修者コースは

学生の負担が重く、優秀な法学部生は2年間でできる既修者コースをメインとする

慶応大学法科大学院等に多く流れた。

 

結果、早稲田大学法科大学院の人気は落ち、途中でヤバイと感じた大学側は

結局、2年間の既修者コースの枠を拡げる措置を取り、何とか問題解決ができた。

しかし、その結果、今でも合格者数や合格率(特に合格率)で、

早稲田大学法科大学院は慶応大学法科大学院の後塵を拝する状況になっている。

4. しかし、TOEFL等の英語外部試験等の英語重視は悪くない

以上、ネガティブなことばかり書いてきたが、実は、早稲田の政治経済学部

入試改革でいいこともある。

 

それは、TOEFL等の英語外部試験等を必須化するということであり、

要するに実践的な英語力を重視するということだ。

就活では、英語ができる学生は明らかに有利(というかトップ企業は

英語ができないと内定が出ない)なので、こちらの方向性は悪くないだろう。

 

もちろん、それは受験者の負担増になるので、数学の負担増と併せて、

ますます受験者離れのリスクを伴うことではあるが。

 

最後に

何故今更数学必須という、マーケットセンスが感じられない施策だが、

2020年の教育改革のタイミングに合わせて、何か変えたかったというところ

ではないだろうか?

 

まあ、早稲田大学政治経済学部は早稲田の中でもダントツトップの学部であり、

歴史的にも評価され続けてきた。

このため、数学必須化によってそのステイタスが揺らぐことは無いし、

受験者離れが顕著だと、その時には、数学必須化を止めればいいだけの話だ。

 

受験界においては、注目されるネタであろう。