【ヤフー、楽天、メルカリ】大手ベンチャー企業の法務職を選択することについて考えてみた

 

1. 必ずと言っていい程、どこの会社にもある法務系の求人

司法制度改革によって、弁護士の数が急増し、それによって年収が低下したため、

弁護士の人気が低下しているという。

 

他方、ITベンチャー系の企業の求人を見ると、ほとんど全てと言っていい程、

どこの会社にも法務関係のポジションの求人がある。

 

これは、ヤフー、楽天、メルカリといった超大手系企業だけではなく、

Wantedlyで検索できるIPO前の小規模なベンチャー企業でも見られるところが

興味深い。

2. IT系ベンチャー企業の法務職に就くキャリア上の意義

①業界横断的な普遍的な専門スキルを習得できる

法務は多くの会社でニーズがある職種なので、特定の企業や業種に留まらず、

幅広い職種で活躍することが可能な職種である。

この点は、人事や経理といったコーポレート系のスキルと共通である。

このため、法務に関する知識と経験をしっかりと習得すると、

将来長期に亘って有効な専門スキルを有することができるわけである。

②IT系のビジネスに関する基本的な業界知識を習得できる

法務関係の部署に力を入れている業界としては、他に、

金融や製薬といった規制業種などもある。

 

しかし、IT系の企業は、テクノロジーの進化に伴い、まだまだ将来成長・発展

することが期待できる。

 

また、IT系以外の事業会社でも、第四次産業革命、IoT、

デジタル・フォーメーションといった切り口から、事業にIT系の技術を

取り込んだり、IT系の子会社を傘下に収めたりすることができる。

金融、商社、サービス業はIT系に強い人が少なかったりするので、

そういったオールド・エコノミー系の優良企業に転身する可能性もある。

③将来的には社内異動で経営企画、事業開発に転身することも可能

法務関係の仕事は、事業部の人々と一緒に仕事を進めることが多い。

従って、社内で信頼や優秀であるという評判を得れば、

経営企画や事業開発系の部署に社内異動することも可能である。

 

この点は、本部を超えた異動が難しい、オールド・エコノミー系の業種との

大きな違いである。

 

経営企画、事業開発というのは、聞こえはいいが、単なる予算策定だったり、

社内調整が多かったり、確固たるスキルを伴わない場合もある。

その点、最初に法務というコアスキルを形成してから、ビジネス創造系の

ポジションに就いた方が着実なキャリア形成ができる場合もある。

3. IT系のベンチャー企業の法務職を狙うにあたっての留意点

最大の留意点は、非弁護士が法務職に就く場合、弁護士資格保有者に

見劣りしてしまうということだ。

また、周りは気にしなくても、自分自身が弁護士資格保有者にコンプレックスを

感じたりするという問題点もある。

 

従来は、日本の司法試験制度は超難関であり、また、弁護士数が少なかったため、

弁護士資格保有者は、サラリーマンとして社内弁護士をやるよりも、

事務所経営・勤務の方が羽振りが良かった。

 

このため、大企業の法務部門はほとんどが非弁護士によって構成され、

社内弁護士は日本IBMとかゴールドマン・サックスといった、外資系企業の

一部位にしか存在しなかった。

 

しかし、弁護士数の急増によって、相対的に大手企業で社内弁護士をやる方が、

事務所経営・勤務よりも待遇が良くなってきた。

そして、徐々に企業で働く弁護士資格保有者が増えてきたのだ。

 

このため、将来を考えると、同じ法務部門で非弁護士と弁護士資格保有者が

混在することが通常想定され、非弁護士にとっては複雑な事情が生じる可能性は

高い。

 

もっとも、そういった問題に対しては、

コンプライアンス部門や知的財産部門といった、法務近接部署を狙うとか、

ビジネス系の部門に転身するといった対応策はある。

 

いずれにせよ、非弁護士の場合は、弁護士資格保有者と一緒に働きたいかという

点について考えておく必要はあるだろう。

4. 新卒で狙うか、中途採用で狙うか?

中途採用で大手IT系ベンチャー企業の法務ポジションを狙うには、

現在どこかしらの事業会社で法務関係のポジションに就いていることが

必要となる。

実際、募集要項にも、法務部門での業務経験をMUSTとしているところが

大半である。

 

もちろん、全然関係がない部署からでもポテンシャル採用ということで

法務部門を狙うことは不可能ではないかも知れないが、その場合は、

年齢が上になるほど難しくなることを踏まえなければならない。

 

法学部生が、新卒で法務部門を志望する場合には、志望動機、

学生時代に力をいれてきたこと等の説明がしやすい。

「弁護士を目指して法科大学院進学を目指してきたが、弁護士の現状と

取得までの時間とコストを考えると、大きな組織で法務について多様な仕事を

した方が良いと考えるようになった」

とこれに尽きるからである。

 

但し、このシナリオの場合、法律力の高さや賢さを証明することが

必要となる。「法科大学院云々」と言いながら、民法や商法の

成績がボロボロだったりすると説得力がまるでない。

 

また、法学部生の法律知識については、面接官が基本的な法務に関する質問を

すれば、すぐにレベルがわかるのでごまかしが効かない。

 

従って、新卒で法務職を狙う場合には、しっかりと法律科目の勉強をしておかないと

厳しいだろう。

 

最後に

ベンチャー系企業と言うと、新規事業とか事業開発系の仕事に人気が集中

するかも知れないが、一見、地味目なコーポレート系でしっかりとした

専門スキルを付けてから挑戦した方が、良いキャリア形成となる可能性がある。

 

一流大学の法学部に入って当初弁護士を目指していても、入学後に

その実態を知れば知るほど、民間企業への就職に切り替えようという学生は

少なくないだろう。

 

ベンチャー企業の特質として、職種別の採用にフレキシブルなことがあるので、

いろいろと検討するのが良いだろう。