東工大(東京工業大学)の就職先と課題について

 

1. 地味な様で実は存在感のある大学

東工大東京工業大学)は、首都圏では広く知られた存在ではあるが、

理系に特化した比較的小規模な国立大学である。

 

このため、地方に行くと知名度が低いとか、ある女子大生からは、

Fランク大学と勘違いされるかも」とか、言われたりするが、その手の

話は大体ウソであり、実は存在感の強い大学である。

 

例えば、理系に特化した大学であるが、政界を見ると、首相輩出校(菅直人氏)

であり、また、財界を見ても、経団連会長(土光敏夫氏)もいるし、

各界のトップの人材を輩出している学校である。

 

これらの点(首相輩出校・経団連会長輩出校)は、他の地方帝国大学には

該当しない点であり、日本のトップレベルの国立大学であることは間違いない。

2. 東工大の就職先

www.titech.ac.jp

 

東工大の就職先については、実は、大学がそこそこ具体的な開示をして

くれている。

①学部卒業生の就職先

まず留意しなければならないことは、学部生の約9割が大学院に進学

するということだ。

1学年1000人強しかない学校なので、学部卒で就活をする生徒数は

1学年で100人程度しかいないということになる。

文系の者からすると、なかなか想像しにくい世界である。

この点は、東大工学部と類似しているのだろうが。

 

その数少ない学部卒業生の就職先としては、

日立、三菱電機東芝ファナックキーエンス大成建設といった

大手メーカー、NTTデータリクルートNRI、ワークスアプリケーション

等の情報系といった、いかにも理系的な企業が中心である。

 

もちろん、文系的な企業にも就職しており、大和証券三菱UFJ銀行

東京海上日動火災保険日本放送協会日本航空三井住友銀行

三菱UFJ信託銀行、丸紅なども見られる。

もっとも、金融・サービス業でも、技術職としての採用かも知れないが。

②院卒(修士課程修了者)の就職先

東工大の場合、学部生の約9割が大学院に進学するということで、

マジョリティはこちらになる。

さすがに、修士課程から博士課程に進学する者は15%ということで、

大半の者は修士課程修了者として就職することになるようだ。

 

企業名で見ると、学部卒以上に、メーカー系が多いようだ。

こちらのYouTubeは、サンデー毎日の2018.8.5号をソースとした

ランキングだが、イメージが湧きやすい。

(もっとも、学部生も混ざっているので、正確性には欠ける。)

www.youtube.com

 

就職先の上位10社は以下の企業である。

 

本田技研工業

日立製作所

NTTデータ

ソニー

キャノン

トヨタ

三菱重工

アクセンチュア

日産自動車

パナソニック

 

まさに、イメージ通り、日本の製造業のトップ企業がずらりと並んでいる。

若干異色なのは、アクセンチュア位であろうか。

3. 東工大の就職における課題

まあ、学校のホームページを見ても余裕を感じられるのだが、

学生は自分の研究課題に関連する、好きな企業に就職することができるのであろう。

だから、課題というのは特にないだろうし、さすがにここは、

少子化による優秀な生徒集めの困難化ということは考える必要がないであろう

から、文系的な人気企業にも送り込んで、学校の人気を上げようという画策は

不要であろう。

 

とはいえ、一応、課題について検討してみた。

①外銀・外コン・総合商社に行く必要があるか?

学校のホムペの情報は、修士修了者の場合、「過去3年間で10名以上の学生が

就職している企業」のみが掲載対象となっている。

このため、毎年数名ずつ学生が就職していても、表示はされていない。

 

外銀の場合、IBDでは東工大出身者は聞いたことが無い。他方、

トレーディング系だといてもおかしくはない。

まあ、学校の性質を考えると、特に無理して外銀に誘導する必要はないのだろう。

 

総合商社も外銀同様で、若干名は行っているのだろうが、学校の性質を

考えると、無理して人数を増やす必要も無いのであろう。

 

他方、外コンの場合は若干事情が異なると思われる。

特に、最高峰の戦略系のMBBの場合、理系が文系よりも選好されがちだからだ。

マッキンゼー日本支社長の大前健一氏は、修士課程は東工大を出ている。

総合系コンサルのアクセンチュアには大量に卒業生を送り込んでいるので、

MBBについてはもうちょっと増えてもいいのかも知れない。

ベンチャー起業について

課題があるとすればこの分野ではないだろうか?

テクノロジーを強みとしたベンチャー企業の創出は、日本経済にとっての

課題であるし、理系の出番でもあるからだ。

 

この点面白いのは、サイバーエージェントにはコンスタントに人材を供給し、

学校の就職先リストにも掲載されている(修士課程修了者)。

 

ところが、検索を掛けてみたところ、東工大出身のベンチャー起業家は

見当たらない。見つかったのは、コインチェックの和田晃一良氏位である。

(但し、中退)。

 

従って、今後は、ベンチャー起業の世界にもう少し卒業生を送り込んでも

いいのではないだろうか。

最後に

東工大の学生は、自分の希望する企業に大抵就職できるのだろうから、

就職については課題は無いのかも知れない。

また、学校の特質上、無理に外銀とか総合商社に学生を送り込む必要も

なさそうである。

ただ、高度なテクノロジーをビジネスに結び付けて、ベンチャー企業を創生

することは日本の産業界にとって必要なことである。

このため、より多くの学生がベンチャー・起業の世界に行くようになれば

なお良いのかも知れない。