ゴールドマン・サックスのオペレーションのキャリアとしての魅力と課題

 

序. そもそもオペレーションとは?

証券会社のオペレーションとは、お金と金融商品を交換(決済という)するまでのプロセスを管理する仕事を言う。

日本語では、「業務部」とか「受渡部」という名称の会社が多い。

金融機関におけるミドル・オフィスのうちの一部門であり、証券、銀行、運用会社に共通して存在する部門である。

スタッフの数が結構多いので、女性の比率が高いのが特徴である。

 

1. ゴールドマン・サックスのオペレーション部門の年収とキャリアパス

オペレーション部門も、人事、経理コンプライアンス、ITやマーケット部門、IBDと同様に、

アナリスト⇒アソシエイト⇒VP(Vice President)⇒MD(Managing Director)

という階層になっている。

 

ゴールドマン・サックスの場合、VPとMDの間に、

SVP(Senior Vice President)とかDirectorという階層が無いのが特徴である。

 

アナリスを3年務めると、大抵はアソシエイトに昇格できる。

この点は、他の部門と同じである。

ただ、VPになるのはなかなか難しい。最短だと新卒から6年の28-29で昇格できる制度なのだが、非営業部門の場合は突出した成果を出すのが難しく、VPに昇格するのは30前半位が目安となる。

 

年収は、アナリストの基本給が600-700万円+ボーナスで、トータル700-800万円。

アソシエイトが基本給800万円程度で、ボーナスを含めて1000万円程度。

VPに昇格すると基本給は1000万円を越え、ボーナスを含めると、年収は1500万円以上となる。

MDに昇格すると基本給は3000万円程度に上昇し、ボーナスを含めると、年収は4000~5000万円レベルとなる。

しかし、MDまで昇格できるのはほんの一握りなので想定しない方が賢明であろう。

 

以上のように、年収は他の金融機関のオペレーション或いはその他のバックオフィスと比べると高水準にあるものの、トレーディング、セールス、IBDというフロント職と比べると相当見劣りする。年収でいうと半分位のイメージである。

(もっとも、リーマンショック前と比べると、これでもフロント職との格差が縮まった。オペレーションが増えたというより、フロント職のボーナスが大幅に減ったからである。)

 2. ゴールドマン・サックスのオペレーションのキャリアとしての魅力

最大の魅力は、「ゴールドマン・サックス」で在籍したという履歴が作れることである。これが、モルガン・スタンレーやUBS等の他の外銀との決定的な違いである。

ゴールドマン・サックスのネームバリューは、頭一つ出ていて、金融界は当然として、製造業、ベンチャー企業からも一目を置かれるのである。

 

このため、他の外銀或いは外資系運用会社に転職する場合においても、履歴書に「ゴールドマン・サックス」という名前があると、凄く光って見えるという効果がある。

また、学歴と同様に、入れたことが評価なので在籍期間が短くても関係が無い。

1年でも在籍したら、履歴書が輝く。

これが、野村、大和等の国内系や、外銀にはない魅力なのである。

 

オペレーションという職種はコモディティ化しており、差別化するのは難しい。

この点は、経理、人事、コンプライアンスも同様であり、ゴールドマン・サックスのオペレーションにいることによる特殊なノウハウが習得できるとは期待しない方が良い。

 

もっとも、ゴールドマン・サックスの場合は、グローバル化が進んでいるので英語でのコミュニケーションは頻繁に求められるので、英語力は強化できる環境にあり、転職に際して、英語力が不安になることはないであろう。

3. ゴールドマン・サックスのオペレーションのキャリアにおける課題、留意点

①オペレーション部門の縮小・合理化の動向

これは、ゴールドマン・サックスに限らず、グローバルの金融機関全般の傾向であるが、オペレーションは事務部門なので、AIによる機械化、人件費の安いアジア、インドへのアウトソース等により、予算が削られる方向にある。

このため、リストラがあると一定数の人員削減がなされるという不安がある。

 

同じミドル・バックオフィスの場合、経理コンプライアンスの場合は、管理部門としての位置付け、当局からのプレッシャーがあるので、ある程度は安全なところはあるが、オペレーションの場合はリストラ抵抗力が弱い。

②女性が多い職場特有の問題点

これも、ゴールドマン・サックス特有の問題ではなく、外資系金融機関全般に共通する問題点であるが、オペレーションは女性比率がかなり高い。

半分以上は女性である。

となると、女性社会特有の働きづらさがあるようだ。

このため、コンプライアンス部門への社内異動を目論んだりする人もいる。

③社内格差、社内的なステイタスの低さ

これも、ゴールドマン・サックス特有の問題というより、外資系証券に共通する問題点であるが、社内的には収益部門である、トレーディング、セールス部門が大きな顔をしている。しかも、年収においては2倍以上の格差がある。

 

従って、これは気にしない人は気にならないのかも知れないが、社内的なステイタスが低いため面白くないと感じる人はいるだろう。

 

もっとも、これは「証券会社」に特にみられる傾向であって、他の業態である、

運用会社、銀行、保険会社においては、収益部門とミドル・バックオフィスの格差はあまり大きくない。

④潰しが効かない点

金融のオペレーションは、金融の中だけでしか需要が無い。

IBDとかリサーチのように、CFOとして他業界で活躍できる専門性は身に付かない。

また、20代であればまだしも、バックオフィスの他部門に社内異動を狙えるような普遍的なスキルは身に付かない。

このため、一生、オペレーションを続けるのかどうか30歳までには決めておきたいところである。

4. オペレーションにおけるキャリアを考える

オペレーションの場合、無事にVPに昇格できたとしても、年収は2000~3000万円であるので、40過ぎでセミリタイアできるほどの貯金はできない。

(もっとも、フロント部門のようにフェラーリを買ったり、高級レストラン三昧で浪費をしないので、貯蓄率は高いのだろうが…)

かといって、定年まで勤め上げられるような環境にはない。

そこで、長期的なキャリアプランを考えておく必要がある。

①一生、オペレーションで働く

オペレーションは女性が多く、結婚・出産というライフ・イベントがあっても、

ゴールドマン・サックスは産休制度とかはキッチリとしているので、長く働くことは可能だ。

従って、生涯オペレーションでやっていくという選択肢はありだ。

もっとも、リストラは無いとは言えないし、40半ばを過ぎると居づらくなってくるので、途中で外資系の運用会社、国内系の金融機関、外資系の保険会社のオペレーションに転職することは視野に入れておいた方が良い。

その際に、ゴールドマン・サックスというネームバリューや英語力はポジティブに効いてくる。

②他部門への社内異動を狙う

できれば20代、せいぜい30代前半くらいであれば、社内異動で他部門への転身を図ることも可能だ。

ゴールドマン・サックスの場合、社内異動が比較的狙いやすいという特徴がある。

その際は、能力云々というよりも、好かれるかどうかというのがカギになってくる。

従って、異動希望部門のMDに好かれると、異動がグッと近くなるので、社内的な交友関係を築いておくのが重要だ。

 

異動対象部門としては、人事、経理コンプライアンス、内部監査あたりのバックオフィスが多い。

③他業種への転出を図る

ゴールドマン・サックス」というネームバリューと英語力を活かした他業種への転職である。オペレーションという業務で培ったスキルは他業種では役に立たないので、ポテンシャル採用ということになる。

 

実例は余り多く聞かないが、仮想通貨等のフィンテック分野への転身はありだろう。

5. ゴールドマン・サックスのオペレーションに就職・転職するには

新卒で入社する場合には、他の新卒同様、

ES⇒筆記・Webテスト⇒面接(3次くらいまである)⇒内定、

という流れであり、かなりの難関であることは間違いない。

英語での面接はあるし、入社後は必要となるので、早いうちにTOEIC900程度は

とっておきたい。

TOEICスコアは必須ではない。)

 

中途採用によって入社することも勿論可能である。

オペレーションの場合、結構な人数がいる部署であるので、中途で入るチャンスはある。

その場合、外資系金融に強い転職エージェントを使うことになるのは、他部門と同様である。

オペレーションの特化とか、オペレーションに強いエージェントというのは特に無いので、

 

〇マイケルペイジ

〇ロバートウォルターズ

イースト・ウエスト・コンサルティング

モーガン・マッキンリー

〇エン・ワールド

JAC

 

あたりを使用すれば良い。

なお、ヘッド職以外であれば、ラッセル・レイノルズやコーン・フェリーのような

エグゼクティブ・サーチ・ファームを使う必要は無い。