レシピ動画の「クラシル」の先行きが厳しいと考える3つの理由

DL数1200万超えの料理レシピ動画サービスでクックパッド越えの期待もあるが…

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時々テレビCMでも登場する、料理レシピ動画サービスのクラシルをご存じだろうか?これは2017年12月に、アプリのダウンロード数が創業からわずか2年弱で1,000万に達したという注目のベンチャー企業dely社によって運営されるサービスだ。

料理のレシピというと、クックパッド社が有名であるが、新進気鋭のベンチャー企業が手掛けるこの動画サービスは、あっという間にクックパッドの地位を脅かしたとされ、ベンチャー業界から大変注目されている。

また、dely社の創業社長である堀江氏は、若干25歳ということで、クラシルというサービスに加えて、経営者も大変期待されているのである。

ところが、先月にヤフーがクラシルの運営会社であるdely社の株式を買い増しし、過半数を取得したのである。株式の過半数はヤフーが取得することになるので、ヤフーによってコントロールされてしまうことになってしまう。絶好調に見えるクラシルであるが、将来はどうなのだろうか?

jp.techcrunch.com

DL数が全然売り上げにつながらない。マネタイズ・モデルに問題ありか?

この報道により、判明したことはdely社の収益性が大変低いということだ。2017年10月期の同社の売上高は2億8900万円、営業損益は30億6700万円の赤字だ。この時期は既にかなりのDL数が達成されていたにもかかわらず売上高は3億円にも満たないのだ。

クックパッド社の収益というと、広告収入が思い浮かぶが売上に占める広告収入は2割程度であり、有料課金が8割を占めている。有料課金が収益の柱となっているのだ。

他方、クラシルの場合は有料課金からの収益が見込めない。dely社は既に30億円以上の出資を受けているが、これほど収益性が低いと資金が底をついてしまう。このため、このタイミングでヤフーからの出資を受け入れたのだろう。

ところが、DL数や知名度が増えてもマネタイズの方法が変わらない限り収益性が大幅に改善するとは思えない。この点が、クラシルの将来性が厳しいと考える第1の理由である。

そもそも安定した大企業になってしまったヤフーはベンチャー経営に向かない。

第2の理由は、大株主であるヤフーのカルチャーである。確かに、ヤフーは本来はベンチャー企業の草分けであったが、上場から20年が経過し、現在では安定成長の大企業となっている。社員のリストラとかはなく、報酬についても極端な成功報酬制を採用していない。社員としても、給与水準はそこそこで、ネームヴァリューも高く、ベンチャースピリットは感じられない。

ヤフーのクラシル担当社員としては、何が何でもクラシルを成長させてやるというモチベーションは特に無いのではないだろうか?実際、ヤフーは莫大な資金を元に多くのベンチャー出資をしているが、ヤフーが成長させたようなベンチャー企業は無いのではなかろうか?

dely社のモチベーションや人的資源はどうか?

ベンチャー組織、若い組織は伸びている時は力を発揮するが、ターンアラウンドの局面ではまた別の組織能力が要求される。ベンチャーの場合、人材のみが経営資源であるのだがヤフーの傘下に入ってしまったクラシルで働いてみたいという優秀な若手スタッフは今後うまく採用できるのか疑問である。また、カリスマ若手社長である堀江社長とともに頑張ってきた現社員はヤフーの過半数取得をどうとらえるだろうか?

ここが踏ん張りどころではあるのだが、料理レシピ一辺倒で突進してきたため、他のスキルや専門性を有する人材に欠けているのではないかというのが、自分がクラシルの先行きが厳しいと考える3つ目の理由である。