弁護士が、外資系金融のインハウスとして働く場合の、年収、転職力、将来性等について

 

法科大学院制度に伴う弁護士数の急増、リーマンショック以降のM&Aフィーの減少に伴い、昔と違って、国内系大手法律事務所に入ってもパートナーへの昇進が保証されなくなった。

そこで、外資系金融のインハウスを狙う若手・中堅の弁護士も増えてきているようだ。

 

1. リーマンショックの前後で大きく異なる社内弁護士の待遇

リーマンショック前の好況期においては、外資系金融機関(外資系証券会社)での社内弁護士の待遇はすこぶる良かったようだ。

国内系の大手法律事務所の留学帰りのアソシエイトクラスで、ベースとボーナスを合わせた年収が4000万円~、という待遇であった。

外資系大手証券会社の法務部長(MD)ともなると、1億超という相場であった。

 

しかし、リーマンショックの後の年収の低下は他のフロント職とも同様で、

社内弁護士に対する大盤振る舞いの時代は終わってしまった。

2. 外資系証券会社における社内弁護士の年収、待遇等

弁護士資格を持っているとは言え、社員であることには違いないので、

タイトルも、MD(法務部長:1名)、Director/SVP/ED(各社2~3名)、VP(各社5~10人)、アソシエイト、という序列になっている点は他の部署と同様だ。

 

法務部には、日本の弁護士資格を持っていない社員もいるが、全員パラリーガルというわけではない。結構多いのが、日本の弁護士資格が難しくて取れないので、米国の弁護士資格だけ持っているという人たちが結構いる。

そういう人達の待遇が、日本の弁護士資格よりも大きく劣るとは限らない。

もっとも、働きにくいかも知れないが。

もちろん、純粋のパラリーガルとかアシスタント職の人達も法務部には在籍している。そういう人たちがVP以上になることは難しいのではないか。

 

年収水準については、部長(MD)であれば、今でもそれなりにもらえるはずだ。

1億円超は厳しいかも知れないが、大手だと7000万円位はあるのではいだろうか。

 

次のDirector/SVP/EDという、ナンバー2クラスの場合、MDと比べると大きく下がる。

一般的に、外資系の場合、部長(Head)とナンバー2の差が結構大きい。

リーマンショックの後は、ボーナスの比率を抑えるような規制があるため、ボーナスの割合が低く、基本給の割合が高くなっている。

Director/SVP/VPだと、基本給が2500~3500万、ボーナスが500~1000万というのが

目安だろう。

しかし、投資銀行の経営不振に伴い、ボーナスは低下傾向にあり、数百万位しかでなくなっているところもあるようだ。

 

その次に、一番人数が多そうなのがVPである。

VPの場合、基本給が2000~2500万、ボーナスが数百万円くらいだろうか。

 

VPの下は、アソシエイトということになるが、30代で日本の大手法律事務所で経験を積んでいるにも関わらず、VPで採用してもらえないのは、何か問題がありそうなので、あまりおすすめできない。

3. ワークライフバランスの優れた外資系証券会社

部長(MD)クラスは別として、法律事務所と比べて金銭的に特別魅力があるとは思えない社内弁護士だが、最大の魅力はワークライフバランスのようだ。

深夜・早朝まで働くことを要請されることはまずない。

案件の状況にもよるのだろうが、夜の7~9時位には帰れるそうだ。

結婚・出産などを契機に、ワークライフバランスを求めて、外資系証券会社の社内弁護士を狙う人達もそれなりに多いそうだ。

4. 将来性はどうか?

残念ながら、将来性は明るいとは言いにくい。

何故なら、グローバルの投資銀行(特に欧州系)の収益性は改善の兆しがなく、

パイは小さくなっていくことを想定しないと行けない。

また、上の方は詰まってきているので、何かあると切られやすいVP以下のポジションが多くなってきていると聞く。

 

このあたりは、法律事務所も楽ではないだろうから、法律事務所との比較になるのだろう。

5. クビになった場合どうなるか?

証券会社以外の、他の業界の社内弁護士を狙うことになる。

外資系運用会社という手もあるが、外資系運用会社の社内弁護士というのはあまり聞いたことがない。JPモルガン AM、Goldman Sacs AM、UBS AM、Morgan Stanley IMといった投資銀行系の運用会社にはいるかも知れないが、全般的にあまりポジションは無さそうである。

 

したがって、外資系製薬会社、国内系金融機関の社内弁護士と言うのが一つのパターンのようだ。この場合、基本給とボーナスを合わせた年収が2000万(国内系金融機関だと1500万)未満となるので、年収ダウンとなってしまう。

その代わり、ワークライフバランスは良さそうだ。

 

また、最近では外資系の保険会社のポジションもあるようだが、年収水準自体は高くない。

 

まとめ

法科大学院制度に伴う弁護士数の急増等により、外資系金融機関の社内弁護士というのは以前と比べて魅力は減っているようだ。

 

金融業界でのキャリアを目指すのであれば、わざわざ法科大学院経由で弁護士を目指すよりは、他の職種で証券会社とか、運用会社を目指した方が賢明だと思われる。