ロボアドバイザー市場がすぐに大きくならない3つの理由

理由① 市場、サービス自体が乱高下するタイプのものではないため、ニュースとして取り上げられない。

ロボアドバイザーとは、そもそも、毎月コツコツと積立投資を行い、それを長期で国際分散投資をして成果を出そうというサービスである。

従って、長期的に安定した運用というのが強みであるのだが、仮想通貨やFXのように、乱高下するプロダクトの方がニュースとしてセンセーショナルであるため、マスコミはロボアドバザーに関するニュースを取り上げてくれない。

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乱高下するということは、値上がりする場合だけでなく、値下がりする場合も報道されるのでポジティブな面とネガティブな面とがあるのだが、ロボアドバイザーというサービス自体が新しく知名度が高くないので、メディアに露出する機会が少ないと、なかなか浸透しにくくなってしまう。

理由② ロボアドバイザーによって短期でお金持ちになった人はまずいないだろうから、自分もやってみようという人が急には増えない。bitcoin.dmm.com

仮想通貨の場合、騰落が激しく、大儲けすることができる人もいる反面、大損する人もいる。ところが、多くの人は、大儲けした人に注目しがちである。フレーミング効果ということだ。結局、一部に過ぎなくても、大儲けした人が多くメディアで取り上げられて、「おくりびと」などともてはやされている。そうすると、自分も一発当ててみたいという人が増え、仮想通貨市場に参入する人は増えてくる。

そうなると、新聞、雑誌、書籍もニーズが高い仮想通貨のニュースや書籍を供給するので、ますます仮想通貨市場参加者が増えるというスパイラルが起こる。

実際、本屋に行ってみると仮想通貨に関する本は何十種類もあるが、ロボアドバイザーに関する書籍はほとんど無いのではなかろうか?

これも仕方がないことであるが、仮想通貨と異なり、一攫千金が狙えないロボアドバイザーへの参加者が急速には増えないのである。

理由③ 大手金融機関が本気で取り組むインセンティブに欠ける。

これが最も重要な理由かも知れないが、大手の証券会社等がなかなか本気でロボアドバイザー事業に取り組んでくれない。

何故だろうか?証券会社にとってストック収入、要するに何もしなくてもコンスタントに報酬が入ってくる事業は大変望ましいものではないのだろうか?

その理由は単に規模感である。

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こちらは野村ホールディングスの2018年3月期の決算資料からの抜粋である。

これは、営業部門、すなわち個人取引部門の営業成績である。収益4,129憶円というのがいわゆる売上高に該当するものである。

2020年に市場規模が5兆円という楽観的な記事があったが、仮にそのうち20%のシェアを野村證券がとったとした場合、営業収益は1兆円×1%=100億円である。ところが、全体での営業収益が4,000億円規模の野村證券にとっては、この程度の収益は誤差の範囲であり、営業戦略におけるインパクトがない。

営業部門の営業収益は、株式の委託手数料、投信の募集手数料、株式の引受手数料、債券の販売報酬、投信の残高報酬と細分されるのだが、一つの事業部門は数百億円規模なので、ロボアドバイザーに真面目に取り組もうと考えるためには、少なくとも将来的に数百億円の収益が見込める必要があり、そうすると、ロボアドバイザーで3兆円程度の預かり資産が必要となる。

この数字は現状では考えられず、重い腰を大手が動かすようになるには、ウェルスナビやTHEOという既存の独立系大手が頑張って自らの資産規模を急拡大しなければならないだろう。