20代の銀行員がベンチャー企業に転職する際には、必ずストック・オプションをもらうようにしよう。

銀行員が転職市場において最も競争力があるのは20代の時だ。(他業界でも同じかもしれないが…)「銀行員」という現在ではまだ通用する信頼性と、一定以上の学歴、基本的な経理・計数処理的な能力が評価され、ポテンシャル採用で他業界にも転身できるのだ。

だから、焦る必要はなく、安売りする必要はない。

このため、正しい転職活動を行えば、それなりに選択肢はあるはずなのだから、安売りすべきではなく、転職するのであれば相応の条件のところを選ばなければならない。

「やりがいがある」から条件が下がってもいいというのでは、新卒とレベルが変わらない。

選択肢の中には、フィンテック企業を含むベンチャー企業も対象となるだろう。その際に注意しなければならないのは、条件面だ。

ベンチャー企業に転職する場合には、福利厚生を含めた給与面が悪化することは否めない。しかし、ベンチャー企業の処遇における最大の武器のストック・オプションはしっかりともらわなければならない。

言い方を変えると、ストック・オプションももらえないのに、「やりがい」という主観的で確証の無い理由だけで突っ走るのは、判断力において新卒と変わらないレベルであることを認識すべきだ。

そもそも、銀行員に期待されるのは、冷徹な数値に基づく判断力も含まれている。

わざわざ、ベンチャー企業がコーディングやWebマーケティングのノウハウも無い銀行員を採用するのは、冷徹な数値に基づく分析力・判断力と正確な業務遂行を期待されているからであろう。

そうであるのに、何の確証も無い「やりがい」だけで、高給と安定性(まだしばらくは安泰だろう)を捨てるのはリスク・リターン分析ができていない。

「やりがい」というのは入ってみないとわからないし、ベンチャー企業は失敗する方が多い。従って、ストック・オプションという期待があって初めてリスク・リターン的に釣り合うのだ。

ストック・オプションは税制面で優遇されているので、経済的なメリットは大きい。

ストック・オプションで株式を取得し売却した場合の税制は、いくら金額が大きくても20%の源泉税で終了だ。従って、例えば1億円のキャピタルゲインでも手取りは約8000万円だが、これが給与収入だと手取りは半分の5000万にしかならない。

銀行員であれば、当然税制のメリットも考慮すべきだ。

ベンチャーに行くのであれば、下っ端で行くべきではない。ストック・オプションも付与されないソルジャー採用であれば銀行にいた方がマシである。

わざわざ他の選択肢を捨ててベンチャーに行くということは、自分が活躍できる場面が格段に拡がることを期待しているということだ。そうであれば、末端のポジション、単なる経理・総務の下っ端で行くのでは意味が無い。

付与分はともかく、ストック・オプションをある程度もらえるようなステイタスで入社できるよう交渉すべきだ。

この点は、転職エージェントを通じて交渉してもらうことが可能だ。

銀行員にとってベンチャー企業に行くのは大きなキャリアの転機となるので、勢いや「やりがい」で突っ走ることは避けたい。