転職価値重視の就活生向け、就職偏差値にはとらわれない、おすすめの金融機関紹介

就活にはいろいろな判断軸があるはずだが、転職価値を重視したキャリアを目指したい学生向けに金融機関を紹介
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就職にあたっては、安定性、企業名、やりがい、年収などのいろいろな判断軸があると思われるが、ここでは、「転職価値」に重点を置いた金融機関を取り上げたい。

要するに、終身雇用や安定性よりも、中長期的に年収やキャリアを高めていけることが期待できる就職先としての、金融機関を紹介したい。

序. 基本的な考え方

巷であふれている新卒向けの就職情報は、「終身雇用」を想定したランキングがメインだと考えられる。リクルート、ダイヤモンド、マイナビ等の大手メディアが発表する就職人気企業ランキングもそうだし、就職偏差値にも「終身雇用」に立脚した価値観がかなり考慮されていると思う。

しかし、以前のように30年以上先まで安泰という企業を想起しにくい現代においては、終身雇用よりも転職価値に重点を置いた生き方をした方が、結局安全であるという考え方もある。

そこで、転職価値を重視した企業選びをする際の基本的な考え方を以下、まとめてみた。

①まずは、「業種」を明確にする。

就職人気ランキングにせよ、就職偏差値にせよ、「金融業界」と一括りにされて取り扱われていることが多い。しかし、実際の中途採用市場においては金融業界の中における業種の違いは極めて多きい。

そこで、金融業界の中でも、証券(投資銀行)、運用会社、銀行、保険という業種にこだわりたい。

その中で、「転職価値」ということを重視するので、銀行と保険は除外したい。

何故なら、外資系の銀行は会社の数こそ多いが給与水準は国内系銀行と大差はない場合が多く、他方、クビやリストラのリスクは遥かに高いからである。

保険会社については企業数も多くない上、給与水準は日本生命や第一生命に劣後するケースが多いからである。

また、銀行や保険会社で得られるスキルで、証券会社や運用会社で必要とされるものは特になく、転職価値が高まるようなスキルが身に付くとは考えにくいからである。

従って、転職価値を重視する就職活動を考える場合には、銀行と保険会社を捨てて考えるのが効率的である。

また、「転職力」重視なので、安定性、採用人員が少ないことに起因する採用難度の高さ、ステイタス等は評価の対象とはならない。

よって、日本銀行、政策投資銀行のような政府系金融機関、JPX、日証金、保振のような何故か学生の間で評価が高い「マケイン(マーケット・インフラ)」もここでは除外される。

 

(※なお、外銀の一部には転職価値を有するポジションもあるという意見があるかも知れないが、そもそも新卒採用をする外銀(狭義の銀行)の採用数は少ないので、ここでは一律に銀行は捨てて考えることとする。)

②企業名よりも「職種」を重視する。

中途採用時に重視されるのは、スキルと実務経験(職種)である。もちろん、企業名がいいと中途採用でもプラスに働くが、中途採用は基本的にポテンシャル採用であるので、会社名がよくても募集職種についての経験が無いと採用されるのである。

また、外資系企業の場合、外国人からすると日本企業の格差(例 野村證券大和証券)は日本人ほどピンと来ないので、会社名よりもキーとなるのは「職種」である。

この点、冒頭で引用した就職偏差値ランキング(金融業界)は、コース別採用と一般採用(総合職)に極端な差を付けている。

例えば、野村證券GM(グローバルマーケッツ)の偏差値71に対し、普通の総合職は55と極端な差があるが、これは「職種」の違いが適切に反映されていると評価できるだろう。

外資系証券会社もピンキリである。

全体的に良く出来た感のある就職偏差値だが、外資系金融機関については、採用難度を考慮してのことだろうが、全体的に過剰評価されているところがある。

例えば、ゴールドマンサックスがトップ(偏差値76)は誰も反対しないだろうが、二番手グループ(モルガンスタンレーブラックロックJPモルガン)と偏差値が1しか違わないのはどうだろうか?

特にソシエテ ジェネラル、クレディアグリコルHSBCRBSが全て同じで偏差値71と、野村證券のIB(偏差値70)よりも高いというのは、疑問である。

そもそも、RBSとかクレディアグリコルとかはIBDが無いので、IBDでキャリアを積みたいのであれば大和でもみずほでもいいのでコース別のIBDに行った方が良い。

中途採用市場で、弱体外資>国内大手(IBD,トレーディング)という図式は無い。

④入社時には話せなくとも、英語はマスターするというのが前提である

金融機関で転職は、外資系企業のポジション抜きには考えられない。対象企業数、対象ポジション数、年俸水準の観点から、英語が話せないために外資系企業を対象外とするキャリアは極めて考えずらい。

このため、最初は国内系の金融機関に就職する場合でも、英語は20代のうちにマスターするというのが前提である。

1. 証券業界におけるおすすめ企業

①ゴールドマンサックス

説明を要することなく、とにかく入社できれば数年でドロップアウトしたとしてもどこにでも行くところがある超名門企業。

ただ、留意点があるとすれば、あくまでもフロント部門(トレーディング・セールス部門、IBD)を狙うべきで、バックオフィス(経理、人事、コンプライアンス、IT)は対象とすること。ある意味社内における「職種」格差が最も大きい会社。

バックオフィスで入るとフロント部門との比較で惨めになる上、いくらゴールドマンサックスだからといって、人事や経理から、外資系のトレーディングやIBDに転職することはまず不可能。

モルガンスタンレーJPモルガン

ゴールドマンサックスだけ狙っても採用されるとは限らないので、その併願先としての2社。メリル以下を含めるかどうかは意見が分かれるところだが、採用数が少ないので落としたところで採用が確実になるわけではない。そうであれば、国内系証券会社のコース別採用に注力した方が堅いと思われる。

③国内系証券会社のコース別採用部門

野村證券大和証券SMBC日興証券みずほ証券三菱UFJモルガンスタンレー証券の、国内系大手5社の、投資銀行またはマーケット部門(各社名称は異なるが)。

英語ができるというのが前提だが、ここで3-5年経験を積めばアソシエイトでゴールドマンサックスやJPモルガンなどの外資系証券会社に転職することも可能。

30歳でVP(バイス・プレジデント)に昇格すると、国内系大手でも1500~2000万円レベルでの年収も可能なので、長期間在職するという選択肢もある。

また、投資銀行部門の場合には、将来幹部待遇でネットベンチャーに転身するという可能性もある。

スキルや評価の面で大して高くない弱体外資の新卒に拘泥するのであれば、国内系証券会社にフォーカスする方が賢明ではないだろうか?

なお、リサーチ部門については注意が必要。何故かというと、証券会社のリサーチ業務の収益性は落ちる一方で、将来を踏まえたスキルと考えるとかなり不安である。

リサーチ部門を志望する場合には、そのあたりの将来性やリスクをOB/OGからよく聞く必要があるだろう。

2. 運用業界におけるおすすめ企業

序. 将来の転職を踏まえた運用業界の魅力

実は最後の方で取り上げる運用業界が、金融業界の中では「転職価値」を踏まえると一番おすすめである。

そもそも、証券会社と比べると運用業界はマイナーな存在なので、その魅力が知られていないところがうま味でもある。

まず、ビジネスモデルが安定しているということである。要するにストックビジネスであるので、何もしなくても運用資産額×手数料の収益が落ちてくる。このため、何もしないと売上ゼロの証券会社とは全く異なる。

従って、外資系とはいえ、運用会社の場合にはのんびりとした社風であるのが大きな違いである。また、リストラは外資系の場合には当然あるものの、そのリスクは証券会社と比べると格段に低い。

さらに、将来の展望についても、世界中のお金が増えれば増えるほど運用ニーズは高くなる。また、グローバルな低金利が続けば続くほど、リスク商品での運用ニーズが高まる。従って、将来はバラ色とは言えないが、そこそこ成長することは期待できる。

他方、証券業界はリーマンショックによる規制で収益の大半を稼いでいたトレーディング業務ができなくなったので、将来的にも見通しは明るくない。

それから、転職を考える上で極めて重要なのが、会社数が多いことである。新卒採用をする企業こそ少ないが、日本でそれなりにビジネスをやっている外資系の運用会社は30~40社程度はある。これに、ヘッジファンドを含めると、対象会社数は更に拡がる。

また、運用会社の場合、トレーディングや引受業務を行わないので、規模の経済や範囲の経済が働かず、小規模で収益性の高い会社はグローバルで数多く存在する。

このため、日本での立ち上げ業務というポジションもある。

もっとも、リスクが低い分、給与水準は外資系証券会社ほどは高くない。

VP(バイスプレジデント)と呼ばれる課長クラスで、フロント部門(運用・営業系)で3000~4000万、部長クラスで3000~5000万円レベルである。

その代わり、50歳前後でも働ける環境にあり、外資系証券会社よりは長く働ける。

以上全体を踏まえると、外資系証券会社と比べると、ミドルリスク・ミドルリターンと言える。

ブラックロックとフィデリティ

いずれも運用業界における最大手のグローバル企業である。

もっとも、採用人員数は少なく採用難度は高く、また、外資系証券会社と比べると給与水準は落ちる。したがって、運用業界を狙う学生は、国内系の運用会社にもフォーカスを置いた就活を展開すべきである。

②国内系運用会社

野村AM、大和投信、三菱UFJ国際投信、アセットマネジメントone、ニッセイAM、三井住友AM、三井住友トラストAMである。

こちらで経験を踏めば、運用、営業、バックオフィスとそれぞれの職種において外資系の運用会社に転職をすることが可能である。もちろん、英語が前提である。国内系運用会社は証券会社以上に英語がしゃべれない人が多いので、外資系運用会社への転職は数少ない候補者との競争(要するに外資系運用会社にいる社員)で済むので有利である。

また、基本的に今のところ終身雇用であるので長くいるという選択肢もある。

しかし、国内系運用会社は合併もあり、一人一人の仕事の範囲が外資系と比べてかなり狭いので、長くいるとぬるま湯で転職力が下がってしまう点に留意すべきである。

まとめ

転職価値を重視した金融機関選びをすると、一般的に知られた就職偏差値とは異なる見方をする必要がある。

〇まずは業種を限定して考えることが第一

 ⇒銀行、保険、政府系銀行、マケインは落ちる。

〇何よりも転職を考えると「職種」が重要である。

 ⇒ゴールドマンサックスでも人事、経理コンプライアンス、ITは美味しくない

 ⇒国内系証券会社のコース別採用は十分狙う価値がある

〇金融機関の場合、外資系企業が転職対象となるので英語は必須と考えるべき

 

以上を踏まえた上で、あまり知られていないが運用業界には魅力があるので、情報は限定されているかもしれないが研究する価値はあろう。