企業の不祥事や財務健全性の懸念から転職を考える場合のポイント。例えば、スルガ銀行の行員から転職の相談を受けた場合にはどうアドバイスするか?4

企業の不祥事や経営不安が騒がれた場合において、その企業の従業員が転職を考えることは珍しくない。

毎年のように、大企業の不祥事が報道されたり、経営不安説がささやかれたりしている。日本のマスコミの場合、そういったスキャンダルがあった場合には、来る日も来る日も報道し叩き続ける傾向にあるため、その会社の従業員自体も嫌気をさしてしまうこともある。

不祥事を起こした企業の従業員が転職をすべきかどうかはその人の考え方次第である。

企業不祥事が判明した場合でも、それが評判だけに関わる問題なのか、或いは粉飾決算のように企業財務に膨大な影響を与えて企業の存続自体が危うくなる場合もある。

企業の存続自体が危ぶまれるような場合には、否が応でも転職は視野にいれるべきだろう。

しかし、不祥事にとどまるだけの場合には必ずしも慌てて転職をしなければならないということにはならない。

その典型例が、金融業界である。大手証券会社、外資系証券会社、メガバンク、大手保険会社などは規制業種であるので、監督官庁である金融庁から行政処分を受けることが度々ある。

最近では、仮想通貨交換業者のトップであるビットフライヤーが業務改善命令を受けた。

しかし、これらはある意味一過性なので、しばらく時間が経てば解決するから、その時慌てて動く必要はない。

難しいのは、不祥事が経営状態にまで悪影響を与える可能性がある場合である。

例えば、不正融資を巡って揺れているスルガ銀行の場合には、転職を考えた方がいいかどうかは現時点ではまだわからないが、転職活動を視野に入れるということはあり得るだろう。

不祥事・スキャンダルが大きく報道された場合には、しばらく間をあけるのが賢明

あまり得策でないのが、不祥事の最中にバタバタと動くことである。

採用側は、不祥事・スキャンダルは多くは経営陣とかガバナンスの問題であって、個々の従業員が悪いということは無いと頭ではわかっている。

しかし、騒がれている間は、その企業のイメージが悪く、社内でも説明しにくいため、あまりポジティブな評価は出せないだろう。

人の噂も75日。翌年にもなれば人は忘れてしまう。

しかし、悲観することは無い。人の噂も75日。人はすぐに忘れてしまう。

例えば、翌年になれば不祥事の印象はかなり薄れることが多いので、転職活動はそのタイミングで実行すべきである。

例えば、「2017年、或いは2016年に不祥事を起こした企業名を挙げよ」と言われても答えられる人はまずいないだろう。毎年毎年、次から次へといろいろな問題が起きているのである。

さらに、業界が違えば全然わからない

上記に加え、不祥事やスキャンダルの類は、業界が違えばますます忘れてしまう。

例えば、金融機関の人間は、神戸製鋼とか富士重工の問題はあまり関心が無いだろう。

他方、金融以外の事業会社の人は、ビットフライヤー行政処分と言っても、ピンとこない人の方が多いのではないか?

面接の転職の理由で、必要以上にクドクドと自分の企業の不祥事・スキャンダルの言い訳をする必要はない。

翌年度になり、対象企業が異業種となると、自分の企業の不祥事・スキャンダルは、採用の障害にならなくなっているはずだ。

ところが、問題は自分自身が必要以上に気にしすぎることである。面接の転職の理由で、自分の企業が不祥事を起こしたことをくどくど語りすぎたり、自分が特に悪いわけでもないのに謝罪めいたコメントすると、結局全体にネガティブなイメージを与えてしまう。

企業の不祥事は、転職の理由の一つに過ぎないという前提で、転職の理由を語るべきだ。

結局重要なのは、自分自身のマインドの問題。

不祥事やスキャンダルを起こしてしまった社員は、それが売り上げに影響したり、苦情が増えたり苦労は増えるかも知れないが、自信を失わないようにすることが重要だ。

起こってしまったことは仕方が無いので、その間はじっくりと履歴書や職務経歴書、転職希望業界・企業の情報収集を行い、翌年度以降に備えた活動をするしかない。

その際、「企業の不祥事と自分の能力とは関係が無い」というマインドを持つことだ。

実際、1997年に大手証券会社の山一證券が自主廃業してしまったが、景況感が悪い当時であっても山一証券の社員は引く手あまたであった。

当時の社長の「社員は悪くありません。」というセリフが有名になったが、実際その通り、社員の評価は転職市場で悪い評価を受けなかったのだ。

従って、自分の勤めている企業が不祥事を起こして転職を考える場合、自分自身さえしっかりしていれば大丈夫なので慌てず冷静な対応をすべきである。