東大生(法学部、経済学部)は、外銀IBD流の企業分析を参考にして、就活をやってみてはどうか?

 

1. 企業分析が不十分なままで作成されるES

①氾濫している内定者のESサンプルだが…

就活情報サイトや個人ブログなど、人気企業から内定を獲得した先輩たちの

ESが公開されているが、果たしてそれは参考になるだろうか?

似たり寄ったりに見えるが、本当に優秀と言える内容なのだろうか?

 

それについては、中には優秀なものもあるだろうが、平凡な内容のものも

沢山混じっている。

 

それもそのはずで、ESの内容が優秀な順に企業は内定を出すのではなく、

学生のスペック、OB/OG訪問の評価との関連で総合判断するからである。

要するに、学生のスペックが高く、OB/OG訪問の評価が良ければ、

ESがイマイチであったとしてもそれだけで落とされることにはならない。

 

また、当然であるが、同じ業界と言っても企業によって人気度・難易度が

異なる。「投資銀行業界の」と言っても、外銀なのか国内系なのか、

外銀の中でもゴールドマン・サックスかその他小さい所、とではレベル感が

異なって当然である。

②そもそも、就活記事のライターは外銀や総合商社で働いたことがあるのか?

それから、就活記事について当該記事のライターの略歴が書いていない場合、

その信憑性に疑問がある。

そもそも、外銀や総合商社で働いたことが無い(採用されない)のに、

どうして、ESや面接の評価の基準がわかるのであろうか?

 

また、外銀や総合商社で働いたことがあったとしても、VP(課長)に昇格

することもなく、数年在籍しただけで、MDとか部長レベルの採用基準が

わかるのであろうか?

③高品質なESや面接のコンテンツ作成においてはしっかりとした企業分析が不可欠

以上のように、ネットに溢れているESとか面接対応をうのみにするのは

危険である。

 

東大生(特に法学部、経済学部)であれば、外部の情報に惑わされずに、

高品質なESや面接対応をしたいところだ。

そのためには、前提として、しっかりとした企業分析が不可欠となる。

 

何故なら、内定者のESサンプルを見ると明らかだが、その業界や

企業のイメージが漠然としており、十分に理解した上で書かれたようには

見えないからである。

 

例えば、投資銀行の「正しい」志望動機の例として、以下のような

ロジックのものが紹介されている。

 

投資銀行の志望理由は、日本のグローバル展開に貢献したいから。

〇社会や企業に大きな影響を与える仕事がしたいと思った。

 

これは、投資銀行に限った話では無いし、投資銀行のどういった業務が

どのように貢献するかを踏まえたものではない。

 

投資銀行の利益の大半である「トレーディング業務」は日本のグローバル展開

に関係が無いよと突っ込まれたらどう答えるのだろうか?

また、リサーチ業務や、債券や株式を機関投資家に販売するセールス業務は

日本のグローバル展開と関係があるのだろうか?

2. 外銀IBD流の企業分析について

以上のように、一流企業内定者とは言え、そのESのレベルが高いとは

言えない。それは、そもそも十分な企業分析ができていないからである。

 

もっとも、それにはやむを無い理由もある。

リクナビマイナビ他就活情報サイトでは、「企業分析」をやれとは

言っているが、その正しい方法を教えてくれないからである。

 

そもそも、就活関係の仕事をしている人達は、財務分析や企業分析の専門家

では無いので、参考にするのであれば、その道のプロの方法である。

 

この点、もっとも真剣に企業分析を行う職種はIBD(或いはリサーチ)であり、

特に、業務が厳しい外銀IBDのものが参考になるであろう。

 

レベルの高い東大生であれば、外銀IBD流の企業分析を参考に、就活

対象企業の企業分析を実行し、ES、面接等のコンテンツ作りに活かして

みてはどうだろうか?

①外銀IBDでの企業分析に係る仕事

外銀IBDで企業分析が必要になる場面はシンプルである。

例えば、MDから、「3日後にユニクロを外交することになった。柳井社長から

当社の話を聞きたいと言われたからだ。だから、その資料を用意しておいて。」

 

どうだろうか?もの凄いプレッシャーだろう。

国内系IBDの場合だと、こういった場合には、課長クラスが中心となって

複数の課長代理や平社員が分業して作業を行うが、外銀IBDだと人員数も少なく、

アソシエイト或いはアナリストがほとんど1人で作業を進めなければならないからだ。

 

そもそも、リサーチ部門と違って、IBDは業種別に細かく担当がわかれていないので、

仕事を振られた若手のバンカーは、ユニクロどころかアパレル業界自体全く

知らなかったりするからだ。

 

それを3日程度で、全部調べ上げて、添付のデータも含めて数十ページの

パワポに落とし込むのだ。

 

精神論的になって申し訳ないが、このような仕事を振られた若手バンカーと

同じ気持ちになって、企業分析をすれば、「日本企業のグローバル化に貢献

したいとか」「日本の産業界のプレゼンスを上げたい」といった雑な

志望動機は出てこないであろう。

②外銀IBDの企業分析の作業手順

先ほどの、ユニクロの資料作りの仕事を振られたケースを例にすると、

以下のような作業手順で仕事を進めることとなる。

 

まず、3C分析という経営分析の有名なフレームワークがある。

3Cとは、Customer、Competitor、Companyの頭文字を取ったもので、

最初に、Customer(市場)全体の動向を踏まえ、

次に、Competitor(競合)の状況を踏まえ、

そして、Competitor(自社)の強み・弱み・特徴を考慮し、

KSF(Key Success Factor)を見出して行くという手法である。

 

従って、先ほどのユニクロの例だと、

アパレルのグローバル市場の動向を調査する。世界全体の市場規模、

成長率、地域別の市況、商品別の市況、製造のための原材料や人材の

供給状況、生産設備、販売チャネル等である。

 

それを踏まえた上で、Competitorの分析を行う。

海外、国内において、どういったところが競合となっているか?

そういった競合に勝てるのか、勝敗を決する要因は何なのかといった

分析である。

アパレルの場合だと、ZARA、GAP、H&M等のグローバルプレイヤーの

動向や戦略を調べないと行けないし、国内における競合企業の動向も

把握しなければならない。

 

そして、その上で自社であるユニクロ自体の勉強をしなければならない。

過去の決算説明会用資料や中期経営計画を読み込んだ上、ユニクロが今まで

取ってきた戦略、経営資源、現状の課題を把握する必要がある。

 

自社分析ができたかどうかのリトマス試験紙は、「柳井社長が今考えている

ことは何か」について語れるかどうかだ。

 

外銀IBDはこの後、提言に向けてM&A対象企業の資料とかValuationの添付資料を

用意しなければならないのだが、就活生はこれは不要だ。

③就活の企業分析において、やっておくべきこと

就活のレベルだと、もちろん、外銀IBDのような厳しい状況ではないが、

当該企業に関する市場全体の状況、当該企業の競合の状況、

当該企業自身の決算の推移と経営課題については押さえておきたいところだ。

「当該企業の社長が何を考えているか」について、ペラペラしゃべることが

できるようになれば、とりあえず合格点は付くのではないだろうか?

最後に

上記のような真っ当な企業分析ができる学生はほとんどいない。

逆に言うと、上記のような企業分析を実行する学習能力を有する東大生に

とっては有利である。

 

外銀IBDの若手のバンカーはこういった仕事をやらされているわけなので、

その姿を想像しつつ、企業分析をやってみてはどうだろうか?

 

なお、企業分析については、こちらの過去記事もご参照下さい。
blacksonia.hatenablog.com