東大生(例えば経済学部)が、ES(エントリーシート)で落とされることはあるのか?

 

昔は就活というとリクルーター制度であり、今のように全学生が平等に

ES(エントリーシート)を提出することが義務付けられている時代では

無かった。

 

形式的な平等が好まれる日本社会では、「東大生でも実力が無いとES

レベルで落とされる。」という結論が好まれそうだが、実際はどうなのだろうか?

1. 就活と需給を考える ~例えば東大経済学部生の場合~

結局、就職というのは、採用したい企業の新卒に対する需要と、新卒で

就職したいという学生の供給との関係で実質的に決まる。

リクルーター制だろうが、ESだろうが、それは単なるプロセスの違いに

過ぎない。

 

例えば、東大の経済学部生の卒業生は(平成29年度)、331名ということである。

そして、そのうち、約1割が大学院等に進学する。

そして、約1割が公務員になる。

  

現役東大生が語る、東大経済学部の実態~時間割から就職先まで!~ | 合格サプリ

 

すると、331名の残りの8割、約270名が民間企業に就職をすることとなる。

 

ここで考えて欲しいのは、この時点で供給サイドである東大経済学部生の

数はわずか270名しかないということだ。

2. 更に、東大経済学部生の供給状況を吟味してみると…

この270名の学生のうち、当然、東大経済学部生なので上位層の学生の

レベルは高い。

従って、ゴールドマン・サックスモルガン・スタンレー等の外銀や、

マッキンゼー、BCG、ベイン等の外コン、

そして、近年人気の三菱商事三井物産等の総合商社を最初から

志望する学生は少なくない。

 

また、日本銀行国際協力銀行、政策投資銀行等の政府系金融機関

フジテレビ、TBS、電通博報堂等の人気メディア関連企業、

総合系、国内系のコンサル(野村総研、三菱総研、アクセンチュア、デロイト、

DI、経営共創基盤PwC、ベイカレント、EY等)といった

就職偏差値の高い企業に行く学生は多い。

 

このように、就職先を就職偏差値の高い一部の業界・企業に絞っている

学生は相当数いるだろうから、そういった学生を除くと、

採用が可能となる東大経済学部の学生はますます少なくなる。

就職先が固まっていない、或いは上記のような企業から落とされた

東大経済学部の学生数は100人ちょっと位しか残らないのではないだろうか?

3. どうしても東大生が欲しい業界・企業の存在

例えば、外食、消費、中堅メーカー等、特に東大生にこだわらない企業は

ある。

他方、どうしても東大生を採らなければ困るという業界・企業は

存在する。

 

例えば、メガバンク、大手証券、大手生損保、重厚長大系メーカー、

インフラ系の規制業種を中心とする大企業群である。

こういうところは、役員の東大シェアが高く、官僚的な社風でもあるので、

「うちは実力しか見ないので、東大生にはこだわりません。」等と、

人事部門が言うことは許されない。

一定数は何としても東大生を採らなければならないのである。

 

ところが、ここから先は熾烈な争いである。

銀行、証券、保険は、近年ではコース別採用制度があり、不人気なリテール

営業を最初から回避できるコースがあるので、東大経済学部生の

場合、一定数、そちらに流れてしまう。

しかし、それだけだと数が足りないので、普通の総合職コースからも

東大生を採用しなければならない。

金融機関の場合、野村、東京海上日本生命という業界ナンバー1企業は

給与が頭一つ抜けており、世間体もいいのでまだいいが、業界2番手

以降の金融機関は大変である。

大和証券SMBC日興証券、第一生命、住友生命明治安田生命

損保ジャパン日本興亜、MS&ADあたりは、本当に「うちに来て下さい。」

という感じであろう。

 

また、重厚長大も楽ではない。何故なら、給与・待遇面では、

金融や大手マスコミに太刀打ちできないからである。

また、最近の若い人は地方の工場で働くのは嫌だということもある。

 

したがって、石川島播磨、日産、JFE、日立、富士通あたりの経団連系メーカーが

東大生を採用するのは大変なのである。

4. 結局、超難関企業以外はフリーパスに近い?!

フリーの東大経済学部生100数十人に対して、どうしても東大生が欲しい

と考えられる企業について、ちょっと計算しただけで、東大生の数が

足りないということが容易に想像がつく。

 

従って、面白くも何ともない結論であるが、

外銀、外コン、総合商社、金融機関コース別採用、大手マスコミあたりの

超難関企業を除くと、東大生(経済学部生)であれば、実質的には

就職はフリーパスである。

よほど覇気が無いとか、マナーに問題があるとか、そういう特殊な事情でも

ない限り、大手金融とか大手メーカーからは容易に内定がもらえる。

 

実はこの結論は、数十年前と変わっておらず、リクルーター制の時代と

同じ結論である。日本企業の採用数や東大のステイタスが変わっていない

以上、需給を考えると当然の結果である。

5. 大事なのは「事実」を踏まえた上で、対策を立てること

就活は、本音と建て前が激しく入り混じる世界であり、マスコミの

偏向報道によって、結構学生が影響を受けたりすることは珍しくない。

極めて例外的なケースであっても、「東大生で就活全滅した」ということが

メディアに取り上げられたりすると、その情報に踊らされる学生は

いるだろう。

 

しかし、重要なのは「事実」についてしっかりと自分の頭で考えることである。

「学歴」は今でも就活の重要なファクターであるが、それだけで全て

決まるわけではない。

 

就活生はそれぞれの「学歴」或いはスペック(語学、資格、体育会等)を

踏まえた上で、自分の志望する企業について淡々と早い段階から

対応策を立てて遂行していくべきなのだ。

そのためには、正確な情報収集力と分析力がカギとなるのであろう。