【銀行、商社、電機、自動車】30年前(1988年)の就職人気企業ランキングを就活の参考にしてみよう。
1. 30年前の就職人気企業ランキング
就活生は社会人経験が無いということもあり、目先の人気企業を追いかけがちだ。
この傾向は大昔から変わらない。
果たして、人気企業を追いかけるのが正解なのだろうか?
これを確認するため、30年前の就職人気ランキングを参考に検討してみよう。
ちなみに、ランキングはリクルートのものであり、文系と理系とに
わかれている。
2. 実はあまり大きく変わっていない
「就職人気ランキングなんて当てにならない!」という結論の方が面白のだが、
実は、驚くほど今の人気企業と大きく変わっていない。
結局、みんなが行きたがる企業に行くのが正解、或いは正解である可能性が
高いということなのだろうか?
まず、特徴を確認しよう。
①文系はほとんど変わっていない。金融、商社、空運、大手食品…
文系の人気企業、特に、業種レベルで見ると、恐ろしいほど変わっていない。
東京海上(2位)、日本生命(4位)、住友銀行(5位)、富士銀行(6位)、
とずらり銀行、保険のトップ企業が上位を占めている。
それから、伊藤忠(7位)、三井物産(10位)とこの時も総合商社は人気である。
当時は「商社冬の時代」ということで、今と比べると人気は低かったのだが、
それでも人気ランキングの上位にランクされていたのだ。
他は、相変わらずの、全日空(16位)、味の素(18位)といったイメージの良い
空運とか食品である。
なお、1位はNTTなのだが、これは前年(1987年)に上場したという特殊要因が
あるのであるが、別にNTTグループ自体は株価時価総額の上位にあり、
これを選んでもハズレということはなかったであろう。
大手銀行(当時は都市銀行)は、その後、金融危機とか合併によって、楽しい
30年では無かったかも知れないが、名声とそこそこの高収入は得られたので、
それほど失敗ということは無かったであろう。
②理系の場合はとにかく電機が強かった
文系よりも、理系の方が人気ランキングに違いが出ているようである。
当時は古き良きバブルの全盛期であり、日本企業が世界を席巻していた時代である。
特に、電機と自動車が当時の日本の産業界の2枚看板であり、世界最高の
競争力を持っていたのだ。
例えば、NEC(1位)、日立(3位)、ソニー(4位)、日本IBM(5位)、
松下電器(パナソニック)(6位)、富士通(7位)、三菱電機(8位)、
東芝(10位)と、何と上位10社中、8社が電機である。
他方、今も日本が世界ナンバー1の自動車業界はと言うと、
ホンダ(9位)、トヨタ(11位)、日本電装(デンソー)(15位)と
あまり目立っていなかった。
それから、三菱重工(16位)、川崎重工(20位)と、この辺りは今と
あまり変わらない。
結局、理系については、電機>自動車が、自動車>電機になってしまったので、
流行を追って電機を選んだ学生が負けという結果のようだ。
とはいえ、日立、ソニー、日本IBM、松下電器(パナソニック)あたりは
途中厳しい時期もあったが、今でも検討しているし、年俸水準等の待遇が
悪化しているわけではないので、誤った選択では無かったと言えるだろう。
他方、NEC、富士通、東芝あたりを選択していたら、ちょっと残念な
結果だったのかも知れない。
3. 今後の就活において参考にできること
①業種選別だけでなく、企業選別も重要に
大手金融、商社、空運、食品、通信と、驚くほど業界レベルで見ると人気に
変動が無いのが文系であるが、その業界の中の個別企業レベルで見ると
成否がわかれている場合がある。
例えば、都市銀行の場合、三和銀行、第一勧業銀行、三井銀行あたりは合併で
相対的に厳しい立場にあったと思われる。
理科系の電機業界についても、上述した通り、NEC、富士通、東芝を選んだ学生と、
日立、ソニー、日本IBM、パナソニックを選んだ学生との間では、明暗が
分かれたであろう。
また、空運でもJAL、ANAいずれも人気であったが、JALは倒産してしまったので、
ここでも明暗がわかれたはずだ。
②個別企業の選別は難しいので、今後は転職力をつけることが重要
同じ業界の中でもその中でどの企業を選ぶかについては、今後も重要であろうが、
個別企業を見極めるのは難しい。
そうであると、選択した個別企業がコケた場合でも、外資系や同業他社に
転職することができるスキルと、転職に係る情報収集・分析能力を
身に着けることが重要になる。
それは、文系・理系を問わない。
③結構安定していて強い、内需系優良企業
この30年間は、日本企業にとっては厳しい時代であったのだが、実は、
その間も極めて安定していた業界・企業がある。
それは、内需型の優良企業だ。
例えば、味の素に代表される食品大手。味の素に限らず、サントリー、キリン、アサヒ
など変わらず安定していた。
また、三井不動産に代表される大手不動産。途中、負債の負担が重くなった時期も
あったが、三菱地所、住友不動産、東京建物といった財閥系不動産は安定的に
成長している。
少子高齢化というが、東京というレベルで見るとまだまだ発展しそうなので、
このあたりは狙っていいのかも知れない。
もっとも、少人数しか採用しないので内定を取るのは難しいが…。
それから、JR本州3社なんかも結構安定していて強い。
ところが、東京電力(理系14位)等の電力会社は、絶対安泰かと思われていたにも
関わらず、原発事故が起こってしまい、凋落してしまった。
このように、内需型優良企業の場合でも、何が起こるかはわからないので、転職力を
高めておく必要がある。
4. 日本の産業界の課題
30年前の人気ランキングの外にある話かも知れないが、日本の産業界の大きな
課題は、あたらしい業界、企業がランキング上位に食い込んできていないことである。
ヤフー、楽天、サイバーエージェント、ZOZOあたりがトップ10に入っていないのが
寂しい限りだ。この点、米国のGAFAとは大きく異なる点だ。
本来、日本の産業界を牽引すべきITセクターで強い企業が現れていないのだ。
ヤフー、楽天、サイバーエージェントも悪くないのだろうが、給与水準、
企業ステイタス、今後の成長期待等が不十分ということなのだろう。
また、ファナック、キーエンスも世界ナンバー1の競争力を有する企業
なので、もうちょっと人気がでてもいい気がする。
いずれにせよ、新しい企業がこのランキングの上位に入ってくることが
日本の産業界的には期待されるところだ。