素人が人事(採用担当)をやっているようなベンチャー企業に行ってはならない理由

 

1. そもそも企業の人事の役割とは?

ベンチャーは「人が全て」とか、ベンチャー起業家の最重要課題は

「優秀な人材を採ること」であるとか言われたりする。

 

ところが、現実的にはWantedlyなどでベンチャー企業を物色していると、

「ここの会社の人事担当者は大丈夫か?」と不安になったりする

クオリティだったりすることがある。

 

そもそも、企業における人事の役割とは何だろうか?

いろいろな表現の仕方があるのだろうが、

企業の「戦略」を、全ての役職員が理解し、それに向けて全力で取り組むように

仕向けることである。

 

そのためには、

人事部門自体が「戦略」を正確に認識した上で、それを、

役職員に正確に認識させる理解させることが前提となる。

 

その上で、

戦略を実現できる能力のある優れた役職員を採用し(リソース・マネジメント)、

役職員が全力で戦略の実現に向けて働き(モチベーション・マネジメント)、

それを継続して実行していくことが可能な体制を作る(組織デザイン)

ことが求められるのだ。

 

ところが、実際にはこれらを適切に実行できるような人事部門は

稀であり、大抵は、中途半端な採用管理、労務管理、給与年金事務しか

できていないことが大半である。

2. ベンチャー企業のCHOはできればCEOが兼務すべき?

人事部門の役割で、戦略を役職員に正確に伝えることというのがあるが、

これは主として大きな組織の問題である。

大企業の場合、経営陣と従業員の距離が遠く、なかなか戦略が末端まで

伝わらないかも知れないが、従業員が少ないベンチャー企業の場合には、

経営者と従業員の距離が近いため、そもそもこのような問題は

起こりにくい。

 

また、良い人材を採るという、リソース・マネジメントについては、

社長或いは共同経営者が直接採用に当たるのが最も効率的である。

会社のビジョンや魅力について、もっとも上手く語ることができるのは

経営陣だからだ。

 

モチベーション・マネジメントについても、規模が小さいうちは、

経営陣が従業員と一丸となって働くのが、通常であろうし、

経営陣が従業員にハッパをかけるのが一番モチベーションも上がるだろうから

人事部門にやらせる必要は無い。

 

メルカリなんかも、起ち上げの時は、山田社長自らが東奔西走して、

優秀な経営陣やスタッフを集めていた。

 

従って、ある程度の規模感になるまでは、CHOを外部から採用する必要は無く、

社長或いは共同創業者の誰かが兼務すべきなのである。

 

しかし、ここ数年間、ベンチャー企業に対する資金がダブついていたこともあり、

早い段階で数億円以上の資金が調達できたベンチャー企業も少なからず

存在し、中には、早い段階で採用活動を採用担当者に委ねていたケースも

散見された。

3. 素人の人事(採用担当)がやること

ベンチャー企業の場合、何故か採用担当者に人事経験が一切無いという

ことは普通にある。

人事経験以前にそもそも年齢が20代前半位で、ビジネス経験自体が

あまり無いことも珍しくない。

 

そうすると、そもそもその採用担当者自体、優秀な人、ダメな人を

多く見てきたわけではないし、優秀かどうか以前に、

スペックが高い人、低い人というものもあまりよく見てきていない

可能性が高い。

 

そうすると、そういった素人採用担当者が行うレジュメの選別の視点は

面白いように似通っていて、以下のような行動パターンとなる。

 

〇年齢が高い人(30後半以上)は全てゴミ箱直行

〇転職回数が多い人(5社以上)は全てゴミ箱直行

〇傷がある人(大学中退等)は全てゴミ箱直行

 

ある意味、大企業以上に、大企業的な選考の仕方をしてしまうのだ。

本来、採用条件に劣るベンチャー企業としては、何らかのキズがあっても

1点豪華主義的な強みのある人を揃えるというのが一つの手なのだが、

まったく逆の行動を取ることになってしまう。

 

メルカリでもなければ、そんな無名のベンチャー企業に綺麗なスペックの

エリートが集まるわけもなく、結局、中途半端な若手ばかりが集まり、

リソース・マネジメントの時点で沈没してしまう。

4. 素人が採用担当をやっているようなベンチャー企業に行ってはならない理由

未経験の者が採用担当をやるとこのような結果になってしまうことが

多いのだろうが、それについては採用担当者に非は無い。

経験が無い上に、大企業のように先輩が教えてくれるわけでは無いので

それは仕方が無いことだ。

 

問題は、まだまだ組織が小さい段階なのに、リソース・マネジメントを

未経験の若手に丸投げしてしまう経営者である。

人材こそがベンチャー企業の競争力の源泉であるにも関わらず、

その辺の認識が不十分な経営者がやっているような企業にはあまり

明るい未来が開けるとは思えない。

 

ベンチャー企業の場合は、マクロ経済環境、グローバル金融環境等によって

お金がダブついている時には、大した企業でなくとも、テーマが旬であったり

すれば、シリーズAの段階であっさりと数億の資金が調達できることがある。

従って、経営者自体が勘違いしてしまうのかも知れない。

 

いずれにせよ、まだまだ小規模な段階のベンチャー企業なのに、

採用活動を若手に投げているような企業は止めた方がいいだろう。