2019年以降は、規模ではなく、「一人当たり利益」にこだわるベンチャー企業が増えてもいいのではないだろうか?

 

1. IPOで規模拡大を狙っても、時価総額1000億円はごくわずか

会社創設後、短い期間に数億円規模の出資をVCから受けることができた

有力ベンチャー企業は、ほとんどがIPOを目指す。

そして、数年間経営幹部も従業員も薄給に耐えて、無事IPOに成功すると

二桁億以上の報酬を手にすることができる。

 

しかし、問題はIPOから先で、一旦IPOに成功してもその後も継続的に

成長ができるベンチャー企業はごくわずかだ。

 

例えば、東証マザーズ時価総額が1000億円以上ある企業は、

以下の5社しかない。

(もっとも直近の株安で減ったということもあるだろうし、成長している企業は

東証に鞍替えするということもあるのだろうが)

 

・サンバイオ

・メルカリ

MTG

ミクシィ

ティーケーピー

 

上場を維持する意味があるのかどうかが議論になる水準とも言われる

時価総額300億円を基準にしても、38社しかない。

 

例えば、話題性が高く注目ベンチャーであった、

フリークアウト、クラウドワークス、ウォンテッドリー、メタップス

あたりも300億円を割り込んでいる。

2. IPO後に成長が持続するのが難しい理由

これには、いくつも理由があるのだろうが、人事面から考えると、

以下のような要因が考えられる。

①ストック・オプションも無い、給与水準も高くない会社で、トップクラスの人材は働きたいとは思えない。

日本人はお金にこだわらないという見方もあるが、就職先に関しては

そんなことはない。

就職偏差値上位の会社は、皆、高給である。

特に、中途採用においては、よりシビアである。

 

IPO前の創業期においては、ストック・オプションに加えて共通の思いというのが

従業員にもあったのだろうが、IPO後に入ってくる人材にはそういった思いの共有

は無い。

 

WantedlyとかGreenとかを見てみると、嫌になるぐらい似たような

年収水準での求人情報があふれている。

だいたい、500万~1000万円というレンジで、対象年齢は20代後半から

30代前半位であろうか。

そして、レンジの上限である1000万円はまず出ることはない。

これでも、IPO前の創業期と比べたらいい方だということであろうが、

ストック・オプションが無ければ、トップクラスの人材にとっては

全く響かない金額である。

②買いM&Aによるモチベーションダウン

IPOに成功したネット系ベンチャー企業は、買いのM&Aをやりたがることが

多い。

しかし、割高な買収プレミアムを支払い、容易でないPMIを実行しなければ

ならないM&Aの成功難易度は高い。

 

ベンチャー企業の場合、給与的な条件が悪い分、新規事業を手掛けることが

できるというのが売りなのに、安易に、M&Aを実行してしまったら、

既存の従業員のモチベーションが失われる。

買収対象企業の模倣でいいので、既存の従業員に創業させてみることは

できないのだろうか?

 

この点、サイバーエージェントは基本的に買いのM&Aを実行せず、全て

自分たちで対応しているという点が注目される。

 

IPOをしてしまうと株主のプレッシャーからか、早く規模を拡大しないと

いけないということはわからなくもないが、先行企業の失敗事例から

もう少し抑制的に対応すべきではなかろうか?

3. IPOではなく、一人当たりの利益に着目してはどうか?

結局IPOをしても、結局IPOゴールになってしまう企業が多い。

そこで、狙いを変えて、IPOではなく、一人当たりの利益にこだわる起業を

目指すのはどうだろうか?

 

これは、CEO(CHOを兼務)、CTO、CMOCSOCFO

トップクラスである人材で固めて、あとはアウトソースをする企業形態

である。

 

実は、IPOを行い高株価を付けたが、PKSHAテクノロジーのような

業態であればこれが可能である。

コアの人材は、5人から10人を超えない範囲であり、高付加価値型の

ソフトウェア、受託開発型事業を手掛ければ、

一人当たりの利益は高く、それによって、高給を支払うことができる。

 

すなわち、平均年収「3000万円」のベンチャー企業ということだ。

IPOを目指さないと、内部統制関連の人員を採用する必要は無いし、

株主のプレッシャーが無く、自分たちのペースで運営していくことが

できるのだ。

 

こういう企業は新卒採用をする必要は無いが、20代で年収3000万円を

支払えば、かなりの人材を採用できるはずだ。

また、無理して人員増をしなくても、フリーランスという方法も

可能だ。

 

例えば、このStockSunという企業はこの記事の後も順調に成長し、

一人当たりの平均年収は数千万円はあるのではないだろうか。 

社長以外全員フリーランス・平均年収1500万以上。話題の27歳経営者が語る「粗利第一」経営論とは | ASSIST【アシスト】

 

もっとも、非公開の少数精鋭型企業の課題は、株をどのように配分するか

についてだ。生株を渡してしまうと、退職した場合に面倒なので、

疑似ストックオプションのような形にするのか、株は無しで給与で還元するのか

その点について詰めておくことは必要だ。

最後に

日本企業で給与水準がトップクラスの企業は、総合商社、東京海上

野村證券日本生命電通三井不動産と巨大企業ばかりであるが、

外銀、外コンは相対的に従業員数は多くない。

 

非上場・少数精鋭型で給与水準が高いベンチャーという選択肢が

増えて行けば、面白いと思う。