法科大学院時代の法学部の就職先について考える ~一橋大学法学部のケース~

 

1. 医者と弁護士は高校生のうちに進路を決めないといけない

経営者になりたいとか、公務員になりたいとか、商社マンになりたいとか、

多くの職業は大学に入学してから決めればよい。

 

しかし、やっかいなのは医者と弁護士で、いずれも高校生の間に決断をし、

医者の場合は医学部、弁護士の場合は法学部に入学せざるを得ない。

 

もっとも、弁護士の場合は、厳密にいうと、予備試験ルールがあるし、

他学部からでも法科大学院に未修に入学する、或いは、学部時代に

法律を勉強して既習で入学するということも可能である。

 

しかし、司法制度改革に伴う弁護士増による弁護士の収入の悪化と、

新司法試験の負担を考えれば、最初から法学部に入るのが遥かに

効率的である。

 

弁護士の魅力の大幅低下により、せっかく新司法試験制度開始後に

法学部に入りながら法科大学院に進学しない場合は、どういった

就職が可能なのだろうか?

 

この点、一橋大学法学部が詳細なディスクローズをしていたので、

それに基づき考察したい。

2. 法科大学院その他への進学割合

一橋大学法学部の2018年3月の卒業生数は、194名である。

このうち、法科大学院進学者数は、33名である。

何と、卒業生の2割にも満たない数である。

なお、東大法学部が数年前のデータだが、卒業生386人のうち、

法科大学院に進学したのが78人と約2割なので、

こんなものなのかもしれない。

 

そして、法科大学院以外の大学院への進学者数が12名であり、

内訳は、法学研究科、公共政策大学院等である。

 

194名の卒業者から、法科大学院の33名と、それ以外の大学院への

12名の進学者を除いた者が、就職をすることとなる。

 

3. 公務員

このうち、公務員になるものが、国家公務員11名、地方公務員8名の

合計19名と多いのが法学部の特色である。

このうち、財務省3名というのが注目される。

昔は1名いるかどうかだったのだろうが、東大法学部生の官僚人気の低下に

伴い、増えたのだろうか?

 

4. 民間企業就職

卒業生総数194名から、法科大学院進学者33名、

その他の大学院進学者12名、

公務員になる者19名を除いた、

130名が民間企業に就職することとなる。

①金融

外銀ゼロというのが寂しい限りである。

これが東大法学部との大きな差である。

なお、国際協力銀行3名、日本政策投資銀行2名というの悪くないであろう。

②コンサル

マッキンゼー他、いわゆるMBBは皆無である。

これも東大法学部との大きな差である。

なお、MBB以外のコンサルだと、アクセンチュア2名、野村総合研究所1名

である。

③総合商社

総合商社は以下の通り。

 

双日 3名

住友商事 2名

・丸紅 1名

伊藤忠 1名

 

合計7名である。民間企業就職者が130名ということを考慮しても

あまり多いとは言えない。しかも、三菱商事三井物産はゼロである。

④その他

三菱地所1名、TBS1名、NHK1名。

5. まとめ

法学部であるが、法科大学院への進学者数は2割に満たない。

もっとも、公務員となる者が1割程度見られる。

民間企業に就職する者は、卒業生のうちの2/3程度と、

商学部が85%位であるのと比べると、かなり比率は低くなっている。

 

とはいえ、東大法学部と比べると、かなりの割合の者が民間企業に

就職している。

民間企業への就職者の内容については、外銀・外コンがゼロであり、

また、総合商社も7名と決して割合は高くない。

 

これは学生の希望通りなのか、そうでないのかはわからない。

ただ、外銀・外コン志望者はあまり多くなさそうである。

 

一橋大学法学部と一橋大学商学部とでは、

大学入試における難易度はそれほど差はないと思われる。

 

しかし、民間企業への就職については、

商学部の方が、いわゆる就職偏差値・人気ランキングにおいて

上位の企業に多く就職しているように見える。

 

単純に、民間企業での就職を考えるのであれば、商学部とか

経済学部に進学した方が良いように思えるが、

この点はわからない。

実際はどうなのだろうか?