東大と慶応からメーカーに就職した若手社員が、金融業界に転職する方法

 

序. そもそも、何故、東大と慶応か?

東大(文系)と慶応から、外銀、国内系金融機関に就職する者は多い。

このため、東大や慶応からメーカーに就職した若手社員が、外銀とか国内系金融機関に

就職した同期、先輩、後輩と卒業後に会ったりする機会は少なくない。

 

すると、当然、お金の話が出たりするものなのだが、給料水準のあまりの違いに

ショックを受けることが多い。

特に、東大とか慶応の学生であれば、金融機関に落ちて仕方なくメーカーに行った

ということは無いだろうから、学生時代に金融機関を受けていたら内定をもらえて

いたと後悔しても不思議ではない。

 

実は、メーカーに行って、給与水準を不満として、金融機関への転職を図る者は

大昔から存在したのである。

1. メーカーから金融機関に転職する過去のケース

①1980~1990年頃

1980年代後半は、いわゆるバブル期であり、金融機関の羽振りは良かった。

そして、特に証券会社は人材難ということで、他業態からの中途採用

バンバン行った。

 

例えば、メーカーについても、三菱自動車NECコマツ神戸製鋼IHIソニー

自分が知る限りでもいくらでもある。

そして、メーカーで「財務関係」をやっていたとかは全く関係ない。

営業職、研究職、…金融とは全く関係ないバックグラウンドは要求されなかった。

重視されたのは「出身校」と「学歴」のみである。

 

さらに、ひどい話が、そういうポテンシャル採用でメーカーから来た人たちの

配属先は、今でいうIBDとかデリバティブ関連部署とか、花形の部署である。

当時は、コース別採用は無かったので、同じ慶応大学出身でも、プロパーで

証券会社に入ってリテール営業で苦しんでいる者がいる一方、慶応大学・NECから

中途採用で入ったものはいきなり資本市場部への配属なのである。

不公平でひどい話なのだが、当時はこういうことがあったのだ。

②1990~2000頃(バブル崩壊期)

1990年代に入り、バブル崩壊によって金融機関の採用需要は大きく減退した。

また、バブル期に新卒も中途も大量採用をしたので、おなか一杯の状態

である。

全くゼロでは無かったかも知れないが、80年代のようなメーカーからの

中途採用はほとんど聞かなくなった。

③2000年~

1997~98年の金融危機を脱し、第一次ITバブルを経験し、

金融機関は再び、昔と比べると控えめであるが、他業態からも中途採用をするように

なった。

 

但し、80年代とは異なり、当然中途採用の基準も高くなった。

金融業と縁もゆかりもない職種の者は、たとえ東大出身であっても採用されなくなった。

 

他業種からは、リクルートの不動産部門出身で不動産ファンド部門でニーズがあるとか、丸紅でプロジェクトファイナンスをやっていた者がアセット・ファイナンス部門でニーズがあるというような、金融業務でも応用が効く職種の者だけが採用された。

また、そういう人達は、有名大学出身かつ英語も堪能というスペックであった。

 

2. メーカーから金融機関に中途採用されるために必要なこと

上記の通り、他業界から金融機関に転職するためのハードルは上がっている。

相応の学歴とか企業名というのは当然であって、それに加えて、以下のような

スキルが求められる。

①英語力

実は、大手金融機関には英語ができない者の比率は結構高い。

従って、中途採用で入社する者には、英語要員的な役割も期待されたりする。

絶対必要とまでは言い切れないが、業界が違うという大きなハンディを負っているので、英語位は磨いておきたい。

また、新卒採用の場合にはTOEIC800位あれば差別化できたかも知れないが、

それでは全然使い物にならない。

金融機関でビジネスレベルの英語力と言うと、TOEIC換算だと900以上は欲しいので、

しっかりと学習する必要がある。

②金融と何らかの関連性のあるスキル

これが実は一番厳しい条件かも知れない。

評価される職歴としては、経営企画でM&Aに関わったとか、財務部門でファイナンスに関わったとか、そういったレベルである。

 

M&Aとかファイナンス(DebtでもEquityでも)、或いはIPO(自社或いは子会社)あたりが、わかりやすく、好まれるキーワードである。

 

他方、人事、経理、法務、総務という一般的なコーポレート業務だけだと、

刺さりにくい。ましてや、工場で総務をやっていましたというのでは門前払いされてしまう。

③年齢

全てにおいてそうだが、若ければ若いほど転職しやすい。

他業界からだと完全なポテンシャル採用なので、20代は当然として、

25歳前後位の方が何とかなりやすい。

 

もっとも、年収を理由に転職を考えるケースが大半であろうから、

この点はあまり問題にならないかも知れない。

(30歳を過ぎて、突然、給料を理由に金融に行きたいとは思わないだろうから)

3. それでも金融機関に転職したい場合の裏技

英語とか資格(USCPAとか証券アナリストとか)とかは何とかなっても、

職種だけはどうしようもない。日本企業の場合、メーカーも

配属先については自分の希望は通らないからである。

特に、メーカーで地方の工場勤務とかになったら、そもそも転職活動すら

できなくなってしまう。

そういう場合には、以下の裏技的な方法がある。

もちろん、必ず金融機関に転職できる保証がないのがつらいところだが。

 

①会社を退職して、海外の有力校のMBA取得のために留学する

これは、裏技とは言えないかもしれない。

海外の有力校のMBAを取得すれば、何らかの形で再出発ができる可能性が高い。

もっとも、海外の有力校に合格するのは容易では無いし、何よりも、

お金がかかる。メーカーの給料だけだと、留学費用を貯めるのは至難の業である。

 

②国内のMBAを取得して、再就職する。

海外のMBAは現実的でないという場合には、費用が安いし、入りやすい国内MBAという手もある。

例えば、会社を退職して全日制のMBAコースに入るというのであれば、

慶応ビジネススクール

早稲田ビジネススクール(全日制)、

一橋ビジネススクール(国立)、

がある。全日制の良い所は、再就職を前提としているので、

ある程度再就職の世話もしてもらえるからだ。

もちろん、海外MBAと比べると箔がつかないので、外銀とか高望みはしない方がよい。

国内金融機関に入れれば御の字だろう。

 

早稲田ビジネススクールには、1年コースもあるので、コストを抑えることができるので、悪くない選択肢であろう。

 

なお、一橋ICS(神田)、早稲田(日本橋)には、夜間開講の、

ファイナンスを専攻するMBAがあり、これだと会社を辞めなくても良い。

しかし、こういったところは、再就職を前提としていないので、

就職の面倒はあまり見てくれない。

ただ、会社を辞められない場合には、検討してみてもいいだろう。

 

③セクターアナリスト(調査部)

これは、今では裏技だが、大昔はわりと見られた方法である。

具体的には、自分がいる業界をカバレッジとするリサーチ・アナリストを

狙うということである。

 

長年製薬業界にいる場合は、製薬会社カバレッジのアナリスト、自動車会社にいる場合には、自動車カバレッジのアナリストと言うパターンである。

 

今は、リサーチ・アナリスト自体が構造不況職種化しているので、厳しいが、

いちよし証券東海東京証券岡三証券等の準大手の証券会社の

リサーチ部門を狙うのが現実的であろう。

但し、準大手証券の場合だと、年収水準はメーカーと変わらないので、

年収アップはそこから転職してからとなる。

最後に. 1社目の選択は重要。周りは気にせずよく考えよう

最初の1社目の選択というのは、キャリア形成の上で極めて重要である。

そこでコケてしまうと、時間が経つにつれ、逆転はどんどん不可能となっていく。

 

昔から、「周りがみんな金融を狙うから面白くない。だから、自分はメーカーに行く。」というタイプの天邪鬼な学生はいつの時代もいるものである。

しかし、そういった考えだと後悔するケースも多い。

 

本当にメーカーが好きで行くなら全然問題ないし、後悔もしないだろうが、

そうでない場合には、よく考えた方がいい。

入社してしまってから是正するのは、本当に大変だからである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後悔しても不思議ではない。