東大経済学部生の総合商社における内定格差の原因を考える。外銀・外コン内定持ちから、大手5社全滅まで。
先日、リクルート系の転職エージェントの幹部と話した際に、東大経済学部生で総合商社の大手5社(三菱商事、三井物産、住友商事、伊藤忠、丸紅)を全滅した学生がいることを知って驚いた。他にも、高学歴で優秀にもかかわらず、総合商社全滅の学生は少なくないという。
バブル期から1990年代ぐらいまでは、今ほど総合商社は人気が無く、
東大経済学部生であれば、礼儀正しく普通に受け答えができれば、財閥系3社の少なくとも1つからは内定はもらえるという感覚であった。
しかし、近年の異常とも思える総合商社の人気の過熱ぶりと、採用基準の微妙な変化により、東大経済学部生の間でも、外銀・外コン・総合商社総なめ組から、大手5社全滅まで大きな格差が生じているようだ。
その格差の原因としては、以下の要因が考えられる。
1. 英語力の格差
さすがに商社を志望する学生で英語をマスターする気がない学生はいないはずであろうが、従来は、就活時点での英語力は問われなかった。
このため、東大経済学部とか、早慶の体育会の学生の中には、英語ができない者も数多くいた。
しかし、近年では商社人気に伴い、ハードルが全体的に上がってきているのと、
グローバル人材への需要が特に強まっていることから、英語ができないと話にならなくなってきているようだ。
早慶の学生の中には、高校のうちから総合商社を視野に入れ、大学の交換留学制度を利用する前提で入学してきている生徒もいるという。
単なる英語力だけでなく、グローバル・カルチャーやリーダーシップも習得できるチャンスがあることから、短期留学ができれば望ましいが、費用その他で難しい場合もあろう。
そういう場合には、できればTOEIC860以上、それが無理でも800以上は取っておきたいところだ。
そうであれば、英語は何とかしようという意図はうかがえるし、英語が何もない学生よりは優位に立てるからだ。
このため、総合商社の難化が顕著である今日では、東大経済学部生と言えども、
就活開始前までにTOEICで結果を出しておくことが必要となってくる。
2. 業界・企業分析力による格差
これは、総合商社だけでなく、外銀のような競争が厳しい企業では、
必須項目になってきているようだ。
従来は、商社の違いとか、ビジネスモデルといってものは、学生がOB訪問の際に教えてもらうものであったが、最近では、総合商社の各社の違いを理解した上で、
志望理由、志望部門に落とし込めるようにする必要があるようだ。
このため、各社のWebサイトに開示されている関連情報は隈なく見ておく
必要がある。
おススメなのは個人投資家向けのIR情報だ。
・各商社の事業ポートフォリオ
・各商社の経営戦略(プライオリティ)
・各商社の経営理念
・各商社の直近の重大ニュース(大型M&A)
は少なくとも頭に入れておくべき必要がある。
例えば、伊藤忠は、食料・住生活・繊維が事業の7割以上を占め、反対に、
資源ビジネスの割合は極めて低い。
それにも関わらず、事業ポートフォリオを調べないで、
「資源がやりたいです。」と言おうものなら、不合格一直線である。
反対に、資源ビジネスが大半の三井物産に対して、「住生活がやりたい」
「インフラがやりたい」と言うのであれば、相応の説明ができなければならない。
もちろん、一般に学生はビジネス周りは結構苦手であり、
この手の話で面接官をimpressできるような学生は少数である。
しかし、だからこそ、早い段階で各社ごとの事業ポートフォリオとか経営戦略について、十分学習した上で、経営戦略に関する議論ができるまでに磨いておけば、
内定にぐっと近づくことができるわけである。
また、大型M&A情報には要注意である。
例えば、伊藤忠でCITICとの提携、丸紅でガビロンの買収について知らないようだと、
本気で入社する気があるのかと思われかねない。
従って、Webに載ってあるプレスリリースはチェックしておく必要がある。
3. 基本的な戦略構築力による格差
①自己PRとその理由に関する準備は十分か?
どこの企業でもそうだが、ESや面接で聞かれるのは、
〇何故この業界か?(何故、メーカー、マスコミ、金融等ではなく総合商社か?)
〇何故この企業か?(例えば、何故、商事や伊藤忠ではなく、物産なのか?)
ということだが、
それを前提として、何故自分を採用する必要があるのかということだ。
そこで、業界・企業によって微調整はするかも知れないが、自己PRとその理由を
きっちりと考えておく必要がある。
ここの軸がブレたり、説得力に乏しいと、あらゆる企業において苦戦することになる。
その際、注意しなければならないのは、
単に「体育会で頑張りました」「ゼミで勉強頑張りました。」「留学しました。」
だけでは不十分であり、それが企業の業務とどう結びつくのかというところまで踏まえた上でプレゼンテーションをする必要がある。
従来は、それだけで他の学生と差別化できただろうし、今でも、メガバンクとか大手メーカーであれば問題ないかも知れない。
しかし、外銀とか総合商社の場合には、ハイレベルな競争となるので、
一歩深めておく必要があるのである。
例えば、留学であれば、留学先の外国人の他の生徒をまとめあげて何か研究を協働して行ったエピソードを話したうえで、グローバル・リーダーシップに適している旨アピールすることが考えられる。
また、投資関連事業への理解をアピールするために、ファイナンス関係のゼミで学習し、株式投資を行い、相場変動を毎日ウォッチしているというパターンである。
これは、付け焼刃では厳しいので、結局は早い時期(大学1年生)から準備をすることが必要となってくる。
②プレゼンテーション力の問題
上記①の自己PRとその理由は、重要であるが、いかに上手くそれを
用意できたとしても、うまく伝える必要がある。
いわゆるプレゼンテーション力の問題である。
これは、もともと得意・不得意があるのだが、自信が無い人は、
紙に書いてみて実際に練習をする必要がある。
本当は、成功している社会人に聞いてもらうのが一番いいのだが、
なかなかそれは難しい。
そこで、自主ゼミをやるとか、実際に練習してみることが重要だ。
プレゼンに関するスキルは社会人になってからも極めて重要なスキルの
1つとなるので、今の就活の段階で一生懸命やっておいて損は無い。
TEDとかのYouTubeを見てみるのも参考になる。
プレゼンは是非磨いておいて欲しい。
4. 自信と心理的な余裕を作る:他の競争が厳しくない会社から内定をもらっておく
これは、新卒採用に関わらず、中途採用の場合もそうなのだが、
プレッシャーがかかると、なかなか面接で力を発揮することが難しくなる。
他方、1つでもそこそこの内定を持っていると、どこか行くところはできたということで、心理的にリラックスすることができ、実力を十分に反映したプレゼンを行うことができるようになる。
最近では、外銀・外コンの内定を持っている学生が、総合商社からの内定を総取りするという現象が見られるが、そういう学生ほど自信に満ち溢れ、それがまた評価につながるという正のスパイラルができる。
反対に、トップ企業ばかり受ける学生は落とされるごとに自信を失い、プレッシャーが高まっていくため、余裕が見られず、それが低評価につながっていくという負のスパイラルができてしまう。
このため、東大経済学部の学生でも、優しい所から順に内定を取っておく必要がある。
これは無駄なように感じるかも知れないが、難関企業から内定を取るためには
不可欠なプロセスである。
ベンチャー企業(中には難しいところもあるが)、東京海上以外の損保、
日本生命以外の生保、大手メーカー(非外資)あたりだと、東大経済学部であれば
内定を取るのは難しくないので、練習のためにいろいろ回っておくことが重要だ。
大学受験の時も、東大一本でも、一応早慶を受験する高校生が多いのと同じ理由である。
また、いろいろな業界、規模の企業を回っておくことは、間接的ではあるが、
総合商社を受ける上でも勉強になる。
何故なら、メーカーとか銀行が商社の取引先であったりするからである。
このため、面倒臭がらずに、他の企業も回って、内定をゲットしておくという
作業はキッチリとやっておくべきだ。