保険版フィンテックのInsurTech(インシュアテック)で変わる?保険業界への就職・転職は狙い目か?

 

NewsPicksで、保険業界の特集がされている。

地味目な保険業界であるが、フィンテックの保険版ともいうべきInsurTech(インシュアテック)で保険業界は劇的に変わってしまうのだろうか?

そうした場合、InsurTech企業を目指すベンチャー系保険関連会社に入っておけば、ストック・オプションで大儲けできるのだろうか?

 

1. 保険業界の変化を考察するにあたっての4つの視点

NewsPicksは、以前にも「銀行は要らない」といった過激な特集を行ったが、銀行がそうそう早くに無くなるとは思えない。

メディアは見てもらってナンボのビジネスなので、センセーショナルな報道をしがちなので、自分のキャリアを考察するにあたっては、冷静・慎重な判断が必要となる。

 

それでは、保険業界は本当に大きく変わってしまうのだろうか?

以下の4つの視点から見ていきたい。

 

ライフネット生命保険業界を変えたか?

もう最近ではあまり話題にならないかも知れないが、保険業界の変革者というと、

何と言っても、出口治明氏と岩瀬大輔氏の2トップが起業したライフネット生命である。

 

ライフネット生命が設立されたのは2006年10月と、12年も前のことである。

当時は、株においては、ネット証券がリアル証券を完全に凌駕したので、

保険もネットによって全てネット生命に移ってしまうのではないかと、

当時の投資家たちは期待したのではないだろうか?

 

ところが、カリスマ経営者の2人がフルコミットし、何とか6年後の2012年に東証マザーズに上場したものの、いつまで経っても赤字のままで、とうとう去年の6月には、出口治明氏は退任してしまった。

 

そして、KDDIが株の25%程を取得しており、どう見ても保険業界を変えたとは思えない。

 

ライフネット生命の管理職の人と話す機会があったので、敗因について聞いてみると、「たかだか月あたり数千円のために、ネットに切り替えてくれる人がいなかった。また、ネットへの切り替えをうながすためには莫大な広告宣伝費と手間がかかった。」ということである。

 

要するに、保険は人を介してやった方が簡単で、ネットにわざわざ買える程はないということだ。

 

②自動運転と自動車保険の件

大手損保業界の中の人と話す機会があったが、損保業界としては2030年を自動運転普及の年と想定し、いろいろと対応を始めているようだ。

かなり先の話でどうなるかわからないが、自動運転が普及すれば、現在の損保の主力商品である自動車保険のパイの大きさは小さくなる方向に進むという。

また、今のところ、フィンテック関係の会社の存在感は特にないという。

③LINE7800万ユーザーと金融ビジネスの乖離

NewsPicksでは、LINEの保険事業参入が、いかにも画期的で成功を収めているような取り上げ方をされているが、実態はとても成功しているとは思えない。

業界の人がコメントを付けているが、LINEの保険販売高はごくごくわずかであり、しかも、なかなか売れなかったという。

 

LINE7800万ユーザーという、インパクトのあるLINEの利用者数を根拠に、LINEの金融事業を過度に脅威としている報道が見受けられるが、本当に脅威だろうか? 

 LINEと金融と言うと、数か月前に野村證券との提携の話があったが、

現在では話題にすらなっていないのではないだろうか。 

newspicks.com

 

それは単純な話で、LINE7800万ユーザーというのはコミュニケーションやゲームをやるためにLINEに来ている訳で、株、投信、保険が買いたくてLINEに来ているわけではないのだ。

7800万という母集団があまりに大きいので、ほんのわずかでも、金融事業に来てくれたら結構な数になるという期待なのだろうが、関係ない人を金融ビジネスに引っ張り込むのは容易ではない。

 

④海外のウソ ~海外で起こったことが同じように日本で起こるわけでは無い~

InsurTech(インシュアテック)というと、よく南アフリカの成功事例がとりあげられる。

しかし、海外で流行ったことが日本でも同様に起こるとは限らない。

特に金融ビジネスにおいては、規制や経済環境が大きく異なるので、似たような事象が発生するとは限らないのだ。

 

ロボアドバイザーとかはアメリカでは1社だけで数兆円にも及ぶ運用額になっているが、日本では最大手のウエルスナビがようやく1000億円の預かり資産を達成したところである。

また、中国などではキャッシュレス比率が急速に高まっているものの、日本のキャッシュレス比率が同様に急速に高まる兆しがあるとは思えない。

 

特に、保険業界は規制が厳しいし、業界団体が強い力を持っているので、異業種からの新規参入が円滑に行われる環境にない。

できるにしても、物凄く時間がかかる話であろう。

 

2. 保険業界の就職・転職について

以上のように、日本の保険業界がInsurTech(インシュアテック)で急速に変わるとは思えない。

従って、InsurTech(インシュアテック)系のベンチャー企業に入って、ストック・オプションで儲けようという考えには慎重になった方がいい。

 

もっとも、保険会社からするとInsurTech(インシュアテック)系のベンチャー企業を買うのは資産規模的に小さな買い物なので、M&AによるEXITということで創業社長は大金を手にすることができるかも知れない。

ただし、進化の速度が遅いので、早期のEXITを考えるなら、銀行系、証券系、仮想通貨系のフィンテックビジネスを始めた方が手っ取り早いのではないだろうか?

 

反対に、変化の速度が遅い業界であるので、大手の保険会社はまだまだ君臨し続けるだろう。もちろん、今の就活生が定年を迎える40年近い先まで高給・安定が保証されることはないだろうが、当面は大丈夫なのではないだろうか。

最後に

今、保険会社は就活生の間でどれくらい人気なのか、また、入るのが難しいのかはよくわからない。

安定かつ高給の労働条件に惹かれて志望する学生が多いのだろう。

確かに、まだまだ大手保険会社は安泰なのだろうが、反対に、アップサイドの要素が想像できない。

人生長いので、大手保険会社から内定をもらった場合でも、遠い将来を踏まえて、何らかのバックアッププランを考えておきたい。