メルカリのフィンテック部門として注目されるメルペイ(メルペイコネクト)への転職と留意点

 

1. 業績や株価では苦労していそうなメルカリであるが、フィンテック部門として期待されるメルペイ(メルペイコネクト)では積極的に採用活動を展開中

米国事業が足を引っ張り、国内の新規事業もなかなか芽が出ず、上場後悩みがつきないメルカリであるが、期待のフィンテック部門であるメルペイ(メルペイコネクト)は、現在でも積極的な採用活動を展開しているようである。

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2. 転職を考える際に考えなければならない点は何か?

何と言ってもメルカリである。

知名度は高いし、スケールの大きい事業ができそうである。

それに、社員向けのメディアを 見ても、雰囲気が良く働き易そうな職場に見える。

 

さらに、フィンテックというこれから成長が期待される分野での経験を積むことができる。

やる気も能力も高いビジネスマンにとっては、将来のキャリアのためにも、是非メルペイで挑戦したいという人は少なくないだろう。

 

しかし、「メルカリ、フィンテックだから何とかなるだろう」といった緩い分析だけで転職を決意するのは、おすすめできない。

大事な転職カードの一枚を無駄にしてしまうのだから。

 

そこで、どういうことに留意すべきかについて検討したい。
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①メルペイが想定する外部環境について

メルペイや、LINE、楽天などが想定しているのは、日本のキャッシュレス決済が拡大し、自社の決済プラットフォームの上に、銀行、証券、保険、仮想通貨といった金融事業を乗っけて収益化しようというモデルだ。

したがって、日本のキャッシュレス社会が進展するのが前提となっているが、これについては悲観的な見方も多い。

そこで、メルペイがどれくらいのキャッシュレス決済の進展を想定しているのが気になるところである。

ここの拡大が、メルペイのビジネスモデルの前提となっているからである。

このあたりについては、面接の際に是非聞いてみたいものだ。

「なめらかな社会を創る」というコンセプト自体は耳障りがよく、メディアもポジティブにとらえがちであるが、ATMが浸透した現金中心社会の日本で、果たしてどれくらいキャッシュレス社会が浸透するのか、現実を見なければならない。

 

また、外部環境と言うと、Competitorが気になるところである。

具体的には、既に多くの金融子会社が収益を上げている楽天と、7000万ユーザーで金融事業に経営資源を積極投入することを公表しているLINEに勝てるかどうかという点である。

メルカリは知名度では両者に負けないが、金融ビジネスの実績やビジネス規模では劣っており、どのようにして勝てるのかについて、メルペイ社員に質問したいところだ。

②決済事業の後に展開する収益モデルについて

メルペイコネクトという専門の子会社を起ち上げて、メルペイの決済網の整備をしていこうということだが、決済自体は直接収益を産まない事業である。

したがって、その決済事業の上に乗っける個々の金融業務の、どういった分野でどの程度稼げるのかというのがポイントである。

楽天は既にカードや証券事業で稼いでいるが、LINEもメルペイも、このあたりは未知数る。

 

メルペイの決済網に乗っける金融ビジネスとしては、銀行、証券、保険、仮想通貨等を想定しているのだろうが、そのうち、具体的にどの事業で収益を上げることを考えているのか気になるところだ。

メルカリの山田社長とメルペイの青柳社長が上海を視察して大いに感銘を受けたそうなので、アメリカのOndeckとかKabbageのような小規模事業者向けのローン事業よりも、アリババの芝麻信用をイメージしているのだろうが、いくら位の貸出総額を想定しているのか興味があるところである。

メルカリコインというのは面白そうだし、C向けビジネスを得意とするので、仮想通貨交換業は期待できるが、その規模感とかは全く読めない。

証券業については、今更ネット証券をやっても面白くないし、ロボアドバイザーも業界トップのウエルスナビが運用資産1000億をようやく超えたスピード感なので、大きな収益は期待できない気がする。

このあたりの各論、決済プラットフォームに乗っける個別の金融事業の収益見込みについては、議論が進んでなさそうなので、面接時にはいろいろ突っ込みたいところだ。

③時間軸について

楽天、LINEと比べて、メルペイが厳しいのはこれである。

何と言っても赤字会社だし、規模感でも両者には敵わないので、持久戦になった場合には苦しい気がする。

日本のキャッシュレス化とその上の金融ビジネスについて、明るい未来が期待できたとしても、その実現に年数を要するとなれば、体力のない会社は不利である。

何故なら、決済事業構築までには利益が出ないだろうから、その間、資金を食いつぶしていくことになるからである。

この点、何年後を見据えた事業計画をしているのかについて、面接で是非突っ込みたいところだ。

 

3. 自分のスキルアップにつながるか?

上記は、メルペイ事業という会社レベルでの話であるが、仮にメルペイ事業が成功したとしても、その一員に過ぎない各自のキャリアの観点から成功と言えるかどうかはその人次第である。

 

もっとも、自分のスキルアップにつながるかの前に、自分がメルペイに貢献できないと話にならないのであるが、その点は置いておこう。

 

今だと、メルカリは聞こえもいいし、優秀な社員も多いので、表面的にはキャリアにとってプラスとなりそうに見えるが、冷静に考えてみると、不安な点もある。

 

①既に大規模な組織なのでベンチャー企業としてのキャリアにはならないのでは?

ベンチャー企業で働くことによって得られるスキルは、

〇新規事業創造能力を習得すること

〇幅広い業務を独りでこなせるようになること(守備範囲の拡がり)

である。

しかし、メルペイの場合は大規模組織であり、果たしてこのようなベンチャー企業ならではのスキルが習得できるのかは不透明である。

反対に、大企業からでも入って行きやすいという見方もできるが。

 

まあ、メルカリは風通しが良さそうな自由なカルチャーであるようなので、自ら積極的に何でも手掛けようとするタイプの人でないと、成長できないかも知れないので、適性等よく考えてみるべきだ。

②給与水準について

給与水準というのは経済的な満足度だけでなく、その人の価値を示す転職時における重要な指標となる。タイトル、肩書といったものは会社や業界によって異なるので、それほど気にする必要は無いが、年収と言うのは極めて客観的でわかりやすい指標なので、それがその人の実力を示す指標として捉えられてしまう。

 

実際、ベンチャー企業の場合でも、前職の年収を基準として決める場合が少なくないので、年収と言うのはその人の市場価値に影響する重要な指標なのだ。

この点、新規事業であるメルペイの場合には、当面利益が見込めそうもないので、ボーナスとか、昇給は期待できないかもしれない。

となると、ストック・オプションが重要となるので、入社時点においてはキッチリと詰めておきたいところだ。

まとめ

メルペイの理想とする「なめらかな社会」は耳障りがいいし、フィンテックは何となく将来性がありそうだが、よくよく考えると、そんなに簡単なものではない。

収益性を考えるとボーナスにも不安があり、ストック・オプションが気になるところだ。

こういうことばかり言うと、「来なくて結構」と言われそうであるが、ベンチャーへの転職は未知数が多いので、慎重に検討しなければならない。