就職偏差値最高峰の外銀と外資コンサルだが、両者の間での転職は少ない。そこで、その理由とキャリアプランを考える。
- 1. 最難関の外銀と外資コンサル
- 2. 全く異なる外銀と外資コンサル
- 3. いろいろな意味で交流の無い両者
- 4. 外銀⇒外資コンサルへの転職(キャリアチェンジについて)
- 5. 外資コンサル⇒外銀への転職
- 6. 数少ない成功パターン ~外資コンサル⇒外銀のファイナンス部門~
1. 最難関の外銀と外資コンサル
就活生にとって、最高峰は外銀と外資コンサルである。
そして、両者の下位につけているのが、総合商社、大手代理店、キー局あたりであろうか?
とにかく、新卒で(中途でもそうだが)外銀、外資コンサルに入るのは難しい。
外銀(特に欧州系証券会社)はリーマンショック以降、待遇・ビジネスが下落基調にあるにも関わらず、トップ国内系金融機関と比べても、圧倒的に高い年収と募集人数の少なさから依然として入社は困難のようである。
他方、リーマンショック以降、人気が高まってきているのが外資コンサルである。
その理由としては、外銀が以前より稼げなくなって魅力が落ちた分、その志望者を取り込んでいるのと、ネットベンチャーなどへの将来の転職のし易さが魅力なのではないだろうか?
なお、ここでの外資コンサルの定義は、最狭義のもの、マッキンゼー、BCG、ベイン、ATカーニー、ローランドベルガー、アーサー・D・リトルまでの外資系かつ戦略系のものに限定したい(要するに、総合系といわれるPwC、デロイト、KPMG、EYは含まない。)
2. 全く異なる外銀と外資コンサル
社員がハイスペックである点を除いて、この両者は結構対照的である。
まず、外銀が重視するのは「結果」である。というか、結果が全てであり、プロセスがどうであろうと、結果でしか判断されない。
他方、外資コンサルが重視するのは「プロセス」である。
例えば、今となってはそこそこ就活生にも知られている「フェルミ推定」であるが、両者が求める回答は全く異なる。
「日本に信号機の数はいくつあるか?」という問いに対して、外銀に求めらるものは、早くて信頼できる情報を持ってくることである。警察庁のHPから探すのか、官僚の友達に聞くのか、何でもいいがとにかく信頼できる情報を早く持ってくることが重要なのだ。自分の頭の中で、ロジカルに推定したかどうかなどはどうでも良い。
この点が外資コンサルとの違いである。
第2に、両者のビジネスの規制の度合いが対照的である。
外銀は金融機関であるため、典型的な規制業種である。
監督官庁には逆らえず、コンプライアンスとリスク管理が厳しい。
そして、リーマンショック以降、その厳しさは高まるばかりだ。
従って、許された範囲の業務しか行うことができず、自由な発想で新しいビジネスを興そうというカルチャーは無い。
他方、外資コンサルは規制業種ではない上、非上場企業である。
このため、監督官庁とうるさい規制は無い上、ガバナンスとか、株価というプレッシャーすらない。
このため、自由な発想とか新規事業という観点において、両者は対照的と言える。
さすがに学生でも、新規事業をやりたいという理由で外銀に行く者はいないだろう。
第3に、両者の社員の間ではお金、年収に対する考え方、価値観が大きく異なる。
外銀の場合は、「金が全て」的な価値観になり易く、そうでないとカネにがめつい人達との競争に到底ついていけない。
従って、同業他社、或いは他業界の他者との判断基準が「年収」ということになる。
自分と比べて「年収」が高いか低いか、転職対象企業の「年収」がどの程度かということが関心事項となる。
他方、外資コンサルの場合は必ずそうでもなく、「年収」も大事かも知れないが、面白いかどうかといった点が関心事項となる。
3. いろいろな意味で交流の無い両者
このように両者は、考え方とか価値観が大きく異なるため、あまり相性が良くなさそうである。
(まあ、両者ともにプライドは高いであろうから、お互いに自分の方がエライと思っているのかも知れないが…)
外銀のMDと外資コンサルのパートナーが仲良く交流していたり、一緒に何かイベントやったりするのは、まず見ないであろう。
プライベートでも、両者が一緒に何かを楽しんだりということはなさそうである。
(そもそも、年収格差が結構あるので、住まい、クルマなどの物量面では外銀の方が金満ぶりを発揮できるので、このあたりからしてギクシャクしがちだろうが…)
4. 外銀⇒外資コンサルへの転職(キャリアチェンジについて)
いかにも相性が悪そうで、求められるスキルも異なる両者である。
従って、両者間での転職は多くは無いのであるが、外銀から外資コンサルにキャリアチェンジを図る者も無いではない。
但し、それらのケースの大半は、入社2~3年以内の若手が直接、或いは、MBA留学を経て、ジュニアレベルで外資コンサルに転職するケースである。
外銀の色があんまりついていないから、転職が可能という見方ができる。
そもそも、外銀の場合は入社2~3年で余裕で1000万円を超える。
年収レベルでいうと、外資コンサルのコンサルタントあたりに相当する年収なので、年収ダウンとなる外資コンサルに行くのが抵抗があるので、行くならまだ格差が少ない若手の間ということになる。
また、外銀から外資コンサルに行っても、仕事は全然楽じゃないし。
それに社内の評価が高ければ、そのまま外銀でのキャリアを深める方が自然であろうから、外銀から他業界を目指すというのは、ドロップアウト組とか激務に疲れた系の若手である。
外銀に疲れた若手を採用するほど、外資コンサルは甘くないであろうから、そういう意味でも外銀⇒外資コンサルというキャリアは、主流ではない。
5. 外資コンサル⇒外銀への転職
このパターンも多くないというか、あまり聞いたことがない。
あるとすれば、外銀⇒外資コンサルのケースと同様、入社2~3年目の若手が直接、或いは、MBAを経て行くパターンである。
外資コンサルの若手からすると、年収的には大幅なアップも見込めるので転職するインセンティブはある。
しかし、規制業種である外銀からすると、決まった職種を実行できる人材が欲しいので、外資コンサルに対するニーズは無い。
それならば、国内系金融機関でトップクラスを採用した方が効率的である。
また、外資コンサルが得意とする、「経営企画」「事業開発」系の部署は外銀には無い。あっとたとしても非主流だし、人数も少ない。
このため、外資コンサル⇒外銀というキャリアパスも主流ではない。
6. 数少ない成功パターン ~外資コンサル⇒外銀のファイナンス部門~
実際、私が遭遇したケースは、外資コンサル出身者が外銀のファイナンス部門へ転身し、本部長(MD)クラスあたりに昇進したケースである。
これは、若手の転職ではなく、東大⇒米系戦略系ファーム出身の30代後半の人が、外銀のファイナンス(経理部)にVPレベルで転職して、その後、ワンランク昇進してMDクラスになったというものである。
年収だと、転職時1500~2000万位だったのが年収3000万円以上になった。
また、社内でも重宝され、お互いにWin-Winとなるような事例である。
着眼点は、外銀の「バックオフィス」というところである。
外銀の花形と言うと、多くの人が想像するようなIBD、トレーダーである。
これらの職種の場合には、今でもVP以上になると年収5000万円以上の可能性はあるし、MDになると年収1億円以上も狙える(かなり厳しいが…)。
他方、バックオフィスであれば、せいぜい3000万円位で、最上位でも5000万円位なので、フロント部門に見劣りしてしまう。
(外資バックオフィスについては、こちらの過去記事をご参照下さい。)
他方、そこまで優秀な人は多くないので、外資コンサルで鍛えられた者が行くと、その人の方が優秀であることが多い。
フロントオフィスの業務であれば、専門性の観点から、未経験のコンサル出身者には厳しいが、人事、経理といったバックオフィスであれば業種共通のところも少なくないので、参入して行けることは可能だ。
バックオフィスにも、人事、経理、コンプライアンスとあるが、その中では経理がもっともおすすめである。
コンプライアンスは業界の知識が無いと厳しいので、これは外れる。
人事も可能であるが、わざわざ外資コンサル出身者が手伝うほどの業務内容ではないので、そこまでニーズは高くない。
他方、経理については、それなりに忙しいし、グローバルでの会計知識も要求されるし、緻密な計算力や正確性が要求される。
この点、厳しい環境で揉まれた外資コンサル出身者であれば、期待に応えられ、上司から重宝される余地が十分にある。
また、資料作りの機会も多いので、外資コンサル出身者のプレゼン能力や資料作成能力は大いに役立つスキルである。
以上のような事実を踏まえると、外資コンサルから外銀の経理を狙うというのはアリだと思った。
ファイナンスであれば、常に求人はあるはずだ。
転職の方法としては、王道であるが、なるべく多くの転職エージェントに登録することである。
なお、転職エージェントとしては、以下のようなものがある。
〇ロバート・ウォルターズ
〇モーガン・マッキンリー
〇マイケル・ペイジ
〇エンワールド
バックオフィスは比較的平均年齢が高いとはいえ、40歳を過ぎると、基本的にヘッドクラスでないと難しい場合もあるので、転職を考えるのであれば何とか30代の間に活動したいところである。