ベンチャー企業の年収でBMW M3を買えるようになれるか?
ベンチャー経営者がフェラーリを買えばその企業はもうお終いとか言われるが、BMW M3はどうか?
昔から、ベンチャー経営者は成功してもフェラーリを買っちゃダメだよと言われてきた。まあ、フェラーリというのはある種の成功の象徴だから、ベンチャー経営者が買ってしまうとハングリー精神とか、ベンチャースピリットといったものが失われてしまうわけだ。
その点、BMW M3だとブランド的にも性能的にも価格的にも、まだまだ上があるから、いいのかも知れない。
同じ成功した人でも、美容外科医とか外資系投資銀行とかだと、フェラーリ買っても構わない
他方、美容外科医とか外資系投資銀行で稼ぐことができればフェラーリを買うなとか言われない。何故か?それは、これらの職業は過度な成長を期待されない、横ばいでも許されるので、ベンチャースピリットは不要だからだろう。
ベンチャー経営者だけ、常に成長が求められるのは不公平?
厳密に考えると、ベンチャー経営者だって、成功した後も引き続き成長し続けなければダメとは限らない。非上場でベンチャー経営者が株の大半を持っているのであれば、その後は横ばいであっても、株主から文句を言われることはない。
他方、IPOしてしまった場合には、そういうわけには行かない。株主は株価上昇を期待しているわけなので、ベンチャー経営者に頑張ってもらわなければ困るのだ。
フェラーリを買って優雅な生活をして、ハングリー精神を失われては、株主は困るのだ。
じゃあ、引退すればいいじゃん?、という考えもあるが…
そういうわけには行かない。
もちろん法律上の義務ではなく、道義的なものだが、ベンチャー企業のIPOの場合、創業経営者の手腕に期待して株価が形成されていることが多い。従って、IPO直後に経営者が引退してしまうと、株価が暴落して、株主はおお怒りされてしまう。
特に、日本のマザーズ市場なんて赤字の段階なのに、結構高い株価がつくので、すぐに辞めると途中で投げ出した感が非常に強い。
IPO後にプレッシャーを掛けるのは株主だけではない
IPO後も引き続き成長させないければならないのは、株主だけでなく、従業員のためにも必要である。確かに、一部の社員はストック・オプションで「後は野となれ」かも知れないが、大多数の他の社員はそういうわけには行かない。
他の大手企業と比べると、薄給激務で、一般社員が回収できるのはまだまだ先だ。
そういうわけで、IPOをしてしまうと、従業員のためにも経営者は辞めるわけにもいかない。
とはいえ、フェラーリを買う買わないに関わらず、IPOゴールのベンチャー企業は多いよね。
1999年の東証マザーズ創設以降、多くのベンチャー企業が上場したけど、その後も順調に成長している企業は本当に少ないよね。
今でも時価総額1000億円ある企業は20社位しか無いんじゃないかな?
反対に1000億を上回っているのは、ヤフー、楽天、サイバーエージェント、GMOグループ、DeNA、グリー、Mixiとリーマンショックよりも前に上場した企業の存在感が高い。
ベンチャー企業が成長できないのは、そもそもマザーズの上場要件が緩いからもともと実力不足だったのかも知れないし、企業の事業分野自体が陳腐化してしまったとかで、経営者が頑張ってもどうしようもなかったのかも知れない。
でも、一番の問題は待遇が悪すぎていい人材を確保できないからかも知れないね。
経営者はフェラーリは良くないから、BMW M3にしたら?、といった余裕のある話ができるけど、つらいのは一般社員だね。BMW M3どころか車すれ持てないレベルの人が多いのではないかな。
IPOしちゃうとストック・オプションの妙味が薄れるから、いい人材を確保するのは難しくなる。目新しさもなくなっているので、どうせ待遇の悪い上場ベンチャーに行くくらいなら、これからIPOするかも知れないベンチャーに行った方がいいとなるでしょ。
そういうことを考えると、まだまだ日本のベンチャーは大きく育ちそうにないのだろう。
学生が今でも、メガバンクとか損保に行きたがるのは、ベンチャーはハイリスク・ローリターンだから割が合わないと思っているのかも知れない。
学生は、結構冷静にそのあたりを見ているのかも知れないね。