就活で外銀を志望する学生は、30代、更には40代での職業(転職先)を意識しているか?

リーマンショック以降徐々に下降気味だが、今でも超難関の外資系金融

以前よりは下がったとはいえ、給与水準が今でも頭一つ出ている外資系金融を志望するトップ学生は多い。

なお、ここでの「外銀」「外資系金融」は外資系証券会社(投資銀行)を前提にしよう。何故なら、外資系銀行とか外資系運用会社の新卒での採用数は、外資系証券会社と比べて少ないからである。

人気が下がった原因の一つは、リストラリスクであるが…

リーマンショック後のボルカールールによって、外資系証券会社の収益源であったトレーディング業務が著しく制限されるようになった。このため、グローバルで、外資系証券会社の収益性は低下し、雇用状況も継続的に悪化している。

賢い学生はこのあたりの点を十分認識しているわけであるから、同じ外資系でもマッキンゼーやBCGなどの外コンを目指したり、或いは、コンサバになって総合商社に目を向けるようになってきたのである。

外資系証券のリスク面を認識するにあたって、クビになった人はどこに行くのだろうか?

プロ野球でもIT起業家でも、成功した人達ばかりにスポットライトが集中しがちであり、失敗した人達がその後どうなるかはあまり目立たない。

(もっとも、戦力外通告をされたプロ野球選手のテレビ番組は注目されてきたようだが)

確かに、ネット検索をかけてもそれ程多くの情報が出てこない。

その中で、このNewsPicksでの山崎元氏のコメントは参考になるが、2年以上前のものだし、山崎元さんが外資系にいらっしゃたのはリーマンショック前なので、この点を少しアップデートしてみたい。
newspicks.com

欧州系投資銀行の疲弊が厳しく、A⇒Bの転職の途は狭まっている。

山崎元氏の回答によると、外資系証券をリストラされた場合、一番多いパターンは他の外資系証券に転職することという。これは今でもその通りだと思う。

しかし、環境が変わってきているのは欧州系投資銀行、例えば、UBS、ドイツ銀行グループ、クレディスイス・グループ、バークレイズ、パリバあたりの、山崎元氏の言うBグループ(トップの米系証券会社よりワンランク落ちる欧州系証券会社)が疲弊してきているのである。リーマンショック前に買収・強化した投資銀行部門の収益性悪化が止まらず継続的にリストラをしている印象で、東京の人数もじわじわ減ってきている印象だ。

従って、ゴールドマンサックスとかモルガン・スタンレーといった一流米系証券だとコケても格下の欧州系に拾ってもらえるという認識はやや楽観的になってきている。

更に、山崎元氏がいうCグループ(マイナー外資系証券会社)については、もとも小規模でヘッドカウントは少ない上、マッコーリーとかドレスナーとか閉鎖したところもあるので、なおさら、当てにするのはリスキーである。

30代を過ぎれば、国内系金融機関への途も徐々に厳しくなる

外資系証券会社をクビになった場合に、一番堅いのはこの途だと思う。

高学歴で外資系証券だと、コケても国内系なら行く先は何とかなりそうである。

もっとも注意しないといけないのは「年齢」である。20代であれば問題ないが、30歳を過ぎるに連れて転職先が減っていくことに留意すべきである。

国内系の場合、相場がいいと傘下のリテール部門とかアセットマネジメント部門とかの収益が好転するものの、証券会社の法人向けビジネスの収益性が高いわけでは無い。

昔のように気前よく、バンバン雇ってくれる時代ではない。

さらに、40代になると国内系も基本難しいと考えるべきである。国内系も証券会社は比較的若くても昇進できるカルチャーであり、40代だと生え抜きが部長になってきている。そういう環境下、いきなり部長で転職する余地はほとんどないし、ましてや生え抜きの年下の部長に部下として雇ってもらえる余地はないだろう。

野村證券の旧リーマンブラザーズの一部買収の時もそうであるが、基本的に生え抜きの国内系証券会社の人間は外資系証券の人間は嫌いである。日本的な妬みによるところも多いのだが、自分たちよりも遥かに多くの年収を稼いで来たものが、失敗したからといって調子よく一緒に働かせてくれといっても受け入れられないのである。

意外にあるようでないベンチャー企業CFOポジション

それから、意外にありそうでないのが、ベンチャー企業CFOポジションである。

まず、コンサルと違って潰しが効かないのが外資系証券の弱みである。経営企画や事業開発のポジションは競争力が無いし、Webマーケティングとかのネットスキルが要求されるポジションは尚更ダメである。

残るはCFOポジションだが、これ自体、あまり多くない。Wantedlyで検索をかけてみるとわかるが、エンジニア、事業開発、人事、広告・宣伝と比べて、かなり少ない。

しかも、経理だったり総務だったらい、どちらかというとバックオフィスの事務全般の仕事ができる人のニーズが高く、高度なファイナンス知識が要求されるポジションは尚更少ない。もっとも、ネット経営者がファイナンスに詳しくないケースが多いので、そのあたりの認識が不十分な場合もある。

それから、IPO準備のようなポジションだと会計士とかとバッティングして、こちらも広い門ではない。

このNewsPicksの質問者は日本の公認会計士資格保有者でかつ英語もできるという稀有なケースであるので、ツブシは聞きやすいが、公認会計士でもない外資系証券の者は他業界への転身はそれほど容易ではない。

結局どうなるのか?

国内系金融機関も、ベンチャー企業もランクを落とせば可能性は拡がるので、結局、うまく行かない場合には、40歳、ひどい場合には30代で不本意な国内系金融機関や事業会社で薄給で働くことになってしまう。

そのため、現役の時からアパート経営をやったりする人もいる。

だから、高給に浮かれず、コツコツと蓄財すればいざという時の保険になる。

或いは、20代のうちに「お金はそこそこあれば、リスクが無い方がいい」と気づけば、銀行や商社などの勝ち組に転身すればいいのだ。

もちろん、コンサルに転身するという手もある。外コンはしんどいが、三菱総研、野村総研ニッセイ基礎研究所といった国内系シンクタンク系も悪くないだろう。

 

まあ、外銀に採用されるような優秀な学生は、新卒段階だとどこにでも行けるのであるから、十分リスクシナリオを踏まえた上で、最終的に外銀を選択すべきかどうか決断するのがいいのだろう。