外資系企業への転職の場合、年収について留意すべき5つのポイント

外資系企業への転職の場合、一般的に2割の年収アップを目指せというが…

 

外資系企業から外資系の同業他社への転職の場合、2割程度の年収アップが目安とも言われる。しかし、トータルでの年収アップを考えるのは実は結構難しい。

何故なら、退職金と年金、ボーナス、ベア(ベースアップ)、昇格による年収アップ率、上司による裁量等、考慮すべきファクターが複数あるからだ。

1. まず、退職金と年金制度を必ずオファー時点で確認せよ。

①そもそも、退職金と年金はオファーレターに具体的に書かれていない

自分も失敗したことがあるのだが、黙っていたら教えてもらえないのが退職金と年金制度だ。オファー時にはオファーレターと言われる2-3頁の書面をもらえるのだが、退職金と年金制度については「社内規程に従う」としか書かれていないのだ。

もちろん、転職エージェント或いは人事の人に聞けば必ず教えてもらえる。

でも、自分から聞かないと丁寧に教えてもらえないことが大半なので、入社してから気づいて公開するケースもあるので要注意だ。

外資系金融機関の場合には、退職金は基本給の1割が目安となる。例えば、課長~部長クラスのVice Presidentの場合、1500~2000万円位が相場だが、その場合対象金は150万~200万となる。

よって、基本給が1500万円の人の場合、3年在職すると150×3=450万、5年在職すると、150×5=750万といった具合だ。

②退職金には条件がいろいろ付いているから要注意

これだけだと難しくないのだが、やっかいなのは、退職金にはいろいろな条件がついている場合も少なくない。

〇在職期間が1年未満だと支給されない。

〇在職期間が3年未満だと支給金額が半額になる。

〇1年あたりの支給上限額がついている。

これらについては、きっちりと人事の人に尋ねるのが良いだろう。

退職金については細かく聞いても大事な点なので、がめつい奴だと思われないので気にせずに聞くことが大事だ。

③退職金は税率が極めて低い(1割未満が多い)から重要なのである

何故退職金が大事かというと、税率が圧倒的に低いからだ。住民税と所得税と合わせて1割以内に収まることが多い。税率が高い外資系金融機関の場合には特に重要なファクターとなる。

④年金制度も地味ながら大事である

退職金と比べると金額は低いが、年金制度も重要だ。

外資系企業の場合、国内系企業のような企業年金制度がないところがほとんだ。

でも、確定拠出年金(401K)を導入している外資系企業は少なくない。

これがあると、毎月5万円×12=60万円が非課税で積み立てられる。したがって、5年在職すると、60万円×5=300万円となり、運用がそれなりだとさらに増える。

これを受け取ることができるのは60歳の時点だが、確定拠出金制度がある会社と無い会社とでは、ある会社の方がいいので、要チェックだ。

退職金と合わせて人事の人に確認すればよい。

2. (セコイ話ではあるが)ベア(ベースアップ)がある会社と無い会社がある

外資系企業の場合、いわゆるベアが無い会社が多く、基本給1500万円で入社した場合には昇給でもない限り、何年経っても1500万円のままだ。

しかし、中には少ないながらベアの恩恵に被ることができる会社もある。ベアというのはインフレ調整分なので、日本のようなデフレ国の場合にはゼロでも仕方が無いのであるが、例えば、インドとかのインフレ国があると、日本もご相伴で1-2%のベアがある場合もある。

基本給1500万円のケースだと、毎年20-30万円くらいずつ増えれば5年後には100万以上増えていたりするのでこれがあるとありがたい。

こちらも、人事の担当者に確認すると教えてもらえる。

3. 読みようなが無いのはボーナス。これはどうしようもない。

外資系企業、特に外資系金融の場合は、ボーナスが年収において重要な位置を占める。リーマンショック後は大幅にボーナスの年収に占める比率が下げられたが、それでもフロント部門(営業、トレーディング、運用など)だと基本給よりボーナスの方が多いこともある。バックオフィス(経理、人事、コンプライアンス、IT、オペレーション等)の場合でも基本給の1割~5割くらいをボーナスが占める。

転職時においては基本給は具体的に〇〇円と提示されるが、ボーナスは書面で記載されない。もちろん、ギャランティ(一定の金額を保証)したり目標金額を記載される場合もあるが、それは1年限りである。翌年以降のボーナスの金額は保証されないのだ。

もちろん、相場というものがあって、「現状と同じ経済状況であれば」この職種とタイトルだと基本給の〇〇%というのはある。しかし、経済環境が今と同じかどうかはわからないし、業績によって大きく変動するのは避けられない。

また、自分の直属の上司による裁量幅の日本より大きいので、事前に予想することはますます困難だ。

このため、基本給、退職金・年金、ベアあたりまでは事前に確認できるが、金額的に大きいボーナスの幅が大きいので、事前にトータルの年収を予測することは難しいのだ。

4. 昇格しても給料が上がらない会社がある。

日本企業の場合、課長代理から課長、課長から副部長、副部長から部長、部長から執行役員と昇格すれば、必ず昇給するだろう。

しかし、外資系企業の場合には、昇格しても給料(基本給)が1円も上がらない企業もあるのだ。例えば、Vice PresidentからManaging Directorへの昇格というのは課長から部長への昇格くらいインパクトがあるのだが、基本給は1円も上がらなかったというケースは、自分は何度も見てきた。

昇格と給料が連動するかについては保証の限りでないので、事前に人事に確認するのが難しいので、転職エージェントとか知人から聞くしかない。もちろん、それは参考にしかならない。

5. 最後に一番重要なのが、上司の裁量が大きいこと

最後に、一番重要な項目がこれ。外資系の場合上司の裁量が大きく、管理職クラスだと500万円位だと何とでもなるケースは少なくない。

それは、基本給の上昇とかボーナスの上昇とか様々である。

会社から評価されている社員が「転職します」と言った場合には、引き留めで500万位上乗せしたカウンターオファーを提示されることは珍しくないのだ。

ということは、入社時に基本給の100万円~200万円増額するのは大変だが、いったん入社してしまえば、あとはボーナスとか上司の評価によってトータルの年収は大きく変動するということだ。

 

以上より、外資系、特に外資系金融機関の場合、ボーナスとか上司の裁量が非常に大きいので、トータルの年収が本当に今より増えるのかどうかはわからない。

したがって、目先の基本給に掛かる条件に拘泥することなく、やりがい、会社の成長性、働きやすさ等広い視点で評価しないと、転職は失敗してしまうのだ。