ロボアドバイザーは次の一手としてファンドビジネスを手掛けるべきか。

既存のロボアドバイザー事業だけでは利益の急拡大は望めない?

ウェルスナビ社が預かり資産額1000億円を突破し、米国と比べてまだまだ小規模であるが少しずつ前進してきている。IPO等を機に、現在の預かり資産増加のスピードが急増し、預かり資産が1兆円、2兆円と伸びれば問題は無い。

ロボアドバイザーはいわゆるネット証券なので、預かり資産の拡大に応じて店舗や営業社員を増員する必要が無いので、預かり資産が伸びると利益率も急増するという魅力がある。

しかし、手数料の低下を念頭に置かざるを得ない。

ところが、預かり資産が順調に伸びると、新規参入が増えたり、競争が激化することによって手数料削減競争が起こってしまうことを想定せざるを得ない。ネット証券の時もそうであった。ウェルスナビ社もTHEOも、現在の手数料率は1%という水準なので、米国大手のベターメント社やウェルスフロント社の水準を参考にすると、将来手数料率が半減することも想定する必要があるかも知れない。

そこで、新規事業としてファンドビジネスを手掛けるべきかが検討課題となる。

ロボアドバイザーというのは、個人投資家を対象とした一任運用(ラップ口座)ビジネスであり、固定報酬ビジネスである。

そこで、ビジネス拡大策としては、機関投資家を対象にAIが運用するファンドを提供し、固定報酬ではなく成功報酬を主眼とするビジネスアイデアが考えられる。

(なお、テクニカルな話だが、ロボアドバイザーは実質的には運用会社なのだがラップ口座は証券会社のライセンス(第一種金融商品取引業)がメインとなっており、ファンドビジネスを手掛ける場合には別途投資運用子会社を起ち上げる必要がある。)

比較的小規模なファンドでも魅力的な水準の成功報酬が得られる可能性

機関投資家向けのファンドビジネスを実行した場合の魅力は、成功報酬だ。

例えば、将来預かり資産が1兆円に増えるも、手数料率が低下し0.5%になったとすると、ロボアドバイザー事業から得られる収益は50億円である。

他方、機関投資家向けの成功報酬(絶対パフォーマンスの2割)メインのファンドビジネスを手掛け、100億円のファンドができたとしよう。そして、運用に成功し50%の利益が出た場合、10億円の収益となるのだ。

預かり資産1兆円から50億円と比べると、100億円のファンドから10億円の収益を上げられるというのは非常に魅力的だ。

(もちろん、AI運用でそのようなパフォーマンスが達成させるのは容易なことではないかも知れないが。)

ロボアドバイザーのセールスポイントであるAI運用を如何に磨けるかがカギに

ロボアドバイザーの魅力はAIであるが、本当にAIが人間よりもいいパフォーマンスを達成できるのかはわからない。ロボアドバイザーがAIの運用能力を真に高めることができれば、より多様な収益が期待でき、魅力のあるビジネスとなり得るだろう。