とりあえず1億円を貯めて、自由になろうという考えの落とし穴

資産運用関係のブロガーの中に、セミリタイアするためとか、会社から解放されるために「1億円」を貯めることを目標に、貯蓄・運用をしている人たちが散見される。

しかし、1憶円でもセミリタイアできるかは疑問

通常の収入で1億円を貯めることは至難の業だ。毎月12万円を積立にまわして、5%で運用しても、30年以上かかってしまう。

反対に、1億円を10年以内に達成するために月々いくら必要かを逆算すると、何と64万円強が必要となってしまう。それだけの金額を月々投資に回せるためには、最低でも年収1500万は必要となる。

まあ、それでも何とかして1億円を達成しても、それでセミリタイアを実現できるかは疑問があるのだ。

現実的な想定利回りは3~5%

グローバルな低金利下の環境において、資産からコンスタントに得られる金融収益はせいぜい3~5%であろう。セミリタイアの資金に活用するということは、ある程度中長期的な運用成果を期待しているので、これぐらいに見積もるしかない。

となると、中を取って4%の運用収益を想定した場合、年間の収益は400万円で税金は20%の源泉徴収で完了するので、手取り320万円。一月当たりの手取り額は約27万円弱だ。全然ぜいたくできる金額ではないが、1億円を貯めることができる人は質素・倹約な生活ができるであろうし、「セミ」リタイアであって、完全に収入ゼロとなることを想定しないのであれば、まあ、何とかならなくはない。

資産から取り崩しの生活であれば、複利効果を享受できない。

それから、考慮しなければならないのは1億円を貯めたとしても、そこから得られる金融収益をセミリタイアのために使用する想定なので、今まで享受していた複利効果が得られなくなってしまうことだ。生活費のために流動性を加味しなければならないとすると、通常期待リターンは低下してしまう。(1億円を貯めるまでの運用収益と、1億円を達成してから取り崩すことを想定する場合とでは、後者の方が運用に制約が生じるため期待リターンは下げざるを得ない)

要するに、当然であるが、1億円が生み出す金融収益を生活費に回してしまうと、元手の1億円が膨らむことが期待できないし、途中リーマンショックとまではいかなくても大きな相場下降局面があれば1億円を割り込むこともあり得るのだ。

1億円を貯めても、そこからも人生は続く…

というわけで、せっかく1億円を貯めても万々歳にはほど遠い。

まだまだ、稼ぎ続けなければならないのだ。1億円を貯めることができる人であれば、計画性、行動力、倹約力、金融リテラシーと多くの能力を持っている。

1億円を達成したならば、心理的にも余裕がでるのだろうから、好きでない仕事位はやめても差し支えないだろう。そして、セミリタイアではなく、新しいビジネスに挑戦したほうが有意義ではないだろうか。