楽天の好調なフィンテック事業の課題について考えてみた
株価は低迷していて厳しい中、フィンテック事業は好調
平成30年8月24日現在、楽天の株価は1000円を下回っており、いろいろ厳しい状況にある。反面、同月に行われた四半期決算において、フィンテック事業は好調であり前年同期と比べて利益は30%もプラスとなっている。
「銀行は、もう要らない」特集をやっているNewsPicksのコメントを見ても、日本の金融ディスラプター候補の中で、圧倒的に優位な位置にあるのが楽天という論調もある。
楽天の好調フィンテック事業の内容
楽天のフィンテック事業の強みとして、以下のような点が挙げられている。
〇フィンテック事業全体の全事業に占める割合が高い。よって、経営の強いコミット
メントが想定される。
〇フィンテック事業全体が大会成長率を示している。
〇カード、銀行、証券、生保、損保と、多岐にわたって金融事業を展開している。
〇楽天スマートペイで、決済分野において勝ち組である。
確かに、これらは上の決算発表の数字からもうかがえ事実であろう。
銀行と証券は各業界においては存在感が乏しい
確かにカードは日本のカード会社の中でもトップクラスの存在感はある。しかし、それ以外の業態について個別にみると、競争力は高くない。
例えば、銀行も証券も、それぞれ利益水準は200-300億円位と見込まれるが、メガバンクや大手証券と比べるとビジネスの規模感、競争力において遥かに及ばない。
特に証券事業の拡大・強化が必要と思われるが…
銀行事業については、スマートペイが有望だし、将来的に顧客データを使って融資事業を拡大するなど事業を拡大させていく期待感はある。
しかし、問題は証券事業で、こちらはいわゆるネット証券のみで最近の好調な株式市況に支えられているとは言え、利益の水準は2年前から横ばいである。だからといって、大手証券のようなトレーディング業務、投資銀行業務を今から立ち上げることは経営資源的に厳しく、成長のためのビジネスの種が見えない。
また、楽天は傘下に運用会社を持っていない。運用会社は少ない資本金で高い利益率も見込める事業である。また、AIの技術を運用業に振り向けることも期待できる。このため、運用ビジネスを起ち上げていっても面白いのではないだろうか?
保険事業はまだまだこれから
楽天は生命保険事業も損害保険事業も有しているが、利益的にはほとんど貢献していない。生命保険事業は他の事業との相乗効果を利用すればまだまだこれから拡大する余地はあるだろう。そのため、ここは事業拡大に向けた施策が望まれるところだ。
仮想通貨ビジネスはどうなったのだろうか
楽天のECや決済業務に関連して、仮想通貨ビジネスは大変親和性があり面白いと思われる。今年の3月ころに「楽天コイン」の話題で一時盛り上がっていたが、その後どうなっているのかわからない。ICOなどを含めた仮想通貨ビジネスのインフラ整備の状況を様子見しているのかも知れないが、とりあえず仮想通貨交換業の登録はしておくべきでないか。仮想通貨交換業はオンライン金融ビジネスなので、楽天証券で培ったノウハウやECとの関連で単独でも結構な収益が期待できると思われる。
カード事業での収益性、成長性は素晴らしいが、他の銀行、証券、運用、保険、仮想通貨と、他の分野ではまだまだ課題が多く、やるべきことは沢山ある。
他方、携帯電話事業で6000億円?規模の投資をしないといけないとなると、なかなかフィンテックにまでも手が回らないのかも知れない。
確かに、NewsPicksで取り上げられた金融ディスラプター5社の中では圧倒的に期待できるポジションにあるので、事業の強化・拡大に向けて頑張ってもらいたいところだ。