野村證券とLINEがLINE証券で提携することが果たして重要か検証してみた

今NewsPicksが「銀行は、もう要らない」という企画をやっていて、関連ニュースをたどっていくと、こんな記事が見つかった。

newspicks.com

この記事、今年の3月のものなのであるが、NewsPicksとしてはこれは大ニュースとしてとらえたいようだ。では、これが果たして重要なニュースなのか検証してみたい。

LINE7500万ユーザー⇒野村とLINEの提携⇒LINEのユーザーが野村に流入

野村證券の顧客は高齢者がメインであり、金額ベースだと半分以上の顧客は60歳以上だ。そして、メイン顧客はどんどん高齢化して行く一方であるが、若者の顧客はとりこめてない。だから、若者に強く多くのユーザーを持っているLINEと組めばそこから多くの若者を野村證券の顧客として取り込めると期待できるのではないか?

ざっと、こんなロジックで何となく肯定できそうな気もするが、ちょっと考えてみると無理がある。「LINEには沢山の若者ユーザーがいる⇒LINEが証券業を始めた」から、「LINEの若者ユーザーがLINEで証券取引を始める」という流れに無理があるのだ。

別にLINEの若者ユーザーはコミュニケーションやアプリのためにLINEをやっているだけで、別に証券取引をやりたくてやっているわけではないからだ。それに、LINEが証券業を始めたからといって、突然、若者に証券取引ニーズが発生するわけではないのだ。

LINE証券は「運用会社」ではない

これも良く誤解されているのだが、証券会社は基本的に資産運用を行う会社ではない。資産運用を行うのは、〇〇投資顧問とか〇〇アセット・マネジメントという資産運用会社であって、野村證券の場合には野村アセットマネジメントという会社が資産運用を担っているのだ。

例外はラップ口座と言われるサービスで、これは証券会社が投資運用業の登録をした上で兼業のような形で提供しているものである。

LINE証券はラップ口座を提供しているわけではないし、傘下に資産運用会社を持っているわけではないから、LINE証券が野村證券と組んだから若者の少額からの「資産運用」が促進されるというのは飛躍がある。

それに、若者が少額から始められる優れたサービスは既に提供されている。ウェルスナビとかTHEOというロボアドバイザーサービスがそれだ。まだまだ認知度は低く、利用者は少ないものの、ウェルスナビの預かり資産は既に900億円を超え、顧客のメインは20-30代の若者だ。

実は、このロボアドバイザーサービスについては、野村アセットマネジメントはエイト証券というロボアドバイザー機能を有する会社を買収しており、少額投資については既に準備ができているのだ。これはLINEとの提携とは関係がない。

野村證券の純血主義が変わるのか?

野村證券とLINEとの提携は野村證券の純血主義を変える歴史的なニュースだというトーンで記載されているが、別に野村證券は純血主義をやめるなんていっていない。

実は、野村證券リーマンショック後に、リーマン・ブラザーズの一部を購入し、多くの元リーマン・ブラザーズの社員達と野村證券の社員が机を並べて一緒に働くという画期的な出来事が10年ほど前にあった。

結果は当然うまく行かず、数千億円の損をすることになったのだが…

これと比べると、LINE証券で一緒にやっても、別に野村證券の社員と多くのLINEの社員が一緒に働くということは無く、リーマン・ブラザーズの買収の時と比べると特にインパクトが無いニュースだ。

以上のように、野村證券としてはLINEや若者の取り込みに興味があるのだろうが、だからといって、これでそんなに大きく変えることができるとまでは期待しておらず、勉強用の提携と考えるべきではないだろうか?