京都大学経済学部の就職と課題について。大阪大学経済学部、慶応大学経済学部との比較はどうか?

 

1. 京都大学経済学部の就職状況

京都大学経済学部の基本情報

京都大学経済学部は学部生のトータル人数が265名で、13名が進学。

22名が不詳。したがって、就職者総数は230名であり、大阪大学

経済学部が約200名なので、それより少し多い程度である。

慶應大学経済学部の就職者数は約1000人なので、それと比べると

約1/4強しかなく、かなりの少人数である。

 

公務員になるものは8名と少なく、大半は民間企業への就職である。

この点は、大阪大学経済学部や慶応大学経済学部と同様である。

京都大学経済学部の就職先について

京都大学経済学部の具体的な就職先については、京都大学が公式HP

において完全な開示をしてくれている。

要するに、1名以上の就職先を全て開示してくれている。 

 (若干、探しづらいが、キャリアサポートルームの「就職のしおり」に

詳細が記載されている。)

http://www.gssc.kyoto-u.ac.jp/career/wp-content/uploads/2018/09/shiori2019.pdf

 

母集団は230名しかいないが、1名以上の就職先は全て開示してくれて

いるので、かなりのロングテールになる。

従って、ここでは2名以上の就職先について抜粋する。

経済学部(就職者数230名) 京都大学HPより2名以上の就職先を抽出。
         
みずほフィナンシャル・グループ 8      
有限責任あずさ監査法人 6      
三菱UFJ銀行 5      
三井住友銀行 4      
三井物産 4      
三菱商事 4      
三菱電機 4      
アクセンチュア 3      
ウィル 3      
大阪ガス 3      
京都銀行 3      
国土交通省 3      
新日本有限責任監査法人 3      
トヨタ自動車 3      
野村證券 3      
パナソニック 3      
イカレント・コンサルティング 3      
三井住友信託銀行 3      
ゆうちょ銀行 3      
伊藤忠商事 2      
経済産業省 2      
JPモルガン証券 2      
住友商事 2      
ソフトバンク 2      
ダイレクト出版 2      
有限責任監査法人トーマツ 2      
日本放送協会 2      
日本航空 2      
日本生命 2      
農林中央金庫 2      
日立製作所 2      
みずほ証券 2      

 

2. 京都大学経済学部の就職先の特徴

まず、全体観であるが、極めて良好なのは学校のレベルから当然として、

ほとんどローカル色が無いのが意外であった。

この点は、同じ関西の名門国立大学である大阪大学経済学部とは

若干異なっているようだ。

 

そして、後述するが、外銀・外コン、メディア、ネットベンチャーなど、

最上位の企業や、新しいところを志向するところが特徴的だ。

①金融機関が多い

上位には、3メガバンク、信託、野村證券日本生命などがランクイン

している。この傾向は、大阪大学経済学部、慶応大学経済学部と同様であり

トップ大学経済学部の全般的な特徴である。

②総合商社が多い

ランキングの5位に、三菱商事三井物産がそれぞれ5名ずつでランクイン

している。

また、伊藤忠に2人、住友商事に2人、丸紅に1人と入社している。

 

ちなみに、就職者数に対する比率で見ると、15/230=6.5%と、

総合商社に強い慶應大学経済学部を上回っているものと思われる。

 

この点は、大阪大学経済学部には見られない特徴である。

③外銀、外コン、マスコミ等超難関企業が見られる

京都大学経済学部からは、JPモルガン証券に2人、ゴールドマン・サックス証券

1人と外銀に就職者を輩出している。

 

また、BCGに1人に加え、アクセンチュアに3人、ベイカレント・コンサルティング

2人、アビームコンサルティングに1人、クニエに1人、

デロイトトーマツコンサルティングに1人、PwCコンサルティングに1人と

母集団が少ないにも関わらず広くコンサルティング・ファームに就職

している。

 

また、NHKに2人、東急エージェンシーに1人、博報堂に1人と、

マスコミ関係にも就職者を輩出している。

 

このあたりは、東大、慶応などの東京のトップ校と類似している。

④ネット系ベンチャー企業が多い

京都大学経済学部の特徴は、ネット系ベンチャー企業への就職が結構目立つ

ことである。

しかも、京都や大阪のベンチャー企業ではなく、東京のベンチャー企業

就職している。大手金融機関と違って、関西まで来てくれないので、

東京に企業訪問等に行く負担を考えると結構大変である。

 

具体的な企業名としては、アカツキイトクロ、エムスリー、オロ、

クックパッド、Donuts、フリークアウト、PLAN-B、レバレジーズ等

である。

 

上位20社までしか開示が無いのでよくわからないが、慶応大学経済学部は

コンサバティブで大手企業や有名外資を好むようであり、ベンチャー系とか

自ら起業するのはあまり好まれないとも聞く。

 

この点は、京都大学経済学部の方が、ベンチャースピリットに溢れている

ということであろうか。

3. 京都大学経済学部の就職における課題

以上のように、京都大学経済学部の就職の特徴としては、中央志向が強く

ローカル色はほとんど感じない。

 

そして、超人気・超難関企業にも挑戦し、外銀・外コンにも人材を輩出

している。東京以外の大学で、外銀・外コン(MBB)に就職者がいるのは

京都大学位ではなかろうか。

 

また、総合商社にも強く、非関西系商社である三菱商事三井物産にも

強いのが興味深い。

 

さらに、地理的に不便であるにもかかわらず、多数がネットベンチャー

企業にも就職しており、慶応大学経済学部以上にフロンティア・スピリット

に溢れているのではなかろうか?

 

このように、京都大学経済学部の就職については特に課題というものは

ないであろう。

 

ただ、中央志向が強いため、就職活動で東京まで出てこなければならないという

不便さがある。この点は、大学としてはできることは限られるだろうから、

OB/OGの協力・支援体制がより必要とされるだろう。

 

また、京大経済学部からは、Wantedlyの仲さんとか、ドリコムの内藤さんと

いった著名なベンチャー起業家を輩出している。

ネット系ベンチャーについては東京が有利なのは否めないが、成功した

起業家を輩出すれば、ますます、良くなるであろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

政治経済?国際教養?早稲田大学の学部別就職力を総合商社への就職者数と率とで分析してみた。

 

1. 学部別の就職力の比較が難しい理由

①そもそも学部別のデータが不十分

早稲田大学にせよ慶應大学にせよ、大きな大学で、学部数が多く存在し、

学部毎の難易度、伝統、学習領域がそれぞれ異なるため、

就職力がどのように違うのか気になるところだ。

 

学部別の就職力を調べるには、大学がHPで開示してくれている

学部別の就職状況を参考にすればいいのだが、各学部上位20社という

場合、各学部から5名未満の就職状況が把握できないので不便である。

 

というのは、本当にトップの企業の採用数は相対的に少数であることが多く、

例えば、外銀・外コン(MBB)、電通博報堂、キー局、

三井不動産三菱地所、P&Gあたりへの学部毎の就職状況が把握できない

ことが多い。

 

早稲田とか慶応クラスになると、ある程度の人気企業には就職できるので、

このあたりの超難関企業への採用状況が、学部毎の就職力を知る上で

気になるところなのだ。

②業界が異なる企業同士を比較するのは難しい

一般的に、メガバンク、大手信託銀行、大手損保、大手生保、大手証券といった

大手金融機関や、アクセンチュア等のコンサル、総合商社、マスコミ等の

就職者数が多いと、就職力は良いと世間一般的に判断しやすい。

 

しかし、学部間の微妙な比較になると、このあたりの大手への就職割合は

あまり変わらない場合もあるし、業界が異なる企業同士を比較する

ことが難しい。

 

例えば、日本航空全日空と、損保ジャパンや明治安田生命とどちらが上とか、

サントリー、キリン、味の素等のトップ食品メーカーとメガバンク

どちらが上かとか、なかなか判断できないので、学部同士の就職力を厳密に

比較するのは難しい。

2. 総合商社への就職者数と就職率は就職力のバロメーターか?

上記のような就職力の比較を厳密に行うのは難しいのだが、一つ参考に

なると思われる方法が、総合商社への就職者数と就職率に着眼する

方法である。

 

例えば、早稲田大学の場合には、早稲田大学全体で5名以上就職者がいる企業

について、学部別に詳細な情報を開示してくれている。

また、総合商社は超トップ企業の中でも100人以上採用しているので、

早稲田の学部別の詳細な数字を把握することができる。

 

もちろん、「学生がみんな総合商社に行きたいわけではないよ。」という

批判は承知の上だが、総合商社の場合は広範な商品/サービスを扱い、

世界中に拠点がある業態なので、金融、コンサル、メーカーよりも

普遍性はあるのではないかと考えられる。

3. 早稲田大学の学部別の総合商社(五大商社)への就職状況

結果はこの通りである。

なお、理系の場合は商社志向が文系よりも弱いと考えられるため、対象外とした。

また、総合商社の定義は、五大商社及び双日豊田通商の7社であるが、

今回は五大商社を対象とした。

 

早稲田トータル 27 29 26 23 19      
  三菱商事 三井物産 住友商事 伊藤忠 丸紅 五大商社合計 就職者数 五大商社比率(%)
政経 10 6 8 5 3 32 799 4.0%
2 4 3 6 6 21 629 3.3%
教育 1 2 1 0 2 6 807 0.7%
1 2 4 8 3 18 866 2.1%
社学 1 0 2 0 0 3 598 0.5%
人科 0 1 0 0 0 1 505 0.2%
スポ科 1 0 1 1 0 3 358 0.8%
国教 4 3 4 2 4 17 486 3.5%
文構 2 3 1 0 1 7 806 0.9%
文学 1 3 0 0 0 4 543 0.7%

 

①結果は、入試における偏差値を反映したものとなっている?

総合商社以外の優良企業、例えば、東京海上火災日本生命NHKアクセンチュア

日本航空といった企業では、いわゆる上位学部以外の学部も検討していたり

するのだが、総合商社について比較すると、見事なまでに大学入試における

偏差値・難易度・伝統を反映した結果となってしまった。

 

政経がダントツの32人、法学部が21人、商学部が18人と、いわゆる上位学部が

ベスト3を占めている。

 

また、偏差値が極めて高い流行りの国際教養学部は検討し、合計17人を

総合商社に送り込んでいる。

 

他方、伝統のある学部でも、文学部からは4人、教育学部からは6人という

結果である。

 

さらに、社学、人間科学、スポーツ科学は3名以下となっている。

②「率」で見ると更に違いが浮き彫りに?

単純な五大商社への就職者数だけで比べると、定員が少ない、要するに就職者数が

少ない学部は不利になるため、五大商社への就職者数を各学部の就職者数全体で

割った「率」を上記の表の一番右側に加えてみた。

 

その結果、

 

政経(4.0)>国教(3.5)>法(3.3)>商(2.0)

 

~1%の壁~

 

文構(0.9)>スポ科(0.8)>教育(0.7)>文学(0.7)

>社学(0.5)>人科(0.2)

 

と見事なまでに、受験におけるヒエラルキーを反映する結果となった。

③注目される国際教養学部

注目されるのは、新興の人気の国際系学部、国際教養学部である。

率で見ると、政治経済学部に次ぐナンバー2である。

 

しかも、三菱商事だけで見ると、政経が10人に対し、国教は4人と、

法学部(2人)や商学部(1人)を上回っている。

 

受験の難易度が就職にもきっちりと反映されており、今後も注目される学部である。

感想

やはり総合商社の採用責任者である40代、50代の人達はコンサバなのか、

同じ早稲田と言っても政経、法、商に拘るようである。

 

また、注目されるのが国際教養学部の躍進である。

いかに、企業がグローバル人材を求めているのかということがうかがえる。

 

ということは、上位学部でなくとも、留学経験があったり英語が非常に得意な

学生はチャンスがあるということなので、英語磨きをすれば就職の可能性は

広まると言えるのではないだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

慶應大学法学部(政治&法律)の就職と課題について。慶應大学経済学部と比較してどうか?

 

1. 慶應大学法学部(政治&法律)の就職状況

①就職状況の開示について

慶應大学の場合、全学部について、上位就職企業(3名以上上位20社)について

HPで開示してくれている。

これによって、大体の状況は把握できる。他方、経済学部のように、5名以上の

就職先については20位以下も開示してくれるということは法学部は無い。

http://www.gakuji.keio.ac.jp/life/shinro/3946mc0000003d8t-att/a1530669479061.pdf

②慶応大学法学部(政治&法律)の具体的な就職先について

慶應大学の場合、法学部は政治学科と法律学科について別々に開示して

くれている。

しかし、ここでは「法学部」ということで合算してみることにした。

政治学科のランキングをベースに、そこに法律学科の人数を加えるという

対応を行った。

 

このため、日本放送協会NHK)、博報堂アクセンチュア

三菱UFJ信託銀行三菱電機富士通キーエンス日本テレビ

明治安田生命については、政治学科の数字のみとなっている。

これらの企業については、法律学科からの就職者がゼロということは

無いと思われるので、「法学部」としての就職者数はもう少し多い

可能性がある。

 

  法学部(政治+法律) 経済学部
東京海上日動火災保険 26 23
みずほ銀行 24 32
三井物産 20 7
三菱UFJ銀行 21 27
丸紅 14 7
三井住友銀行 18 15
日本放送協会NHK) 8 NA
三井住友信託銀行 12 11
三菱商事 12 8
博報堂 7 NA
アクセンチュア 6 18
三菱UFJ信託銀行 6 11
三菱電機 6 NA
住友商事 11 6
富士通 6 6
SMBC日興証券 5 13
キーエンス 5 6
伊藤忠商事 10 5
日本テレビ放送網 5 NA
明治安田生命保険 5 9

以上のように、政治学科と法律学科とを合算した慶応大学法学部全体の

就職状況は極めて良好である。

 

東京海上メガバンク、総合商社、マスコミ、大手広告代理店と

超人気&高就職偏差値企業がズラリと並んでいる。

 

また、三菱電機富士通キーエンスというメーカーや、

アクセンチュアといったコンサルなど、多様性も確保されている。

2. 慶応大学経済学部との比較 

慶應大学法学部(政治&法律)の就職状況が極めて良好であることは

わかった。そうすると、気になるのが、経済学部との比較だ。

 

歴史的には経済学部が慶応の看板学部であり、入試難易度も長らく

経済学部>法学部>商学部、であったため、特に今40代、50代以上の

ビジネスマンにとっては、経済学部の方が良好なのではないかという

認識があるだろう。

 

他方、今の若者や現役学生の間では、法学部>経済学部という認識が

あるらしい。このため、就職については、その差がどのように反映

されているのか気になるところである。

 

なお、経済学部の就職状況についてはこちらの過去記事をご参照下さい。
blacksonia.hatenablog.com

①大手金融機関(メガバンク、生損保等)

まず、分母となる法学部と経済学部の就職者数であるが、

政治学科と法律学科を合計した法学部の就職者数は982人、

他方、経済学部の就職者数は1003人である。

従って、差は2%と誤差の範囲内であり、上の表について、実数比較

すればいいだけなので便利である。

 

まず、3メガバンクについては、経済学部が74人に対して、法学部が

63人である。気持ち、経済学部が多めであるがそれほど差は無い。

 

東京海上については、法学部が26人に対して、経済学部が23人と

こちらもほぼ互角。

 

証券会社や信託銀行についても両学部とも多く就職している点は同じである。

 

意外であったのは、日銀に法律学科から4名就職している点である。

なお、経済学部からは5名である。

 

以上のように、大手金融機関については両社ほぼ互角であろうか。

②総合商社(5大商社)について

さて、気になるのは上記①の金融機関よりも、こちらの総合商社、

特に5大商社である。

何故なら、就職偏差値・難易度が最上位であり、大手金融機関よりも

就活生的には上位にランクされるからである。

 

5大商社の就職者数の合計で見ると、法学部からは63人、経済学部からは

33人である。

 

何と、法学部の圧勝である。特に三菱商事についても、法学部から12人、

経済学部から8人であり、ここでも法学部の勝利である。

 

これはかなり意外感のある結果(特に年配のビジネスマン)だろうが、

総合商社については、法学部>経済学部、というのが現実である。

③マスコミその他について

法学部の特色は、入社難易度が極めて高い大手マスコミへの就職が目立つ点で

ある。

例えば、NHK、日テレが上位にランクされている。

これは経済学部には無い特色である。

 

また、電通については、法学部から5名(法律学科のみのデータ)、

経済学部からは8名、博報堂については、法学部から7名(政治学科のみの

データ)、経済学部からは不明(7人以下)となっており、

こちらの就職状況も良好である。

 

なお、外銀・外コンへの就職状況に係るデータがあれば参考になるが、

こちらの詳細はよくわからない。もっとも、慶応の場合、法学部からも

ゴールドマン等に何人も就職しているので、こちらの点で法学部が

経済学部に劣るということは特に無いのではなかろうか?

 

以上のように、経済学部と比較しても法学部の就職状況は

劣っておらず、総合商社やマスコミについては、法学部が優位とさえ

言えるのではないだろうか?

3. 慶應大学法学部の就職に関する課題について

①民間企業への就職について

慶應大学法学部の就職状況は極めてよく、私立大学ナンバー1というか、

日本の中でも、ここに勝てるとすれば、東大(文系学部)か一橋くらい

しか見当たらないだろう。

この点については、後日、比較してみたい。

 

いずれにせよ、民間企業への就職については特に課題は無いのでは

ないだろうか?

 

強いて言えば、多様性ということで、ネットベンチャー系に行く者が

もう少し増えても悪くないのかも知れない。

②弁護士(法科大学院進学者)をどう考えるか?

法学部での最高の勝ち組は、大学名を問わず、弁護士であった。

旧司法試験の何度は極めて高く、司法試験の合格者数が大学の法学部の

格を示していた。

 

しかし、司法制度改革における弁護士数の急増によって、弁護士の

人気は急低下してしまった。

今では、弁護士がうらやましいと思う学生は多くないのではないだろうか?

 

旧司法試験時代は、司法試験合格者数において、早稲田>慶応であったが、

新司法試験制度になって、合格「率」が判断基準となり、

今では、慶応法科大学院>早稲田法科大学院、であろう。

 

ただ、残念なのは弁護士人気が低下してしまったことで、大学として

法科大学院や弁護士というのをあまりアピールできない点である。

 

とはいえ、弁護士というのは法学部(他学部からでもなれるが)の象徴的な

職業であるので、ここをうまくPRしていきたいところである。

まとめ

慶應大学法学部の民間企業就職状況は極めて良好というより、

日本ナンバー1といえるレベルではないだろうか?

 

長年の評価であった、経済学部>法学部、というのも時間が経つにしたがい、

解消されていくのかも知れない。

これには、入試の方法も影響しているのかも知れない。

入試科目に数学が無いと、馬鹿にされがちな傾向にあるので、いっそ

法学部の入試科目にも選択でいいので数学をいれてみてはどうだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

慶應大学商学部の就職と課題について。慶應大学経済学部と比較するとどうか?

 

1. 慶応大学商学部の就職の状況

①大学による就職状況の開示

慶應大学は、学部別に具体的な就職状況について開示をしている。 

http://www.gakuji.keio.ac.jp/life/shinro/3946mc0000003d8t-att/a1530669479061.pdf

②主な就職先の状況

慶應大学商学部の場合、経済学部のようなより詳細な開示は無いが、

就職先のトップ10は、以下のようになっている。

 

1. 三菱UFJ銀行       17人

2. 東京海上火災       14人

3. 三井住友銀行       13人

4. アビームコンサルティング 12人

5. みずほ銀行        11人

6. アフラック          9人

6. 三井住友海上火災                    9人

6. 三井住友信託銀行       9人

9. アクセンチュア                        8人

9. NTTデータ           8人

9. 三井物産              8人

9. NTT東日本           8人

9. 有限責任監査法人トーマツ    8人

 

このように慶應商学部からの就職先トップ10には、

メガバンク東京海上、アビーム、アクセンチュア三井物産

就職人気企業である金融機関、コンサル、総合商社が並んでいる。

 

また、キーエンス電通日本航空、日立、富士通など、

広告代理店、メーカー、インフラと幅広く人気業種に就職している。

2. 慶応大学経済学部との比較

以上のように、慶応大学商学部の就職状況は極めて良好である。

ところが、気になるのは同じ慶応大学の経済学部との比較では無いだろうか?

 

経済学部と商学部とは、同じ広義のビジネス・経済系の学部ということと、

入試科目で「数学」を選択する受験生が多い(A方式)ことから、

併願・比較の対象となってきた。

 

経済学部は伝統の看板学部であり、受験の難易度(偏差値)も歴史的に

経済学部が高かったことから、学部内格差を学内・学外から指摘される

ことは多い。

 

そこで、両学部の就職状況に差があるか気になるところである。

なお、就職者数は、経済学部が1003人に対し、商学部は839人であり、

2割弱程経済学部が多い。

①大手金融機関

3メガバンクの合計は、経済学部が74人、商学部が41人であり、

比率にすると、7.4%と4.9%と若干経済学部の方が比率が高い。

 

他方、生損保のトップ企業である、東京海上日本生命については、

経済学部が、東京海上23名、日本生命7名、

商学部が、 東京海上14名、日本生命7名、

とほとんど差が無い。

 

また、経済学部、商学部ともに、大手信託銀行、商工中金農林中金等への

就職者数が多く、特に差は無い。

②総合商社、マスコミについて

総合商社については、意外なことに、経済学部と商学部の差がほとんどない。

 

 

三菱商事は、経済学部が8名、商学部が7名、

三井物産は、経済学部が7名、商学部が8名、

 

興味深いのは、就職偏差値最高峰のブランド企業である三菱商事については、

慶応の内定者の半分は経済学部からだという噂もあったが、

この統計を見ると全くの経済学部も商学部も変わらない。

 

また、広告代理店のトップ企業の電通についても、

経済学部8名に対し、商学部が6名と検討している。

 

あとは、外銀・外コンの統計があればいいのだが、人数が少なく、

学部別の内訳まではわからない。

ここで経済学部と商学部の差が無ければ、両学部の差は実質的に差は無いと

言えるのではなかろうか。

3. 慶応大学商学部の就職における課題

上記のように、慶応大学商学部の就職状況は極めて良好であり、

また、経済学部との比較においても特にそん色は無いと言えるだろう。

 

このため、大手企業、就職人気先企業における就職能力においては、

特にこれといった課題は無いのではないだろうか?

 

もっとも、現在40代、50代以上の人達からすると、経済学部>商学部

という認識を持っている人が多い。

両学部に合格した場合、今でもほとんど経済学部を選択するのでは

無いだろうか?

 

となると、就職力だけでなく、ステイタスやイメージでも経済学部に

追いつくためには商学部としての独自性を発揮することではないだろうか?

 

例えば、ベンチャー起業で成功した卒業生が増えると、商学部としての

存在感は高まって行くだろう。経済学部は、起業よりも大手、有名企業への

関心度が高いからである。

 

ところが、起業というと、慶応の場合は商学部よりもSFCの方が存在感が

高いのが現状である。

 

このため、カルチャーは異なるかも知れないが、SFCの学生とも吊るんで

ベンチャー起業を目指す学生が増えて行けばますます良くなるのでは

無いだろうか?

まとめ

就職については、慶応大学経済学部の方が、商学部よりも良好なのでは

ないかと思っていたが、ほとんどそん色はなかった。

特に、三菱商事電通あたりでも差が無いのが意外であった。

 

ところが、歴史的な経緯や偏差値から、経済学部>商学部

思っている人達はまだまだ少なくないので、ベンチャー起業などで、

商学部としての独自性を発揮できれば、ますます商学部のステイタスは

上がるのではないだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

年収800万も?東大生も応募すべき?メルカリに新卒で入社することの意義。

 

1. 赤字決算も、まだまだ余裕のメルカリ

2019年2月7日、メルカリの第2四半期の決算が公表された。

結果は、米国事業が相変わらず足を引っ張り続け、まだ開発段階で収益を

産まないメルペイ事業のコストが響き、上期累計で最終損益が

約44億円の赤字であった。

 

他方、国内事業は絶好調で、2018年10~12月の流通総額、月間ユーザー数

ともに大幅のアップであった。

 

また、赤字といっても、メルカリは多額のキャッシュを抱えており、

財務的にコントロールしながら対応できるようである。

2. メルカリの新卒採用

米国事業や新規事業で苦戦はしていても、抜群の知名度と、成長性を

誇るメルカリである。

 

大変柔軟性に富む、ユニークな雇用システムを有しているメルカリであるが、

他の日本企業と同様に新卒採用もやっている。 

https://www.mercari.com/jp/recruit/newgrads/

 

新卒採用も、典型的な日本企業とは異なるユニークで中途採用に近い

イメージである。

 

まず、通年採用なので、いつでも応募可能である。

そして、インターン経由で入社する方法と、インターンを経由せずに

面接のみで入社する方法もある。

 

当然、コース別採用になっており、

エンジニア、

デザイナー、

プロデューサー、

と職種別の採用がなされている。

3. メルカリの新卒は初任給もバラバラ?

メルカリの新卒採用は中途採用に近い柔軟性がある。

したがって、初任給も人によって異なるし、交渉も可能なようだ。

 

少し前の、ソーシャルゲーム全盛期に、DeNAやグリーが初年度の年収が

1000万円以上も可能ということをアピールしたが、実際、1000万円を

新卒時からもらえた社員がどれほどいたかは定かでない。

 

他方、エンジニアの場合であるが、既に初年度の年収が800万円という

事例も出ているようだ。

 

非エンジニア職の、プロデューサー職の場合は大体450万円位が初年度の

年収の目安の様だ。

4. メルカリに新卒で入社することのメリット

①最新、最強のネットビジネスに参画することができる

ネットビジネスは、まだまだこれからも成長が期待されるビジネス分野である。

しっかりとしたスキルを身に着けると、将来の起業や、他のベンチャー

起ち上げに参画することも可能となる。

 

また、メルカリの場合はネームバリューもあるので、大企業に中途採用

入社するという選択肢もあるだろう。

 

ある意味、最強のECビジネスを展開している会社なので、そのビジネスに

参画できるという意義は大きいだろう。

フィンテック事業(メルペイ)も進行中である

今のところ開発段階で、収益的には足を引っ張っているメルペイ事業

であるが、こちらも注目度は高いし、戦略的な投資分野である。

最初は決済事業を起ち上げ、その後は各種金融事業への展開を目論んでいる

ようだ。

 

メルカリの場合、社内異動については極めて柔軟性が高いようなので、

こちらに異動してフィンテック事業に参画するという選択肢もある。

③副業OKなので、将来独立・起業を考える人には向いている

メルカリは明確に「副業OK」を強調している。

いきなり起業というのは抵抗があるが、サイト運営、受託開発等、

副業から小さく始めて様子を見るという選択肢もある。

 

メルカリには、優秀なエンジニア、デザイナー、マーケティングスタッフ、

コーポレートスタッフが存在するため、他の会社よりも成長できる

機会に恵まれているだろうし、将来に向けたネットワーク作りもし易い

だろう。

④充実した社内研修・教育体制

例えば、英語であるが、1 on 1レッスン、オンライン英会話等の

語学研修インフラがあるし、海外カンファレンスなど出張する機会も

多い。そして、何よりも、外国人社員も多く、英語を話せる機会が多い。

 

また、セミナー参加制度があり、一定の条件で会社が費用まで

出してくれる。

 

どこの会社も、研修・社員教育重視とは言うが、ここまで各種制度が

整った会社はそれほど多くない。

⑤従業員持ち株会制度

ずっとサラリーマンをやっていると、株式保有とは無縁になってしまう

場合が多い。

昔の大企業というのは、従業員持ち株会制度を推奨し、多くの社員が

自社株を保有していたようだが、最近では必ずしもそうではないようだ。

 

将来、独立・起業したいという人は、そもそも「株式」について

十分認識することが必要であって、従業員持ち株会制度によって

若いうちから株主になるのは悪くない。

5. 難易度はどうか?

メルカリの場合、メガバンクや総合商社と違って、一括採用ではない。

従って、多くの学生と直接競争をするというイメージでは無いので、

競争率とか、難易度を図ることは難しい。

 

もっとも、外銀・外コンのようなハイスペックの学生達と少ない椅子を

巡って戦う必要は無いし、総合商社のように、OB訪問での評価を

積み上げていくような面倒臭さはないであろう。

 

スペックは高いに越したことがないが、メルカリのプロダクトに対する

愛着度・関心度や、会社の経営理念に対する共感度・理解度、

そして、何よりも現に働いている人達との相性・好かれるか、

といったところがカギとなるのだろう。

 

外銀のValuationとか、外コンのフェルミ推定、ケース対策といった特有の

知識対策とかが不要であるので、東大生も、勉強を兼ねて話を聞きにいっても

面白いのではないだろうか? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外銀や総合商社の若手社員が、ベンチャー企業への転職を考える場合の、チェックポイントについて

 

1. 何故わざわざ外銀や総合商社を辞めてベンチャー企業に?

まず、ここでいうベンチャー企業とは狭義のベンチャー企業で、非上場の

ベンチャー企業である。

ヤフー、楽天サイバーエージェントのような既上場の大手ベンチャー企業

含まれない。

 

せっかく、難関で好待遇の外銀や総合商社に入社できた若手社員が、

退職してベンチャー企業に転職を考えるのであろうか?

 

共通点としては、いずれもできあがった組織であり、上下関係が厳しく、

自由に好きなように働ける雰囲気ではないということであろうか。

 

しかし、ハイステイタス、高給、将来性、安定性等を考慮すると、

一般的には、ベンチャー企業に行くのは得策では無いだろう。

周りの人に相談すると、ほぼ辞めた方がいいという回答が返ってくるのだろうが、

それでも、あえてベンチャー企業に行きたいのであれば、以下のような事項を

チェックしてから、結論を出すべきだろう。

2. ストック・オプションをもらえるか?

①お金の問題だけではない、ストック・オプションの付与

ベンチャー企業に行くと当然年収は下がる。大体、20代で幹部社員

(といっても部下のいない1人部長のようなイメージ)の場合でも、

年収500~800万円位のレンジである。

(それについては、こちらのポストコンサルの記事が詳しい。) 

ポストコンサル転職の実態 - 戦略コンサルによる転職メディア

 

したがって、ストック・オプションを付与されないと転職すべきではない。

これが最初のチェックポイントである。

外銀・総合商社のステイタスを捨てて、わざわざベンチャーに行くのだから、

経営者側としても、ストック・オプションを付与するのは当然なのである。

 

というと、「自分はお金じゃないから、ストック・オプションは無くても

よい。」と思われるかも知れないが、それは誤りである。

 

それは、創業メンバー等はそれでよいかも知れないが、事業の拡大に伴い、

組織を拡大、要するに社員を増やしていく必要がある。

その場合に、相応の報酬を用意できないと、結局優秀な社員を採用する

ことができないのである。

 

ベンチャー企業は、人材の質こそが全ての競争の源泉であるはずなのに、

「お金が無くても優秀な人を採用できる」という安易な人的資源管理(HRM)

のセンスしかない経営者の会社は、競争に勝てないのである。

 

実際、UberとかAirbnbなんかもコアとなる社員には数千万円レベルの

パッケージを用意した上で採用してきている。

メルカリなんかも、上場前の早い段階から、コアとなる社員には

ストック・オプションを含む相応の待遇を要した上で採用してきた。

 

したがって、ストック・オプションも付与してもらえないベンチャー企業

ポジションには、わざわざ外銀・総合商社から応募すべきではないのである。

②ストック・オプションの内容

VCのトップ企業である、GCP(Globis Capital Partners)の幹部社員から

聞いた話であるが、発行済株式総数の約10%をストック・オプションに

使用するよう推奨しているという。

 

さらに、その10%の内訳は、3%を創業メンバー、3%を一般社員に付与

するイメージなので、創業メンバー以外の幹部社員(執行役員とか部長クラス)

には、合計3~4%付与するという形である。

 

この場合、各幹部社員に付与されるストック・オプションは、幹部社員の

人数によるわけだが、通常、幹部社員の数は5~10人位と想定されるから

1人あたり、0.3~0.6%位が目安となる。

 

そうすると、時価総額が100億円の場合だと、3000~6000万円、

時価総額が300億円の場合だと、9000万円~1億8000万円の

経済的利得をIPOが成功した暁には実現できることとなる。

③ストック・オプションの行使可能時期

ストック・オプションの行使可能時期は、入社後2年以降という、

「2年」が多いのではなかろうか。

もっとも、中には、3年~4年と長めであるが、その代わり、

1年毎に1/3、1/4が付与されるタイプもあり、この点については

会社によって違いがあるので要確認だ。

④ストック・オプションの内容

ベンチャー企業に参画して成功する場合というのは、IPOの成功に

依拠する場合が多いが、最近ではIPOではなくM&AによってEXITする

パターンも増えてきている。

 

M&A、要するに株式が未公開の段階で売却される場合には、付与される

ストック・オプションの行方がどうなるかについても確認しておいた

方がよい。

3. ベンチャー企業での職歴の評価

上記2では、経済面についてのチェックポイントである、ストック・

オプションについて述べたが、ここではベンチャー企業の職歴の評価

について考えたい。

 

もちろん、IPOまで辿り着いた場合には、その後転職したり独立したり

する場合でも、輝かしい経歴となるだろう。

 

しかし、問題はIPOM&Aまで辿りつけずに、失敗に終わった場合である。

 

結論的には、この場合は残念ながら、外資系企業や国内系大手企業からは

全く評価されないと考えた方が賢明である。

「優良企業を捨ててまでベンチャーで挑戦したので、失敗しても、

そのベンチャー・スピリットは評価できる!」といった甘い話は無いのだ。

 

要するに、ベンチャー企業での転職の失敗は、単なる「履歴書の汚れ」

黒歴史」にしかならないということを認識する必要がある。

 

2000年前後の第一次インターネット・ブーム、2005-2006年頃の

ホリエモンが台頭してきた頃の第二次インターネット・ブームの

期間、野村證券とか外資系証券からベンチャー企業に転職して失敗

した人達を知っているが、結局、彼らは金融業界(銀行系証券会社)に

復帰し、年俸は以前より下がることになってしまった。

どこの金融機関も、数年間の失敗したベンチャー企業での経験は

マイナスにしか評価してくれなかったのだ。

 

したがって、ベンチャー企業に転職するにあたっては、失敗して、

元の業界に復帰する場合には、マイナスにしかならないということを

念頭に置くべきである。

4. ベンチャー企業の後のキャリアをどう考えるか

上記の話と重複するのであるが、IPOに成功した場合であっても、

そのまま定年までベンチャー企業で働き続けることを想定する人は

少ないであろう。

 

従って、ベンチャー企業への転職が成功しようが失敗しようが、

その後のキャリアを考えておく必要がある。

 

失敗した場合の、典型的なパターンは元の業界に戻るということであるが、

総合商社の場合は難しいであろうから、どこか別の国内系の優良企業を

探すことになるのだろうか。

 

成功した場合には、IPOの成功体験を持って、また別のベンチャー企業

転身する場合もあるし、また、自ら起業に挑戦をするというのも

アリだろう。この場合には、いろいろと楽しい未来が待っている。

5. ベンチャー企業の探し方

ベンチャー企業の場合、外資系企業や国内大手企業と違って、転職エージェントを

使わないケースが多い。

或いは、転職エージェントを使う場合にも、ベンチャーに特化した転職エージェントを

使うケースも多い。具体的には、この辺りである。

 

〇グリーン

〇Goodfind

〇プロコミット

〇for Startups, Inc.(旧ネットジンザイバンク)

 

それ以外だと、ビズリーチとか、Wantedlyを使って検索することになる。

どこが特におすすめというわけではないが、結局一か所だと案件数が

足りないので、併用するのが一番賢いやり方である。

 

それから、上記以外だと、リクルートはおススメである。

既存ベンチャー大手の子会社を始め、かなり多くのベンチャー企業

求人情報も持っている。

 

結局、ベンチャー企業も、外資系金融機関のポジションを探すのと同様で、

面倒だが、数を打つしかない。

まとめ

外銀や総合商社から、ベンチャー企業に転職するのは上記の通り、

あまりお勧めではない。

 

条件的なものもあるのだが、自ら起業をしたいというのなら理解できるが、

「雇われ」の身分でベンチャーに行くというのが中途半端だからだ。

 

それでも、ベンチャーに行きたいという場合には、上記のチェック

ポイントを慎重にチェックして、納得の上で転職すべきだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

年収や将来性の観点から、東大法学部生は、最初から「社内弁護士」を目指すくらいであれば、他の途を選択した方がいいのでは?

 

1. 社内弁護士の人数の急増

司法制度改革に伴う弁護士数の急増に伴い、社内弁護士の人数も急増しているようだ。

従来は、弁護士というのは独立して自分の事務所を持つか、あるいは、

渉外事務所のパートナーを目指すというのが一般で、社内弁護士というのは、

極めて例外的な位置づけであった。

ところが、司法制度改革に伴う弁護士数の急増に伴い、社内弁護士の人数も

急増しているという。

 

しかし、ほとんどの場合、社内弁護士の年収等は、独立している弁護士と比べると

大きく見劣りするケースが多いと考えられ、これから弁護士を目指す学生は、

以下の点を吟味した方が良いと思われる。

①独立弁護士と社内弁護士との年収格差

弁護士会の統計等を見ても、年収に関しては、独立弁護士の方が

社内弁護士よりも明らかに多い。

全然業界は違うが、イメージ的には、開業院の年収が勤務医の年収の2倍位

あるのと似ているのかも知れない。 

bengo4.hatenablog.com

②年収3000万円以上の社内弁護士もいるというが…

上記引用ブログの中で紹介されている日本組織内弁護士協会の2016年

実施のアンケートによると、社内弁護士の年収に関して、

・年収5000万円以上:2.9%

・年収3000万円~5000万円:1.6%

・年収2000万円~3000万円:3.7%

と、そこそこの年収がある人もそれなりにいるではないかという

ように見えるかも知れない。

 

しかし、留意しなければならないのは、現在年収が3000万円以上ある

社内弁護士は、法務部長、MDクラスであって、年齢的には40~50代が多い。

合格者数500人~700人時代の旧試合格者で、勝ち逃げできるような人たちで

あって、今からそのポジションを目指すのは競争がし烈であり、

そこに就くことができると考えるのは楽観的である。

 

ある程度参考になるのは、平均年収が1143万円(2016年調べ)という

点であり、今後これが維持される保証もない。

③社内弁護士はサラリーマンであり、「経費」が使えない

さらに、社内弁護士の夢を削ぐようなコメントをして申し訳ないが、

社内弁護士の場合はサラリーマンなので、個人事業種の強みである

「経費」が使えない。

 

このため、年収2000万円以上の勝ち組社内弁護士のポジションにつけた

としても税金がタンマリと取られ、同じ年収レンジの独立弁護士のような

ゴージャスな生活が送れない。

 

ただし、社内弁護士の場合には、手厚い退職金と年金があるので、

老後については有利かも知れないが。

2. それでも社内弁護士になりたい人はどうすればいいか?

それでも自分は、個人で独立経営するのは面倒くさいし、経費なんて使いたくない。

そして、大きな組織で働きたい、という人もいるだろう。

そういう場合、社内弁護士で高い年収が狙えるのは以下のパターンであろう。

外資系金融機関の社内弁護士

社内弁護士の最高の勝ち組は、外銀のGeneral Counsil(MD)、或いは、

法務・コンプライアンス本部長である。

リーマンショック前の最盛期は、Max年収2億円、大手外銀のMD/

法務・コンプライアンス本部長であれば、年収1億2000万円位が

相場であったろうか。

 

この当時は、社内弁護士と言っても最高峰の大手外銀MDに就任できた

弁護士は、渉外事務所のパートナーからもうらやましがられる存在

であった。

 

しかし、リーマンショック後は、トップクラスなら年収1億円も

いるかもしれないが、大手外銀MDでも7000万円クラスであろうか。

 

ただ、この大手外銀のMD、法務・コンプライアンス部長のポジションは

1社に1つしかない。

また、ナンバー2のSVP/Directorポジションも、1社あたり1~2名

程度であり、年収水準は、4000~5000万円である。

 

極めてポジション数は限られていることに留意しなければならないので、

なかなか狙ってなれるものではない。

 

外資系運用会社(バイサイド)には、ほとんど社内弁護士のポジションは

なく、ヘッジファンドの良いポジションで3000~4000万円くらいである。

そうなると、渉外法律事務所のパートナーよりも少なくなってしまう。

外資ITのシニア・リーガルポジション

外資系金融以外で、高給が期待できる社内弁護士のポジションは、

GAFAマイクロソフトシスコシステムズ、オラクル等の外資ITの

シニア・リーガルポジションである。

 

部長(General Counsil)だと、ベース(基本給)、ボーナス、RSUと

呼ばれる株式ボーナスを全て合わせると5000万円以上のポジションもある。

また、ナンバー2のSenior Manager或いはDirectorのポジションで

3000万円程度が期待できる。

 

もっとも、これらのポジションの数は業界全部で数十人分くらいしかない

ので、狙ってなれるものではない。

現在就任している人達は、ほとんどが四大渉外事務所或いは外資系法律

事務所からの転職組なので、生え抜きで狙うのは厳しいだろう。

 

また、「外資系」といっても、製薬含むそれ以外のメーカーの社内弁護士の

給与水準は大幅に見劣りする。

 

そのあたりの社内弁護士の年収事情については、こちらの過去記事もご参照

下さい。 

blacksonia.hatenablog.com

3. 国内系企業の社内弁護士について

①大前提:そもそも法務部長は社長になれない!?

国内系企業の社内弁護士の年収を考える前に、まず、そもそも論なのだが、

法務部長は社長になれるポジションだろうか?

 

答えは明らかでNoである。

経理部長や人事部長、営業部長は社長になり得るポジションであるが、

法務部長は社長どころか代表取締役までもなれない、端っこの

ポジションではなかろうか?

 

したがって、社内弁護士になるというのは、そういうことであり、

あくまでもスペシャリストであり、取締役等への出世を期待しては

いけないポジションなのだ。

 

これが出発点である。

②国内系企業の社内弁護士の年収について

基本的に、国内系企業の社内弁護士の年収は、非弁護士の法務部員、

要するに、一般社員と同じである。

 

従って、業種と役職によって異なるが、せいぜい1000万円代前半

程度である。若手であれば、1000万円にすら満たない。

 

もちろん、退職金とか企業年金といった福利厚生には恵まれているが、

それは一般社員も同じである。

別に、社内弁護士の退職金や企業年金が一般社員よりも良いという

ことはない。

 

ということは、弁護士になるまで、既習2年、新試と合格発表まで半年、

修習1年を考えると、最短でも4年は入社が遅れてしまう。

すると、その分、生涯賃金は少なくなってしまう。

 

それに、なるまでのコストとプレッシャー、リスクを考え合わせると、

わざわざ一般社員と同じであれば、最初から社内弁護士になるために

わざわざ弁護士資格を取ろうとするのは割に合わないのではないだろうか?

4. それでは、どうしたら良いのか?

今、既に弁護士資格を持っており、ワークライフバランス、その他の理由から

社内弁護士を検討するのはわかる。

 

しかし、今法学部生で、最初から社内弁護士になるのを前提として法科大学院

目指すのは何ともコスパが悪いのではないだろうか?

 

東大法学部生の場合は、先輩や同期のキャリア、また、周りの目?、

から弁護士位にならないと格好がつかないのではというプレッシャーを

感じるのかも知れない。

 

これは、早慶、或いは、一橋の法学部生との違いであろう。

 

もちろん、法律専門職になりたくて弁護士を目指したいというのであれば

全く問題はない。ただし、そういった場合には、

(1)独立弁護士

(2)渉外弁護士のパートナー

を目指すのがいいのではなかろうか?

 

特に、法律職に興味は無いし、独立とか個人経営は面倒くさいなと考えるので

あれば、サラリーマンの最高峰である、外銀とかの金融キャリア、

あるいは終身雇用の最高キャリアの総合商社を目指してみればいいのでは

ないだろうか?

 

東大法学部生といえども、弁護士の資格を取るのは大変だが、

外銀とか総合商社であれば、相応の対策をとれば、それほど難しいわけではない

だろう。